家族が自然な看取りを受け入れることができない理由
最期まで自分らしく生きたい、生きて欲しいと誰もが願っています。。
看護師は、病院などで高齢者の終末期に人工的に栄養を投与するとあまり有益にならないことを知っているため、自然な看取りができたならばと考えます。
しかし、様々なことでご家族の受け入れが難しい現状にあります。
なぜ受け入れが難しいのか精神面と環境面の観点から今までお聞きしたご家族の意見を考えまとめてみました。
精神面
本人の意思の確認ができない苦悩
認知症など患って本人の意思が確認できない場合、ご家族は、本人の意思を聞かずにこのまま自分たちの意見で進めていいのだろうかという苦悩に苦しめられます。
死への過剰な不安
高齢者が徐々に経口から食事がとれなくなり痩せていく状態が自然な流れです。
しかし、今の時代そのようにお亡くなりになるのを見たことがない方が大半ですのでどのような状態になっていくのかわからず戸惑います。
●餓死は苦しいのでは
点滴せずそのまま看取ることは餓死になり本人を苦しめることなのではないかという質問をよくされます。
外見上、苦しそうな姿に見えることもあるためそのように捉える傾向にあります。
終末期に人工的な水分と栄養を投与しないほうが鎮静効果をもたらす脳内モルヒネが増加することを説明していますが、その姿に耐えられずパニック状態になる方もいます。
●死はすべてが失くなる
お坊さんによれば、現在は、死んで身体が亡くなっても魂は永遠できっと自分たちの側にいてくれる見ていてくれるという感覚が薄れていっているようです。
見えるもの形あるものが全てで、死イコールすべてなくなってしまうようです。
ご家族の欲のため
自分の精神の支えが亡くなってしまう、孫の顔を見させるまで、何かしないと親戚に責められるのが嫌だなど、実のところすべてはご家族の欲にしかすぎないことがあります。
いつから終末期なのかわからない
診察や検査値だけでは医師もなかなか判断がつかないグレーゾーンの部分です。
ある医師の言う通り、いつ死ぬかは神さまにしかわからず、数日で亡くなるのはおよそ予測ができるが、いつから終末期であるか確定は難しいものです。
また、親族や知り合いに、夏バテなどで食べられないときに一時点滴をしてもらい生き延びたという経験があると、今回もきっとそうに違いないと思い込みあきらめないででいる方もいます。
病院への過剰な期待
病院の方がいつもモニターを着けて看護師や医師が常に見ていてくれて、何かあった時にすぐに対応ができるから、死に目に会えるからというご家族がいます。
しかし、病院、施設であっても、家庭であっても、一人の時になくなってしまうのは避けることは難しいものです。
環境面
家族の役割の変化
少子高齢化となり、核家族が多い時代となっているため、家族または兄弟・親せきが協力して看病していくのは困難です。
住み慣れた家で最期まで過ごしたいと思っている人が多いのですが、やはり訪問医療・看護・介護だけでカバーするのは難しいことがあります。
ご家族から医療保険による一般の訪問看護は1時間/日と決まっており、土日はやっていないので家庭では不安というお話を聞きます。
医療保険ではなく自由な訪問看護がありますが、相場が6000円/1時間以上と高価になり経済的に対応できないということも聞かれます。
地域によって、特に地方では訪問医療・看護を実施している病院が少ないことも問題になっています。
受けいれる病院・施設がない
病院という場は治療する場であり、入院したならば点滴をせざる得ません。
自然な看取りをしたいならば在宅へとなりますが、前述した通り在宅で看取るのはなかなか難しいのが現状です。
国の方針により、高齢者施設の中で特養でのお見取りがだいぶ浸透してきようです。
しかしながら、特養入所を希望しても数か月~数年待ちなのが一般です。
特養は医療を望まなければ最期まで見てくれる所のはずですが、施設の方針によっては看取りをしない、または食べられなくなったら即入院へという施設があり、入院後受け入れを拒否するところがあります。
ほかの高齢者施設は、特養に比べて料金が高額となっている、また、看取りを受け入れる体制となっていないkとが多いのが現状となっているようです。
さいごに
生を受けたときから死に向かって私たちは生きています。
老衰で死が近づくにつれての自然な現象を受け止められるように看護師は寄り添って援助できるようになりたいですね。
この記事を書いた人
- 十数年、一般病院で勤務。その後、老年看護、認知症看護、ターミナルケアに興味があり老人施設に就職しました。現在、認知症ケアに特化し、看取りを積極的に行っている老人施設で働いています。
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十数年、一般病院で勤務。その後、老年看護、認知症看護、ターミナルケアに興味があり老人施設に就職しました。現在、認知症ケアに特化し、看取りを積極的に行っている老人施設で働いています。
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