「死に目に会えなかった」家族の対応どうしよう
日本人は、家族の死に目にあうことをとても重要視しています。そして、多くの人は、親の死に目に会えないと負い目を感じます。
でも、なぜか状態が安定していて、「ちょっと家に帰ってきます」「トイレに行ってきます」と少しのあいだ席を外した時に逝ってしまったなんてことはありませんか。
そんな時、皆さんは、どのようにご家族に対応しますか?
事前にできること
誠意一杯の力を尽くしても死に目に会うか会えないかは約束できません。よって、事前に説明し心の準備ができるようにしておくことと、後悔の念を抱かないように看護師としてできることがあります。
心の準備
以前、私の施設に往診にきてくださった医師が「経験上、この数日が山場だと予測はできるかもしれませんが、生命とは計り知れないもので実際はいつ息を引き取るかは神様にしかわかりません。」と、よくご家族にお話ししていました。
終末期と医師に診断され予後何か月~何年と告げられても、本当にわからないものです。
朝になっていたら眠っているようにすでに・・・。さっきまで一緒に話をしていたのに1時間後の巡回時にはすでに息を引き取っていたということがあります。
ご家族には、できる限り死に目に会えるように精一杯の努力をしますが静かに一人で息を引き取ることがあることを伝えておきましょう。
死に目に会うことだけが看取りではない
「死に目に会えなかった」と後悔と自責の念は、どこから来るのでしょうか。やはり、十分に本人の看病や好きなことができなかったという思いがあるからではないでしょうか。
どんな状態でいつ最期を迎えても今後悔がないように、今できることをご家族と一緒に探して援助しましょう。
そして、徐々に体力が低下して反応する力がなくなってきたとき、ご家族から私には何もできないという嘆きの声を聴きます。
反応する力がなくなっただけで聴覚や触覚は比較的最期まで残っていることをお伝えし、手を握ったりさすったり、乾いた口に濡れたスポンジをあててもらっています。
また、一緒に同じ場にいるだけでもご本人は安心していることもお伝えしましょう。
わかっていてもただ側にいるのもつらいと感じる人もいます。
ご家族が雑誌を読んだり、音楽を聞いたり、お茶を飲んだりくつろいでいるとご本人も安心して一緒にいられますよと説明しています。
そのように過ごせる環境づくりに心がけています。
元気な時から一緒にご本人と生ききったご家族はもちろん、ターミナル期だけでも十分にご本人に寄り添えたご家族は、死に目にあえなくても後悔は少ないものです。
後悔と自責の念を抱いている方に
誰しも親しい人や家族に囲まれて最期を迎えたいというわけでもありません。大切な人には、死に際を見せたくないという人もいます。
「ご家族に心配させないようにと天国にそっと行きたかったのかもしれません。」「最期の姿を見られたくなかったのかもしれません。」とういうふうな声掛けを状況によってしています。
私は、大好きな叔母にさっきまで付き添っていたのに、私が帰った30分後に亡くなり、死に目に会えなかったと後悔していました。
そんな時、叔母のお葬式で、お坊さんがそのように声をかけて下さり心がかなり救われました。
時にご家族がずっと付き添っていたのにちょっと寝込んだすきに逝ってしまったなんていうこともありました。
そんなときは、「ご家族が気づかないほど、苦しまず安らかに天国に行ったんでしょう。」というような声掛けをするとご家族の悲しみが癒えるようです。
そして、何より大切なのは、ご家族の労をねぎらうことと、ご本人やご家族に出会え最期まで一緒に過ごさせて頂いたことへの感謝を思いを込めて伝えることだと思います。
「ご本人がご家族のことをこう話して笑っていた」、「お風呂に入っていた時、こんな鼻歌を歌っていた」など小さな日常の思い出を伝えると、大抵のご家族はそんな小さな喜びの積み重ねを喜んでくださいます。
日ごろから日常の小さな幸せを見つけ感謝したり、今できることを大切にしたいものです。
それが、ご家族が「死に目にあえなかった」と後悔しない看護につながるのではないでしょうか。
この記事を書いた人
- 十数年、一般病院で勤務。その後、老年看護、認知症看護、ターミナルケアに興味があり老人施設に就職しました。現在、認知症ケアに特化し、看取りを積極的に行っている老人施設で働いています。
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十数年、一般病院で勤務。その後、老年看護、認知症看護、ターミナルケアに興味があり老人施設に就職しました。現在、認知症ケアに特化し、看取りを積極的に行っている老人施設で働いています。
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