悪徳歯科訪問診療?
2015年に介護保険報酬が改定され、介護老人施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設が「口腔衛生管理体制加算」と「口腔衛生管理加算」が算定できるようになりました。
そこで、私が勤務している特養も加算が取れるように、また、口腔ケアと生活が密着に結びついていることを実感して積極的に歯科と協力して口腔の衛生と健康について取り組むようになりました。
「口腔衛生管理体制加算」・「口腔衛生管理加算」とは?
「口腔衛生管理体制加算」
歯科医または歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が介護職員に対する口腔ケアに係る技術的助言および指導を月一回以上行っている場合、利用者ごとに1月30単位を算定します。
実際には、口腔ケア技術の説明だけでなくその人に合った口腔ケアに関する物品の助言もしてくれます。
この制度を利用してから介護職が口腔ケアに対してのモチベーションが上がったように感じます。
「口腔衛生管理加算」
歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が、入所者に対し、口腔ケアを月に4回以上行った場合に、当該利用者ごとに1月につき110単位を加算するものです。
認知症の方で口腔ケアの拒否が強く難しい時は、毎日ではなくても歯科衛生士さんに丁寧に口腔ケアを行って頂けると、口腔の状態がまるで違います。
私の施設は入所者100名なのでかなりの加算が取れるというわけなのです。
歯科医院の熱心すぎる営業
日本の歯科医院はコンビニよりも多くワーキングプア化するケースもあるそうです。
特に私が住んでいる東京では10万人あたり約120人と歯科医の数が半端なく増えているのです。
年収300万台という医師もざらにいるようです。
そのためなのか数々の歯科医院から営業が来ます。
どこの歯科医院も、口腔ケアについての講義を無料でしてくれます。
そこで、私も施設で介護職員向けの口腔ケアの講義を依頼しました。
歯科医師や歯科衛生士さんが基礎からわかりやすく勉強会をして下さいます。
勉強会が終わった数日後から、歯科医院から営業の電話が怒涛のごとくかかってくるようになりました。
勉強会を受けてから、「職員の口腔ケアに変わりが見られましたか?」「何か困っていることはありませんか?」「区の無料歯科検診を使って診察いかがですか」などという内容です。
中には、「職員の歯科検診を割引します。」というところもあり、どこも大変で必死なんだというのがわかりますが、仕事中忙しい時に何回も電話がかかってくるとちょっと引いてしまいます。
歯科訪問診療の実際
歯だけでなく、内視鏡で嚥下状態を観察し、食事形態、食事介助の仕方や口腔マッサージの指導までしてくれる手厚い歯科医院もあり感心しました。
その一方で、お金儲けが目的ではないかと思う歯科医院もあります。
安易に歯を抜き入れ歯を作る歯科医
歯槽膿漏で診察してもらうと、「歯を全部抜きましょう」と言われ、90歳の入所者は泣きご家族が激怒したことがありました。
歯槽膿漏があるもののすべてが自歯できれいに揃っている人に、いきなりそんなこと言うなんて非情です。
違う歯医者に依頼すると、歯を抜かずに済みました。
歯を抜いていき、自歯が少なくなると入れ歯にせざる得なくなり、結構な稼ぎになるそうです。
安易に歯を抜きましょうという歯科には気をつけましょう。
入れ歯を作ってくれても、認知症のためか入れ歯を受け入れられない方も案外いるものです。
入れ歯の不快感に耐えられず、自分で入れ歯を取り外し床に投げつけて、新しい入れ歯ができたその日のうちに入れ歯が真っ二つに割れてしまったことがあります。
いつも、食事中に取り外し、食事と一緒にお皿にのせて、しまいにはおかずと一緒に食べようとしている入所者やトイレに流してしまう方もいました。
入れ歯がなくとも歯茎で上手におせんべいも上手に食べる人もいます。
このような方々ををみると高額な費用をかけて入れ歯を作る必要があったのかと考えてしまいます。
高級口腔マッサージ?
歯科衛生士さんによる訪問口腔マッサージ、30分7000円という歯科医院もありました。
口腔マッサージにより認知機や嚥下機能に使う筋肉にも働きかけて嚥下機能が改善する可能性があると歯科医に言われれば、多くの食欲不振に陥った入所者のご家族は藁にすがる思いで依頼します。
どんなにお金が掛かろうがおかまいなしです。多い方では週に2回訪問口腔マッサージを受けていました。
口腔マッサージと言っても教えてもらえば誰でもできる内容です。そうは言っても現場ではゆっくり時間をかけて口腔マッサージをする時間がないので高額な気がするけど仕方ないかと思っていました。
訪問口腔マッサージの後は、疲れたのか食事を食べないということが目立ってきました。口さえ開けてくれなかったり食物を飲み込まず口に含んだままでした。
バイタルに著変はみられないものの、少しずつ痩せて傾眠がちになってきて、これは先が長くないのではないかと思い、歯科医に相談するも家族が望んでいるのでと請け合ってもらえませんでした。
家族にも現状をお伝えしても、歯科医に勧められているのでの一点張りです。
嚥下機能が低下して食欲低下したことも一理ありますが、加齢によるものの方が大きいのではないかと思うのです。そこまでお金をかけて口腔マッサージをする意味があるのでしょうか。
内科医にも相談しましたが、特に採血結果に特変がなく本人や家族が積極的な治療を希望せず施設で自然な看取りを希望されていて、歯科医のすすめでありご家族の希望で受けているのだからしょうがないと言われました。
看護師も介護職もみな悶々としながら見守るしかありませんでした。
訪問の口腔マッサージを始めて2か月近く経ったある日、数時間前までは普段とさほど変わりなかったのですが、訪室した際にはすでに心肺停止していました。家族は驚き救急車で病院搬送され救命処置をうけましたが、帰らぬ人となってしまいました。
その日は、また口腔マッサージに若い見た目がキャバ嬢風メイクの歯科衛生士が来て、入所者がお亡くなりになったことを伝えると「えーそうなんですか」と言うのがわざとらしく感じ腹が立ってしまいました。
さいごに
口腔だけでなく、認知面、感情面、身体面など、全体を見て判断し治療をてくれる歯科医がいたならばなと切実に思う今日この頃です。
そうでなくてもせめて内科医と連携を取ってくれたらとも思うのです。
総合的に診てもらえるように、看護師が関連する情報を伝え医師・衛生士・ご家族などと連携していくことが重要だと様々な事例より看護師の役割を改めて認識しました。
この記事を書いた人
- 十数年、一般病院で勤務。その後、老年看護、認知症看護、ターミナルケアに興味があり老人施設に就職しました。現在、認知症ケアに特化し、看取りを積極的に行っている老人施設で働いています。
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