輸血インシデント〜Part2〜
〜Part1~に引き続き、輸血で起こりやすいインシデントを更に幾つかまとめてみました。
ルート間違い(同じルートで他の薬剤を同時投与)
輸血の場合は、副作用が出た時に輸血を即座に止めますが、止めている間にルートが詰まらないように、加えて側管から薬剤を投与出来るように本体ルートの横から繋げて投与します。病院によっては本体ルートはなく輸血のみ投与しているところもあるかと思います。今回は本体ルートがあると過程した場合のインシデントについてお伝えします。
まず、輸血自体は単独投与なので、本体ルートの薬剤は止めなければなりませんよね。その本体ルートの薬剤が流れたままになっているというケースが少なからずあるのです。
本体ルートの生理食塩水が無くなって、輸血が逆流していたり、輸血が流れず固まってルートが閉塞したりと被害は多々あります。また、投与がCVやPICCなど2本以上のルートがある場合、一つのルートには持続の化学療法が投与されている事もあります。そして、あろう事かその化学療法の側管に輸血が繋がってしまう!なんて事も。
輸血に不慣れな研修医の先生が起こしてしまいがちなインシデントです。その場で「先生、こちらのルートです」と上から目線で訂正出来れば良いのですが、そんな時に限って、「僕が後はやっておくので、いいです」なんて言われて即座に退室していたなんて事も。何も知らない研修医の先生は満足気に5分の観察を終え、その後15分後に看護師が観察に行った時に青ざめるという事態に陥ります。
ルートが沢山繋がってある患者さんほど、一つ一つのルートをたどって、正確なルートである事を確認した上で実施しなければいけませんね。
三方活栓の向き間違い
輸血を側管から投与する場合、本体を止めると言いましたが、止める三方活栓の向きにも注意しなければなりません。
本体を止めて輸血を流したつもりでも、患者さん側ではなく点滴本体の方に流れるような向きになっている、その場合大抵滴下しないのでルート閉塞してしまいます。そうすると、針の入れ替えですね。輸血が滴下しなければ不振に思って三方活栓を確認すると思うのですが、そこは何故かスルーされてしまうこともあるのです。
急速投与
本体ならば赤血球2単位を2時間、血小板10単位を1.5時間で施行する予定だったものが、15分後に観察に行くと終了していた、ということもありました。これは様々な要因が考えられます。
よくあるのが、きちんと滴下を合わせていたけれどルートの一部が身体のどこかで下敷きになっていた。そして、少し凹んでいたルートは患者さんの体動とともにきれいに開通。今まで合わせていた滴下より一段と早くなってしまったという事例です。
他にも患者さんの体動によりクレンメが全開になっていたり、これは稀ですが患者さん自身が輸血を早く終わらせたいために滴下スピードを早めていたということもありました。
血液型ミス
一番あってはならない事だと思います。よほどの事がない限り、こんな事は無いと思うでしょう。
よほどの事…あるのです。骨髄移植をされた患者さんは、一定期間血液型が定まりません。そして、ある時からレシピエントの血液型に変わってしまいます。ドナーとレシピエントが同じ血液型であれば問題無いのですが、全く違う場合もよくあります。カルテに◯月◯日まで赤血球輸血A型(+)、血小板輸血A型(+)→◯月◯日から赤血球輸血A型(+)、血小板輸血B型(+)なんて変更があるのです。輸血の種類によっても血液型が変わるので、あの患者さんはA型なんて覚える事も不可能ですし危険です。
血液内科だけの特殊な事例かもしれませんが、血液型の確認は輸血オーダー指示受け時、輸血連絡時、準備時、実施時、実施後と逐一確認しておかなければなりませんね。
赤血球輸血は2万円弱、血小板輸血だと1本約8万円もします。HLA適合血小板輸血だとそれ以上。患者さんの中には1滴でも惜しいと、ルート内全てを流しきってと言われる方もおられます。確かに、勿体無い。いやいや、お金の問題ではありませんね。
今回紹介したのはほんの一部の事例ですが、献血して下さった方々の貴重な血液を無駄にする事の無いよう、そして、受ける患者さんが安全に安心して輸血を受けられるようにしたいです。輸血のインシデントはいずれも笑い事では済まされないので、危機意識を高くもって取り組みたいですね。
この記事を書いた人
- 看護師9年目。血液内科病棟で勤務し、小児から成人・老年期の看護に携わる。結婚半年後に夫の転勤に伴い退職。現在は一児の母で子育て奮闘中。
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