虐待から子供を救え！file.2 小児科ナース奮闘記

前回の記事を読んでいただき、ありがとうございます。

今回は前回の記事に引き続き、私が経験した虐待対応について記録していきます。

ある日、３歳の喘息発作の男の子が、病院に来ました。
ママと手をつないで来たその男の子は、一見、普通の家庭でした。

様々な入院手続きが行われていきます。小児科では入院時に細かく全身所見をするのですが、脇の下にアザがあったのが特徴的でした。

入院してから、ママは毎日面会に来ましたが様子が少しおかしいようでした。

私の勤務していた病院は、付き添い禁止の看護体制で面会時間は11時から20時までとなっていました。

しかし、ママが思い立った時間に泣きながら来るのです。それもパジャマ姿のままです。

｢この子がいなくなるのが怖いんです･･･本当に大好きなんです･･･。｣

と何度も何度も、看護師に訴えてくるのが印象的でした。

ある日、面会時間が終わるギリギリの時間帯に、ママとパパがふたりでやってきました。

パパが面会に来るのは、患児が入院してから初めてのことでした。遠くから、両親揃って歩いてくるのですが、またまたなんだか様子がおかしいのです。

ふたり揃ってなんだかフラフラ足元がおぼつきません。最初は“調子が悪いのかな”と思っていましたが、その後、原因がわかりました。

パパが、缶 ビ ー ル 片 手 に面会に来ているのでした。

そして、入院してる児に向かって｢おーい、早く帰るぞ！いつまで寝てるんだ！？｣というように怒鳴っています。

一瞬、何が何だかわかりませんでしたが、ハッと冷静になり病棟で唯一の男性職員を呼びに行きました。

その後、男性職員、師長立ち会いの元で、缶ビールの件を指摘すると両親揃ってナースステーションで大声で暴言をはいています。

すぐに警備が来て、その場は収まりましたが、パパは面会禁止となりました。

そして、この“常識では考えられない行為”がきっかけとなり地域連携室の介入が決定しました。

その一件のあとから、ママの様子が更におかしくなりました。

日に日に、傷を増やして面会に来るのです。そして聞いても何も答えませんでした。

それから、３日くらい経った頃でしょうか。

洗濯物で返却した衣服が洗濯されずに持参してくるようになりました。食事が進まない本人を大声で罵倒するようになりました。

そしてついにママが告白しました。

｢言いたいことはわかっています。パパがやりました。私のケガもです。｣

その事実を知ってしまった以上、面会に来たママを家に帰すわけには行けなくなりました。

女性専用病棟に泊まってもらい、詳しく話を聞いていみると･･･

｢あの子がいないと、パパは私を叩く。あの子がいれば、あの子を叩く。わたしも虐待をするように強要された。｣

とのことでした。

それから、厳重に経過を観察していましたが2週間ほど経って、退院の目安が経ちました。

地域連携室との度重なる会議の結果、“児童一時保護”が決まり、“母子引き離し”となりました。

余談

児童福祉法第三十三条より抜粋
「児童相談所長は、必要があると認めるときは、第二十六条第一項の措置をとるに至るまで、児童に一時保護を加え、又は適当な者に委託して、一時保護を加えさせることができる。」

つまり、児童相談所の施設長が“保護が必要”と言えば親の意見は聞かずに保護することができるのです。

当日

そして、決行当日の計画が発表されました。

この過程を同時進行で行うというものでした。

この時懸念されるべき点は

• 両親揃っての呼び出しにどちらか片方しか行かず、片方が病棟に面会に来る可能性
• そもそも呼び出しに応じない場合
• 母子分離後の病棟の安全性(スタッフや、他時に危害が加わるおそれ)

職員の動き方や、配置、電話対応方法、緊急放送の方法など、病棟全員で会議を行い、当日を迎えました。

またまた執筆していたらどんどん長くなってしまいました。file.2はここまでとします。

結構当日～その後のケアについては、file.3で書いていこうと思います。