膣から便が流れ出る?!
特養で働いているある日のこと、介護職から、「Bさんから茶色のおしっこがでているので見て下さい」という電話がありかけつけました。
茶色のおしっこ?・・・
昨日Bさんは、38度近くの発熱があったのでもしや肝炎?膀胱炎?腎炎?など考えを巡らせてBさんの元へ駆けつけました。
見ると、なんと!繊維質が混じった水様便が流れ出ているではありませんか。
これが本当に尿道から出ているのか?と疑い、側臥位になってもらい肛門を見させて頂きました。
肛門からでなく、ダラダラと茶色の便汁が尿道or膣から便が流れでてくるのです。
でも、どの穴からかわからないと、どの受診科にかかっていいのかわかりません。
そこで導尿をさせて頂くと、肉眼的に尿は正常でした。
膣から便汁が流れているということは、もしかして直腸や子宮、経膣に悪性腫瘍があって穿孔を起こしているのかもと悪い予感がよぎり婦人科を受診しました。
本人の症状
Bさんは、60代女性なのですが若年性アルツハイマーにより数年目から寝たきりです。
言葉にならない発語が稀にあるだけで、自発的に自ら症状を訴えることはありません。
腹部を圧迫して痛みの有無を本人の表情から読み取ろうとしたのですが、反応が薄くよくわかりません。
検査と診断
婦人科外来で、クスコ―で子宮内を覗くと子宮に便汁が溜まっているということが分かりました。
そして、採血、腹部・経膣エコー、腹部CT・MRI 子宮内細胞診を受けました。
特に腫瘤など怪しい影もなくたぶん子宮留濃膿腫でしょうと言われ、2週間後の細胞診の検査も問題ありませんでした。
ということで、「子宮留膿腫」という診断が下りました。
なぜ子宮に便汁が溜まるのか
日々、1回/日 特に排便時は念入りに陰部洗浄をしているのになぜ子宮に便が溜まるのでしょうか?
婦人科の医師によれば、閉経後の高齢者は、加齢に伴い子宮頚管の狭窄や膣自浄作用の低下、日常動作の低下により子宮留膿腫になりやすいそうです。
子宮留膿腫の80%は前述が原因であとの、約20%は悪性によるものだそうです。
膣の自浄作用は凄いもので、人間はいかに活動が必要か思い知らされました。
治療
抗菌剤の内服or投与、膣錠の使用 、宮頚管拡張により排膿するのが子宮留膿腫の一般的な治療です。
Bさんは、採血の結果CRPが低く解熱していたため抗菌剤は使用せず、排膿だけして様子見ることになりました。
その後、勤めている施設で、Bさん以外にも子宮留膿腫になった方がいました。
排泄は自分で自立していたのですが、排便後は清潔が保たれていなかったようです。
腹痛と発熱で受診したところ子宮留膿腫と診断され、5日間、クロマイ膣錠を処方され治癒しました。
排泄は自立していたのですが、膣錠は自分では入れられず介助させて頂きました。
さすがに膣錠は、男性は抵抗があり、男性スタッフではなく女性スタッフでしました。
予防と早期発見
高齢女性の下腹部の痛み、膿性帯下、不正出血、発熱があった場合は、子宮留膿腫を念頭に置きましょう。
排便は、できるならばトイレで、寝たきりでオムツ内の排便が仕方ない時は、排便に気づいたらすぐにオムツ交換し念入りに陰部の清潔を保つしかないそうです。
あとは、寝たきりにしないように日々の関わりが必要です。
特に訴えがない方は、十分な観察が大切です。
必ずしも、子宮が腫大するほど膿が貯留するとも限らないので腹部を触診してもわからないそうです。
また、排泄が自立しているかたで、よく排便後は陰部を拭けていなかったということがあります。
パットが自分で交換しやすいように用意したり、ショーツは入浴時だけでなく毎日交換するようにしています。
ウオッシュレットがあるならば活用し自尊心を損なわないようなケアを心がけたいものです。
デリケートゾーンですので、認知症を患っていない方でも、なかなか訴えにくい病気です。
さいごに
加齢に伴う体の変化を知っていくことは大切なことですね。
自分もいずれこのような体の変化に直面することになるでしょう。
加齢に伴う変化を知りできる限り予防に努めていきたいです。
この記事を書いた人
- 十数年、一般病院で勤務。その後、老年看護、認知症看護、ターミナルケアに興味があり老人施設に就職しました。現在、認知症ケアに特化し、看取りを積極的に行っている老人施設で働いています。
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十数年、一般病院で勤務。その後、老年看護、認知症看護、ターミナルケアに興味があり老人施設に就職しました。現在、認知症ケアに特化し、看取りを積極的に行っている老人施設で働いています。
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