終末期看護の考え方
看護学校や、看護の現場でよく耳にする 「自分らしい生活」「自分らしい死」ですが、実際病院勤務の時には、
身近なものではなかったと思います。
在宅看護をするようになり、何度もそれに遭遇することになりました。
本当に、今までのやってきたこととは違うことで、すごく考え深く、自分の人生も考えてしまうほどでした。
しかし、なかなか本人だけではない思いがあることから、「自分らしい」というのも難しいことです。
戸惑いいっぱいの終末期看護
在宅で初めて、終末期の看護をした時のことでした。
高齢の男性の方で、認知症、腎不全、そしてもろもろ合併症のある状態でした。
当然、在宅導入しましたが、みるみる状態は、悪くなり食事も摂れなくなっていきました。
私の経験した病院での感じでは、点滴や注入、あるいは、CVポートなど、どうにかして栄養を体に入れようとしていました。
でも、今回、食べれなくなったからと言って、何か栄養を補給することはなく、状態が悪化したことに対して、何か治療的なことをすることはありませんでした。
「これでいいのかな?」と思いながらも、ドクターや先輩、上司などにアドバイスを受けながら、仕事をしていました。
この方は、在宅に入って一度も苦痛、痛みなどを訴えることはなく過ごされ、よく訪問時には、戦争の時の話をしてくださいました。
話をしなくなってからは、穏やかな顔で眠っている感じで、最後も眠るようにという表現の通りの最後を迎えられました。
この後、研修会や勉強会などで学んだことですが、終末期で最後を迎えようとしている人に、積極的な治療をすることや、食べれないのに栄養を補給しようとしたりすることは、逆に、苦痛や痛みを与えてしまうことがあるということでした。
自然に逆らわないことで、脳内モルヒネというものが促進し、痛み、苦痛のない状態で過ごせるということを 長く看護師をやっていたのに、初めて知ることになったのです。
家族の葛藤
会社は同じですが、ステーション違いの先輩のお宅へ長く訪問看護に、行かせてもらいました。
もともとは、そこのお爺ちゃんが担当でしたが、施設に通っていたお婆ちゃんが、終末期を迎え担当することになりました。
先輩は、看護師の仕事とケアマネも兼任しており、在宅の仕事も長く、この道ではベテランさんです。
お婆ちゃんは、もともとアルツハイマーがあり、嫁の立場でありながら、長く介護をされていたようです。
しかし、お婆ちゃんも高齢になり、体力も落ちてきました。
誤嚥性肺炎を繰り返し、しまいには昏睡状態になり、自宅で看取ることを選択されました。
勿論、「自然な死」を選択することが、本人にとってもいいのではと、あえて、点滴などの処置はせず、静かで穏やかな最後を迎えました。
先輩である嫁の介護は本当に頭が下がるもので、本当によくされていました。
ただ、愛情も深かったせいか、「この選択でよかったのか?」とお婆ちゃんの死後悩むことが多く、お爺ちゃんの訪問に行く度に、涙を流しながら、話されていました。
楽しく生活していたのに
一人暮らしの高齢女性の家に行っていました。
アルツハイマーがあるのですが、ADLに問題なく、デイサービスやコーラスの習い事、夕方には自宅近くを散歩し近所の人と交流を持ったりされていました。
「もう、年だからね。いつどうなってもおかしくないから、楽しまないと。」と、いつ訪問しても笑顔で楽しそうに話されていました。
しかし、持病にリンパ腫があり、月に1回通院していたのですが、ある日抗ガン治療をすることになりました。
本人は、実際のところよくわかっていない状態です。
抗がん剤治療を始め、ADLは明らかに縮小しました。
食欲もなくなり、楽しみであったコーラスはやめてしまいました。
独居のことから、帰るに帰れないときもあり、本当に気をもんだものです。
認知症だったので、「自分がどうしたいか?」という判断がもうできない状態でした。
家族は、ドクターにお任せ状態の上、この状態でも本人様を一人にさせている状況でした。
私は、このあと、調整で担当を降りたので、詳しいことは知らないのですが、手術をされ、さらに体力が落ちたようです。
勿論、自宅にいらっしゃり、デイサービスに通われ、訪問看護、訪問介護でフォローされているようでした。
答えは、何が正しいかわかりませんが、痛みも、苦痛もなく、楽しく過ごされていたのができなくなってしまったことが、残念でした。
。
この記事を書いた人
- 転職を重ねながらも、この仕事に長く関わってきました。最近、月数回、小児科の夜間救急のパートで仕事をしています。
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転職を重ねながらも、この仕事に長く関わってきました。最近、月数回、小児科の夜間救急のパートで仕事をしています。
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