増加するモンスターペイシェント~ナースの奮闘
みなさん!こんにちは。
突然ですがモンスターペイシェントという言葉は聞いたことがある人も少なくないと思います。
今回はモンスターペイシェントの実態とその際の医療側の対応について語りたいと思います。
モンスターペイシェントとは?
医療機関や医療従事者に対して身勝手で理不尽な要求をしたり、医療者に非がないにもかかわらず言いがかりをつけてきたり、時には大声で脅迫したり、暴言・暴力をふるったりする患者やその家族のことを、モンスターペイシェントと言います。
単なるクレーマーとは違い医療者側に被害をもたらすという意味で、深刻な社会問題になっています。
モンスターペイシェントは最近増加傾向にありますが、その背景としては
- 患者の立場が以前よりも尊重されるようになったこと
- 医療水準が向上したこと
- 患者側のモラルが低下したこと
が挙げられます。
まず、患者さんの立場の尊重についてです。
10数年前に「患者さんを呼ぶときは、原則として姓名に『さま』を付けるように」という厚生労働省からの通達が出て以来、『患者様』という呼び方が一般的に広まるようになりました。
このことは患者さん側に「お客様である」という認識を与えることにつながり、中には
「多少はわがままを言っても許されるだろう」
「お客なのだから自分の要求が通って当然」
という偏った意識をもつ患者さんも出てきたのではないかと言われています。
次に日々医療は進歩・発達していますが、これによって
「どんな病気も治って当たり前だろう」
「治せないのは医者の腕が悪いからだ」
という過剰な期待を持つ人も増えてきて、自分の期待と違う結果が起こった時にモンスター化するケースがあるようです。
最後に患者さんのモラルの問題についてです。
「医療費は支払いたくない」
「病院で起こった気に食わないことはすべて医療事故だ」
などなど、身勝手でモラルの低い考え方をする患者さんがいることも事実で、これがトラブルにつながることもあるようです。
トラブルの原因
モンスターペイシェントとのトラブルになった原因として多いものは、以下のものがあるようです。
- コミュニケーションによるもの
- 治療方針やケアに対してのもの
- 患者同士のトラブルによるもの
この中でも、特にコミュニケーション、すなわち医師や看護師などの医療者が患者さんやご家族に接する態度・接し方(専門用語では「接遇」といいます)にかかわるトラブルは、非常に多いようです。
接遇に関しての院内研修、講演等を開催する医療機関が最近は増えてきています。
それを受講する目的は、もちろん受講者が自らのスキルアップを図るということがあります。
しかしそれだけではなく、「モンスターペイシェントから自分の身を守る」という切実な事情があることも事実です。
治療方針やケアに関しては、医療機関が持てる力を注いで患者さんに満足いただくよう努力するのは当然のことです。
しかし、どんな医療機関にも力量の限界というものは存在します。
その部分をいかに患者さんやご家族にご理解いただくか、その部分で苦労するケースが少なくないのかもしれません。
最後に、患者さん同士のトラブルに関しては、相手が複数で、なおかつ利害関係が複雑に絡みあう分、対応は非常に難しいことが多いです。
「なるべく公平に」という観点で双方の患者さんに接するしかないのですが、言うは易く行うは難しで、結局医療機関の事務の方々なども巻き込んで総出で対応しなければならないケースもままあります。
私が体験したトラブルと対応
私が勤務していた病院で体験した実例をお話ししたいと思います。
勤務先の病棟で、余命いくばくもないと予想され、なおかつ意思疎通が困難な状態で入院中の患者さんがいました。
その家族の方が面会の度に、
「きちんと看護ケアを行っているのか?」
とスタッフに何度もたずねてくるのです。
スタッフもきちんと実行をしている旨を伝えてはいたものの、家族は納得する様子がありません。
逆にスタッフに対する不信感が日々募らせ、毎日のようにクレームや無理な要望を求めてきました。
スタッフ同士カンファレンスを数回重ね、家族とゆっくり話し合う機会を設けました。
私たちはまず、1日の限られた時間の中でチームで協力して24時間必要な医療・看護ケアを実践していることを再度説明しました。
さらに、ご家族にもわかるように「チェックリスト」を病室に置き、実行したらチェックをすることを提案し、実施しました。
さらに、すべての要望は受け入れるのは不可能とお断りを入れたうえで、ご家族の要望を看護ケアに取り入れて実践するようにしていきました。
その後は家族の態度も変わり、看護師との信頼が少しずつ築けていけるようになりました。
その患者さんは結局お亡くなりになったのですが、ご家族は
いろいろよくしていただき、ありがとうございました」
と丁寧にお礼を言い、病院を後にされたのでした。
まとめ
患者さんやご家族は人!私たちナースも人!
この人と人が真摯に向き合って誠意をもって対応し、どこまで寄り添えるか。
それがモンスターペイシェントを生み出すことなく信頼を構築していくポイントだと感じました。
この記事を書いた人
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産婦人科病棟/内科整形外科の急性期病棟勤務
現在は2児のママで育休中。
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