検査技師に教わった採血方法と検査値の奥深い知識
病院に就職すると、職員の健診の時は職員同士で採血をします。
外来勤務の時は、検査技師に採血してとお願いされました。
ベテラン検査技師の採血をさせて頂くと「ちょっと待って!」と採血方法の間違いを指摘されました。
恥ずかしながら看護師数年目にして始めて知ったことがいくつもありました。
その理由も合わせて教えて頂き、採血の奥深さを知るのでした。
スピッツに血液を入れる順番
採血の正しい値を測定するには、スピッツに血液を入れる順番が重要になります。
採血量が少なくても確実に値が測れるもの、重要性から考えて血算が1番先だと新人の時に先輩ナースから教えられたことを鵜呑みにして、それ以降根拠を考えてもみませんでした。
検査技師から、真空管採血とシリンジ採血によっても順番が違うことを指摘されました。
理由を教えて頂き覚えると間違えません。
シリンジ採血の場合
1. 凝固
2. 血算
3. 血糖
4. 生化学。
順番の理由は、シリンジに血液を入れている時間が長ければ長いほど血液がどんどん固まってしまい正しい凝固時間を測定できなくなってしまうからです。
真空管採血の場合
1. 生化学
2. 凝固
3. 血算
4. 血糖
真空管採血で最初に凝固を入れてはいけません。
なぜならば、最初の血液には、穿刺した時の組織や細胞からの組織液など血液以外の物質が混入し、それらが血液の凝固を促進するので正しい凝固時間の値が測定できません。
凝固の1本目と2本目ではAPTT値に約20%の差が出る場合があるそうです。
よって、凝固検査のみ採血をする場合は、2本採血し2本目で検査をします。
駆血帯を絞めている時間の影響
駆血帯を長い時間締めていると、組織液の混入や細胞成分によっては血管に留まることから、凝固系の活性化がおこり凝固しやすくなります。
ヘモグロビン、白血球などの測定値にも影響を及ぼします
細胞内からKなどが血液中に流出する恐れもあります。
採血時のグーパーはなぜいけないの?
採血時にグーパーを繰り返してもらい血液の流れを促進させることをクレンチングと言います。
これをすると筋肉からクレアチニンやKが放出されて正しい検査データが得られなくなります。
溶血させないために
せっかく採ったのに溶血していたからやり直しと言われた時はガッカリしますよね。
患者さんにも苦痛を与えてしまいます。
溶血とは、細胞の体積が増えすぎると赤血球の膜が破れて中のヘモグロビンが流出することを言います。
溶血すると、赤血球の中と血漿中の成分比によって採血データが次のような影響を受けますので注意しましょう。
- 値が上昇するもの
- 値が低下するもの
K、LD、AST、ALT、ACP、Fe
Na、Cl、Ca、LAP、ALP
溶血させないための注意点
- 皮膚消毒後にはよく乾かす
- シリンジ採血する時は内筒を無理にせずゆっくりと引く
- 泡立てないようにゆっくりスピッツに注入する
- シリンジの残っている血液の泡を入れない
- 23Gより太い針を使用する
- スピッツの中の薬剤と混和する時は緩やかに逆さまにするか転がして5回転倒混和する(激しく振って混和すると溶血します)
- 採血方法による採血順番を守る
採血量を厳密にしなければいけないのはどの検査?
スピッツに液体の抗凝固剤が入っている凝固系は、ちょっと少なかったりしただけで検査から摂りなおしの電話がきます。
他の血算や生化学のスピッツは少しぐらい血液量が足りなくても検査できます。
なのに凝固は、線の下ギリギリのところまで行っているのにそれでも検査できないの?と思います。
も~う!と思い白い線を少し超えて血液を入れてしまうと、またもや摂りなおしになります。
それにも理由があります。
抗凝固剤と血液の混和する比率は1:9です。
凝固剤(クエン酸Na)が0.2mlが添加されていますのでこれに血液を1.8mlを採血し混和します。
混和比が変わると正確な検査結果がでません。
血液量が少ないと血沈は亢進しPT/APTTは延長、フィビィリノーゲンは低値になります。採血量が多すぎるとその逆になるそうです。
さいごに
採血方法で値が変わって、間違った治療をされては大変です。
わからないことは、検査技師さんに聞いて確実に採血をしましょう。
この記事を書いた人
- 十数年、一般病院で勤務。その後、老年看護、認知症看護、ターミナルケアに興味があり老人施設に就職しました。現在、認知症ケアに特化し、看取りを積極的に行っている老人施設で働いています。
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