ナースはつらいよ

飛び込み出産の危険性~妊婦検診の重要性

皆さんは「飛び込み出産」という言葉を聞いたことがありますか?

社会問題になっている飛び込み出産・・・

産婦人科で働いた中での私の経験を踏まえてお話ししたいと思います。

飛び込み出産とは?

飛び込み出産とは、「妊娠しているにもかかわらず、医療機関への定期受診を行わず、かかりつけ医がない状態のまま、出産時に初めて医療機関に受診し出産すること」です。

飛び込み出産の原因としては

  • お金がないなどの経済的理由
  • 知識の欠如
  • 家庭事情

が多くを占めています。

私が経験した飛び込み出産の中には、本人が妊娠の自覚がないまま、臨月をむかえ出産に至った症例もありました。

その方は40歳経産婦さん。もともと体重85Kgで体格のよい方でしたが、初診時に妊娠兆候に気が付かなかったのかと問うと、

「最近太ったと思っただけだった」
「40歳だから閉経で生理がこないと思った」
「胎動と思わず胃腸が活発に動いていると思った」

などの理由で、本人の自覚がないまま一度も受診せずに経過し、産気づいてあわてて飛び込み出産となった方もいました。

母子の健康面からのリスク

飛び込み出産の危険性について、
まず母子の健康面から考えていきましょう。

検診を受けていないとまず問題になるのは、現在何週かを正確に把握することが困難であるということです。

さらに、妊婦さん本人の血液型や感染症の有無も分かりませんし、妊娠中の母体の経過や状態も不明です。

来院してすぐにそれらの検査をしますが、すぐに結果はでません

こうした母子の状態を把握しながら適切に対応するというプロセスが、通常の検診を受けているお母さんに比べるとどうしても後手に回るため、結果として不利益が生じる可能性があります。

例えば、B型肝炎に感染しているお母さんから生まれた胎児は、出産後72時間以内に「γ-グロブリン」という薬を胎児に投与する必要があります。

しかし、飛び込み出産のケースでは、母体の検査をしても検査結果が72時間を過ぎてしまう場合もあり、結果として正しい対応が出来ないため、胎児にも感染してしまうという可能性が生じ得るのです。

さらに感染症の中でも特に、HIV感染には厳重な扱いが必要になってきます。

このように感染症リスクは母子ともにかなりのものである、という理解が必要です。

また、飛び込み出産のお母さんは最終月経日が不明なケースが多いため、産まれた赤ちゃんも、正確な週数がわからないことが多く、推定の週数としか診断できない状況になります。

この大きさと体重で正常なのか異常なのか・・・。

医師が即座に判断できないことに伴う負担は、結果的に母子にもマイナスの影響が出かねないということは知っておいたほうがよいでしょう。

飛び込み出産の受け入れリスク

飛び込み出産については、実は受け入れる病院側にもリスクとなります。

先ほど述べたように感染症のリスクが高いことが第一の問題ですが、第二の問題としては経営面のリスクがあります。

飛び込み出産の患者さんは概して経済的に困っている方が少なくないため、せっかく最大限の注意を払いながら対応したとしても、医療費を払ってもらえないというケースが少なくありません。

こうした「出産費用・入院費用の未払い」は、病院の経営を圧迫させる要因のひとつになります。

第三の問題は訴訟リスクです。

一般的に産科医は他科に比べて訴訟リスクが高い傾向にありますが、飛び込み出産では様々な問題が発生する可能性が高いため、結果的に母子の健康状態、さらには生命にかかわる問題が発生してしまうことがあります。

結果として訴訟など医療紛争につながるケースも少なからずあり、日々の診療に加え、法廷への対応が加わるとなると(場合によっては、さらにマスコミ対応が加わることもあります)、現場が心身ともに疲弊することは容易に想像していただけるかと思います。

まとめ

妊婦健診は母体と胎児の状態を把握する大切なもので、受診しなければ出産に伴うリスクは一気に高まります。

まずは、国や地方自治体を含め、受診を促す体制の整備や啓蒙活動が必要だと思われます。

それ以上に、妊娠可能なすべての女性に対して、

「妊娠の兆候の正しい把握や、妊娠出産期の体調管理」
「本当に望んでいるかどうかを含め、妊娠に関して真剣に考える」

などの家族計画の重要性についての教育も、今後取り組んでいくべき課題だと考えます。

この記事を書いた人

ぱんだ
産婦人科病棟/内科整形外科の急性期病棟勤務
現在は2児のママで育休中。
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二児のママ☆育休中
ぱんだ
育児に追われる毎日ですが、様々な情報を発信できればと思います。

産婦人科病棟/内科整形外科の急性期病棟勤務 現在は2児のママで育休中。

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