ナースはつらいよ

失神はすぐに病院受診?様子観察?

特養に勤めてから数え切れないほどの意識消失に出会いました。

多くは、あまりバイタルに著変がなく安静にして5分以内に自然に意識が戻ります。後遺症はありません。この場合失神と呼ぶそうです。

医師からは、高齢だから仕方がないでしょとの返答が多く、そのメカニズムをあまり詳しく知らずにいました。実際を実際に起こった時の体験をもとに意識消失についてまとめてみました。

失神の医学的な定義

失神とは気を失うことだと漠然と思っている人が多いのではないでしょうか。医学的な定義がありますので復習してみましょう。

失神とは、「一過性の意識消失発作の結果、姿勢が保持できなくなりかつ自然に、また完全に意識の回復が5分以内に見られることと」されています。

失神の原因

脳に流れ込む血液の量が減ってしまうことにより起こります。

また、血管が異常に広がった場合にも失神になります。広がった血管に血液がたくさん流れ込むことにより血圧が下がってしまいます。

これは、迷走神経が異常に興奮している場合に起こりやすい症状です。

また、心臓のポンプ機能が低下することで脳血流が下がってしまうものもあります。

では、もう少し詳しく原因から失神の種類について見ていきましょう。

失神の種類

起立性低血圧

立ち上がったことでお腹のあたりの血液が一気に足の方に行くことにより血圧が過度に低下してしまうことでおきます。

よく湯船につかって立ち上がった時や、トイレに長時間座って立ち上がって起きる方がいます。

降圧剤の内服やアルコールを摂取することなどで血圧が下がりやすい状態にあるひとがなりやすいと言われています。

降圧剤の内服や時間を把握しておきましょう。

2神経調節性(反射性)失神

自律神経反射が密接に関係している血管迷走神経性失神、頸動脈洞症候群、状況失神の3つの失神を総称して神経調節性(反射性)失神と呼びます。
失神の原因のなかで一番多いそうです。

●血管迷走神経失神

様々な要因で交感神経と迷走神経のバランスが異常をきたすことで起こります。

失神する前に動悸がしたり、吐き気をもよおしたり、目の前が暗くなるのが特徴です。

長時間の起立や痛み、ストレス、さらには排便や排尿などが誘因となります。

採血時に具合が悪くなる人もこれにあたります。

よく血を摂られて貧血になったからだと訴える人がいますが正確には、血管迷走神経失神によるものです。

原因を知ると、なるべくリラックスできるような声掛けや雰囲気作りが大切なことが分かります。

●頸動脈洞症候群

中高年の方に多いのが特徴です。

首にある血管である頸動脈の一部が敏感になってしまったところに、ネクタイを絞めたり、首を回したりすることなどが誘因で起こります。

高齢者で、一緒にラジオ体操をして首回しをする体操で倒れる人がいた時は、これだ!と思いました。

高齢者の首の運動は、無理をしてはいけませんね。

●状況性失神

日常的な動作が誘因となって起きる失神のことです。

迷走神経の活動が活発になり過ぎてしまったり、交感神経の活動が低下してしまうなどにより血圧が下がり失神を起こします。

排尿、排便、咳、嘔吐などちょっとしたことで起きるのを皆さん経験したこと在りませんか? 私たちが排便ショックなんて言っているのもこれに入るでしょう。

ナースコールを押せない、訴えることのできない高齢者のトイレでの排泄は、目を離さないようにしましょう。

いずれの神経調節性失神も命に関わることはありません。しかし、倒れた時に頭を強く打って2次障害を起こすことがあります。

特に抗凝固薬を内服している人は注意が必要です。

心原性(心血管性)失神

心臓疾患が起こる場合に起こる失神です。

具体的には、不整脈、狭心症、心筋梗塞、大動脈解離などが原因になります。

私は、ブロック系の不整脈で徐脈が見られる方の失神によくあたりました。

循環器に受診するとペースメーカー造設が必要だと言われました。

しかし、ご家族はペースメーカー造設をご希望せず、他に手立てがなくそのまま経過観察することになりました。

そして時が経ち、夜間の巡視時に心肺停止になっているところを発見しました。

ご家族とは、事前にそのようなことが起こる可能性が高いことを話し、その時は寿命ととらえ救急車を呼ばないでいいと取り決めをしてあったので、そのまま施設で死亡確認をしました。

失神に遭遇したら

まずは、慌てずに大声で応援者を呼びましょう。

そして、一刻も早く脳に血流が行くように仰向けにすることが必要です。

トイレや座位時などに失神が起こると、ベッドに運ぼうと車いすを持ってくる人がいますが、これは危険です。

一刻も早く脳に血流が行くように仰向けにすることが必要です。

それから、バイタルサインを測定し状態の観察をしましょう。

施設ではストレッチャーや担架がないのでバスタオルを下に敷いて何人かで平行に持ち上げて静かに居室ベッドに移動します。

こんな場合は病院受診をしよう

5分経っても回復しない場合や徐脈や血圧低下、心停止がみられた場合は、速やかに病院に受診しましょう。

また、時間を空けずに何回も繰り返す場合は、別の病気が隠れている場合がありますので受診が必要です。

時に、非常に短時間の意識消失が突然起こるてんかんである欠神発作を指摘されたことがあります。

てんかんは、頻回に起こるときは内服があるそうです。しかし、内服をすると意識低下が副作用として多く見られるので高齢者にはあまり積極的に処方しないと神経内科の医師が話していました。

失神に対しては現在有効な薬はないそうです。

失神を起こしやすい季節

夏になると血管が拡張ししやすくこれにより薬が効きすぎてしまうため失神をおこしやすくなると言われています。

特に降圧剤の内服をしている高齢者には注意が必要です。

失神を起こしやすい疾患

  • 心臓や血管の病気を持つ人
  • 下肢静脈血栓症がある人
  • 三大生活習慣病・肥満の方(高血圧、糖尿病など
  • 神経系の病気がある人(神経難病、糖尿病性神経障害など)

さいごに

意識消失に遭遇すると驚きますが、知識を身につけて適切な対応をしましょう。

正常な呼吸をしていて麻痺がなくバイタルに著変がなければさほど慌てる必要はありません。

特に、施設の場合、意識消失だからとむやみに騒ぐと、ほかの入居者たちも驚いて不穏などによる二次被害を招きかねません。

深呼吸をしてまずは落ちつきましょう。

この記事を書いた人

こごみ
十数年、一般病院で勤務。その後、老年看護、認知症看護、ターミナルケアに興味があり老人施設に就職しました。現在、認知症ケアに特化し、看取りを積極的に行っている老人施設で働いています。
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お年寄り大好きナース
こごみ
健康が一番!

十数年、一般病院で勤務。その後、老年看護、認知症看護、ターミナルケアに興味があり老人施設に就職しました。現在、認知症ケアに特化し、看取りを積極的に行っている老人施設で働いています。

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