大腿骨近位部骨折の保存療法はどのように看護すればいいの?
高齢者に高頻発する骨折です。
大腿部近位部骨折そのものの障害より、ベッド上安静に伴う合併症によるさまざまな問題が出現します。
具体的に、認知症の出現・増悪、肺炎、褥瘡、尿路感染などです。
よって早期に手術を行い、リハビリを開始するとが望ましいとされています。
しかし、手術と麻酔というのは、体にかなりの負担がかかります。
全身状態の悪い人や、認知症がひどく手術を行うほうが寝たきりでいるよりも危険度が高いと判断される場合には保存療法を選択します。
私は、認知症に特化している特養に勤めていますので、保存療法を選択する方が多くいます。
しかし、保存療法はどのようにしたらいいのか、どのように勧めていったらいいのか、どのような経過をたどるのか、どの教科書にも書かれていません。
病院の医師や看護師に質問しても明確な返事が返ってきません。
そこで保存療法を選択した方に多く関わっていく中で、実際に注意する点について学ばせて頂いたことをまとめました。
看護するうえで参考になれば幸いです。
頸部骨折と転子部骨折の大きな違いは?
大腿部近位骨折は、関節の中で折れる場合「大腿部頸部骨折」と、それよりももう少し膝側の関節外で折れる場合「大腿骨転子部骨折」の2つがあります。
頸部骨折
関節包の中のため骨膜がなく仮骨が形成されないことや、関節液が骨癒合を阻害するため、治りにくいと言われています。また、血液循環が悪いため骨循環が悪いため骨癒合が得られにくいのです。
頸部や骨頭部は、回旋動脈という細い血管で栄養を与えられています。
頸部骨折をした時にこの動脈が損傷を受けると血流が悪くなるので、骨頭の部分が壊死を起こして、最悪の場合には骨頭がつぶれてくることがあります。
これを遅発性骨頭陥没と呼びます。この状態になると痛くて歩行できなくなります。
「遅発性」と言われているのは、頸部骨折が一旦癒合した後にも骨頭がつぶれてくる場合があるという意味です。
転子部骨折
骨癒合は得やすいが受傷時の外力も大きく、内出血もするため全身状態に影響がでやすくなります。
受傷後3か月まで
最初は、1週間後、次は2週間後、3週間後、1か月後と定期受診をしてレントゲン検査をして、その結果で医師が何度までギャッジアップ可なのか指示してくれます。大体は30度ぐらいまでです。
良肢位の保持
自然に癒合するまで良肢位を保ちます。
良肢位とは、膝を軽く曲げられるように薄いクッションを入れます。
そして外転・内転しないように、尖足にならないようにクッションで固定します。
体位変換時も、前述の良肢位が保てるようにクッションの位置を工夫しましょう。
また移乗や体位変換は、2人で行って足が固定されるように気をつけましょう。
鎮痛剤は、安静時に痛みがなければ使用しないこともあります。
鎮痛剤を使用して痛みがないと、動いてしまうため安静が維持できないからです。
精神的ケア
寝たきり状態になり気力を失い、食欲まで落ちる人もいます。
ですのでリクライニング車いすに移乗して、リビングに出てきてもらい一緒に過ごすようにしたり、散歩をしたりしてできるだけ気分転換を促しています。
そうすることで、まず不穏がひどくなる人はいません。
筋力低下・拘縮予防
また体全体を自由に動かせないため、筋力や体の機能が衰えてしまい、骨折した部位だけではなく体全体の動きまで弱まってしまいます。
食事は、嚥下力に問題ない方なら、おにぎりにする、水分摂取はストロー付きのマグにするなどできるだけギャッジアップでも自分で手を動かして運動できるようにしましょう。
訪問のマッサージやリハビリを入れるのも一つの方法です。
拘縮は、予想していたよりもあっという間にきますので気をつけましょう。
深部静脈血栓症・肺塞栓症の予防
下肢の動きを制限されているうちに下肢の深部静脈の血流が悪くなり血栓ができやすくなるために発症します。
下肢にできた血栓は、肺動脈へと移動し、肺塞栓症を引き起こし致死的状況になりうるため、適切な観察が必要です。
肺塞栓症を合併すれば、急な呼吸困難、胸痛、頻脈、血圧低下、ショックなどの症状が現れます。
施設では、動かせるところは動かすようにしたりマッサージをします。
また、弾性ストッキングをご家族に購入してもらって装着し予防しています。
ご家族に「弾性ストッキング」を依頼すると多くの人は「男性ストッキング」と勘違いするので、紙にメモするなどし配慮しましょう。
受傷後3か月以降
レントゲンで癒合の具合をみて、そして痛みの具合をみてギャッチアップの角度を少しずつ上げて様子を見て下さいという指示がでます。
入浴も許可されます。
痛みもだいぶ軽減されて本人も楽になってくるようです。
しかし、良肢位の保持や深部静脈血栓症・肺塞栓症の予防など3か月前の注意点は、引き続き気をつけましょう。
頸部骨折は、癒合する可能性が少なく体重をかけることはできませんが、あまり傷みなく座ることが可能になってきます。
6か月後以降は、受診が3か月に1回になります。
1年が経過すると半年に1回か終診になります。
回復の要は気力
動けなくなったことによる気力低下により、食欲低下にもつながり残念ながら死に至った方もいます。
その一方で、1年後には、本当に骨折したのかと疑うほど、起立や数歩歩行できるようになる人もいます。
それは気力の違いからくるものではないかと強く感じます。
ですので気力が落ちないように看護していくのが要になると思います。
ぞのためにはご家族や介護職、PT、OTの方たちの協力なしにはできません。
良好な協力関係を保てるように連絡や報告をまめにすることを怠らないことも大切です。
この記事を書いた人
- 十数年、一般病院で勤務。その後、老年看護、認知症看護、ターミナルケアに興味があり老人施設に就職しました。現在、認知症ケアに特化し、看取りを積極的に行っている老人施設で働いています。
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十数年、一般病院で勤務。その後、老年看護、認知症看護、ターミナルケアに興味があり老人施設に就職しました。現在、認知症ケアに特化し、看取りを積極的に行っている老人施設で働いています。
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