NICUで働くナースたち
みなさん、こんにちは。
今回はNICU(新生児特定集中治療室)で働くナースたちの仕事について書きたいと思います。
NICUとは
NICUは、日本語では「新生児特定集中治療室」といいます。
ここでの入院管理が必要になるのは、出産時にトラブルがあったケースや、未成熟児、あるいは生まれつき重い疾患を抱えている症例などです。
すなわち、一般の新生児室ではケアが困難な新生児が対象になります。
全身状態が不安定で、たくさんの医療機器・計器につながれ、保育器に入ったままの新生児に対応しなければならないのです。
また新生児は成人と異なり、自分で苦痛を訴えることができませんので、状態やその変化に常に気を配りながらケアを行うことが第一に必要な業務です。
さらに、不安に感じている両親や親族へのケアなどを含めて複数の業務を同時並行で行わなければなりません。
やりがいは大きいですが、身心ともにたいへん負担の大きいハードな仕事といえます。
NICUで働く看護師に必要なスキルとは
NICU看護師が行う看護ケアには、具体的にはどのようなものがあるのでしょうか。
大まかに分けると以下の3つになります。
1.新生児に対するケア
バイタルチェックや呼吸器・チューブ類の管理、輸液ポンプや心電図モニターなどの確認など、通常の成人のICUと同じ内容のケアもあります。
しかし新生児に対する看護にあたっては、成人患者ではあまり経験できない独特なものも含まれます。
例えば、皮膚の色や泣いている状態などのわずかな変化をチェックすること、2~3時間ごとの授乳、おむつ交換、沐浴などが挙げられます。
こうした看護を通じ、鋭い観察力や、素早く状況を判断して対応する看護スキルを磨くこともできるのが、NICU勤務のメリットのひとつです。
2.家族へのケア
最初にも書きましたが、何らかの重い病状を抱えた新生児が対象の病棟ですので、その親御さんなどご家族の精神的な不安は相当なものになります。
こうした不安を抱えた家族への精神的サポートはNICUスタッフの重要な任務の一つです。
また患児の状態が落ち着けば、ご家族に抱っこやおむつ交換、授乳・沐浴の指導を行うこともあります。
一方で治療の甲斐なく、亡くなってしまう赤ちゃんがいることも事実です。
こうした死別により悲嘆に暮れるご家族に対する精神的ケア、いわゆるグリーフケアもスタッフの大切な業務となります。
そして、スタッフにはこうしたつらい場面に落ち着いて対応するだけのメンタルの強さも求められます。
3.自宅退院に向けた在宅移行ケア
患児の中には、人工呼吸器や経管栄養などの生命維持管理を長期間必要とする子もいます。
ご家族が「自宅で一緒に過ごしたい」という強い希望がある場合、その状態のまま在宅医療(自宅退院)に移行するケースもあります。
そのような場合、退院支援や人工呼吸器・経管栄養の管理方法の指導、家族への精神的サポートなど、「在宅移行に関するケア」を行うことも、NICUスタッフの大切な役割の一つです。
NICUにおけるカンガルーケアについて
お話しは変わりますが、みなさんは「カンガルーケア」という言葉をご存知でしょうか。
これは生まれたばかりの赤ちゃんを直接肌と肌を合わせて縦抱きにして、上から掛け物をかけるという育児方法です。
もともとは南米のある病院で保育器が不足してそれを補うために導入された保育法ですが、親子のきずなを形成するのに非常に有意義であるという科学的裏付けが後になされたこともあって、急速に普及してきました。
しかし、生まれたばかりの赤ちゃんは肺呼吸をし始めたばかりで、呼吸が不安定な時期です。
母体があおむけの状態でカンガルーケアを行うと、赤ちゃんがうつぶせの状態になってしまい、これが赤ちゃんの呼吸に悪い影響を与えて急変につながるのではないか、という仮説もあるようです。
頻度的には大変まれですが、カンガルーケア中に急変して、一般の産院からNICUに救急搬送される例もあります。
ある国内の調査によると、カンガルーケア中に急変した赤ちゃんは14人いて、このうち2例は亡くなり、7例は植物状態となったそうです。
このことからNICUでのカンガルーケアでは、医療者が赤ちゃんの呼吸をモニタ機器や目視で見守り、赤ちゃんがうつぶせの体勢にならないように細心の注意を払います。
またそれ以前に、カンガルーケアが可能な状態かどうか、慎重に赤ちゃんの状態を検討することが重要です。
「カンガルーケア」=「危険なもの」というのではなく、十分に赤ちゃんの状態に注意を払いながら実施すべきという考え方が大切です。
まとめ
NICUのスタッフとして働くことは心身ともに負担が大きいことは確かですが、赤ちゃんの命を救い、保護者の信頼を得たときのやりがいや喜びも非常に大きいです。
興味のある方はぜひ挑戦されてみてはいかがでしょうか。
この記事を書いた人
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産婦人科病棟/内科整形外科の急性期病棟勤務
現在は2児のママで育休中。
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