元銀座ママから学ぶ☆ひとを気分良くさせるコミュニケーション術
私が勤めている高齢者施設に、元銀座ママをしていた80代のAさんが入所してきました。
短大卒業後、地方で中学校の教師を数年してから上京をして、銀座でスナックを70歳近くまで経営していたそうです。
ママだったころの写真を見せて頂くと、自分でも言っているように割腹が良くて、お世辞でも美人と葉言えません。
しかし、話術に長けていて、お客さんからは「ママは顔が良くないけど話が面白いからまた来た」とよく言われていたそうです。
認知症を患っていながらも、きっと銀座ママでいたころに身につけたと思われる気遣いのあるコミュニケーションでみんなを元気づけてくれていますのでご紹介します。
傾聴
リビングで隣の席になるCさんが何回も同じ話をしても、とんちんかんな話をしても、嫌な顔せず上手く相槌をうって聞いてくれています。
そのおかげで、夕方になると家に帰るとソワソワしていたCさんは、すっかり落ち着きました。
そして、職員までAさんに甘えて、上司に叱られたり、体調が最近すぐれないなどと話を聞いてもらっています。
何か意見するわけでもなく、「それは、運が悪かったね」と職員を気遣ってくれています。
私も、気分が落ちている時はAさんのもとに行くと気分が上がります。
褒める
同じ入居者、職員、面会にいらっしゃるご家族、実習生など、誰にでも声をかけてくれ、小さいことに気づいて褒めてくれます。
例えば、白いTシャツに小さな刺繍がしてあるのを見つけて、「あらワンポイントで刺繍がしてあって素敵。あなたセンスいいわね。似合うわよ」「あら、あなた、日本人にしては足が長いわね。ズボンが似合うよ。すごいかっこいいよ」
などです。
何かケアを提供した時も、「さすがね、上手いわ」と褒めてくれます。
そして、いつも「私、他人を滅多に褒めないし、お世辞を言わない人だから本当よ」と付け加え、他人に本当に褒めてくれているのかもと思わせ、さらに気分を良くしてくれるのです。
いつも何にでも深く感謝してくれる
トイレでちょっとズボンを上げるのを手伝っただけでも、「あなたがいてくれて本当に良かった。恩にきるよ」と誰にでも本当に丁寧に感謝してくれるのです。
「美味しい、食事が食べられるなんて、こんなありがたいことはないね。」「自分の部屋を用意してあるなんてうれしいね。ありがとう。」当たり前にとらえがちなことにでもです。
認知症で混乱した時に、若い職員が「違いますよ、こうですよ」なんて偉そうな口をきいても、怒らず「私、年で頭がおかしくなったから、教えてくれて本当にありがとう」」と笑って返してくれます。
相槌上手
元銀座ママAさんに出会ったあとに、相槌の技術を紹介した本を見つけ読んでみると、これAさんのことだと思いました。
その本とは、心理学者である斎藤勇氏が書いた「超・相槌/心理学の権威が教える人生が劇的に変わるコミュニケーションスキル」です。
Aさんを観察すると、自ら積極的に話すわけありません。
人の話をよく聞いてうまく相槌をうってくれるから、他人は気分が良くなるんだと思いました。
この本を読んでも、仕事をしていくうえで必要なコミュニケーションスキルとは「話を聞く」という要素が非常に大切だということがわかります。
同書では、聞き手の役割が重要だということを踏まえた上で、聞き手のスペシャリストとなるための「相槌」を紹介しています。
「料理のさしすせそ」があるように相槌にも「さしすせそ」が存在し、心理学でも効果が実証されているそうです。
相槌の「さしすせそ」とは
「さ」:さすが(承認欲求が最も満たされる相槌)
「し」:実力ですね(成功者と友人になれる相槌)
「す」:すごい(自己重要感を満たす相槌)
「せ」:絶対(是認欲求を満たす相槌)
「そ」:そうですね(人間関係の基盤をつくる相槌)
よくAさんが使っていることに気づきました。
また相槌の「あいうえお」もあります。
相槌の「あいうえお」とは
「あ」:ありがたい(感謝の相槌)
「い」:いえ、いえ(もっとも使い勝手のいい相槌)
「う」:運が悪かったですね(相手の気持ちを救う相槌)
「え」:縁があります(強い絆を生む相槌)
「お」:恩を感じます(深い感謝を表す相槌)
これもAさんが使っていると、うなづきながら読んでしまいました。
同書には、世間でよくある相槌を網羅的に紹介しどのような場面に使うと効果的かを、実際の使用シーンを具体的に紹介していますので実践型の自己啓発本となっています。
コミュニケーションが苦手な方、もっとスキルを上げたい方にお勧めの本です。
さいごに
人は誰でも自尊心を高めたいという「自己是認欲求」という基本的な欲求があります。
自我自賛では不十分なことがあり、これを満たすのは案外難しいものです。
ですので、この欲求を満たしてくれる人は自然に他人から好かれるのだとAさんを観察しつくづく思いました。
Aさんを見習って、コミュニケーションスキルを上げて良好な人間関係を構築していきたいものです。
この記事を書いた人
- 十数年、一般病院で勤務。その後、老年看護、認知症看護、ターミナルケアに興味があり老人施設に就職しました。現在、認知症ケアに特化し、看取りを積極的に行っている老人施設で働いています。
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十数年、一般病院で勤務。その後、老年看護、認知症看護、ターミナルケアに興味があり老人施設に就職しました。現在、認知症ケアに特化し、看取りを積極的に行っている老人施設で働いています。
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