輸血インシデント〜Part1〜
輸血業務をしていると、様々な危険が潜んでいる事を思い知らされます。
私は血液内科の病棟で働いていたので、毎日輸血業務があるのは当たり前。平日日勤で受け持った患者さん全員が輸血が入るなんて事も日常茶飯事、土曜日などは日曜が原則輸血をしないということもあって、輸血台に並ぶ輸血が20件近いことも殆どでした。
新人の頃に初めて輸血業務に携わる時は緊張感を持って取り組みましたが、慣れてくると作業自体は点滴業務と同じ感覚にまで陥るようになります。そんな日々を送る中、輸血業務で起こったインシデントを沢山見てきたので、それらを紹介します。
プラグが外れて輸血が漏れる
輸血を側管のプラグに付けたと思っていたら、プラグがきちんとはまっておらず輸血が漏れていたという事があります。
輸血開始時には確実にチェックしなければなりませんが、患者さんと話をしていて気づくとシーツが真っ赤あるいは黄色くなっているという事も。患者さんがしっかりと意識のある方で報告してくれる場合もありますが、意識の無い方や認知症がある方等は、次の15分後の観察でようやく気づくという事もあります。
また、施行時からプラグが外れていた場合もあれば、何らかの拍子に施行後に外れる事だってあります。
例えば、輸血ルートを身体の下敷きにして患者さんが移動時に力が加わって外れたり、こちらがトランスをしている際にルートが引っ張られて外れたりと様々です。ルートが短すぎると突っ張る可能性があるし、長すぎても下敷きにする可能性が出てくるので、患者さんの行動やADLに合わせたルート調整が必要となるわけです。
前投薬の未投与、施行量間違え、薬剤間違え
輸血で副作用が出る場合は、輸血前に予め副作用予防の前投薬が注射されますよね。特に血小板輸血では副作用が出やすいので、アレルギーで使用される薬剤を投与する事が多いです。
そんな時に起こりやすい事故が、一つ目に前投薬の未投与。前投薬がある事自体を把握していなかったり、前投薬を準備した人と輸血を実施する人が違うために、既に投与されていると思い込み未投与が後で発覚したり。輸血実施前には必ず前投薬の有無を確認し、また投与済みであるかどうかも報告しておかなければいけませんね。
二つ目に、前投薬の施行量間違えです。薬剤をアンプル丸々1A使用する場合もあれば、半分の場合もあります。溶解液が1本あるいは1/2本の場合も。たいてい薬剤準備時にはダブルチェックする事が多いと思いますが、緊急時などにスルーされてしまうと元も子もありません。徹底的に指差し・声出ししながら予防していきたいですね。肝機能・腎機能が悪く、ほんの少しでも輸液を減らしたい場合もありますから気をつけたいです。
そして、三つ目は、前投薬の薬剤間違えです。ある程度病院・病棟によって前投薬で使用する薬剤は3〜4種類に決まっているかもしれませんが、毎回どの薬剤を使用しているか確認する必要があります。前回使用した前投薬で蕁麻疹が出たため次回から薬剤を変更している、という事もありますので。注射ラベルと照合、あるいはカルテと照合しながら確実に準備しなければなりませんね。溶解液が生理食塩水だと思っていたら、腎機能悪化のため5%ブドウ糖液に変更されていた、なんて事もありますよ。
ルートのゲージが細い
赤血球輸血はドロドロとしていて明らかな血液ですね。そんな時に細い針で落とそうものなら、途中で止まってしまいルートが閉塞してしまいます。しかも、救急などで出血している患者さんにゆっくり輸血を落としている暇はありません!20G以上の太い針で急いで落とさなければならないので、針の選択も大切です。
ルート閉塞してしまい、再度患者さんに針を刺す苦痛を与える事の無いように、気をつけたいです。
このように輸血に関するインシデントは様々あります。引き続き〜Part2〜にて輸血で起こりやすいインシデントについてお伝えしたいと思います。
この記事を書いた人
- 看護師9年目。血液内科病棟で勤務し、小児から成人・老年期の看護に携わる。結婚半年後に夫の転勤に伴い退職。現在は一児の母で子育て奮闘中。
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