退院支援に役立つ老人施設に関する知識と実情
病院から施設に退院する場合、胃ろう造設や吸引など医療ケアが必要になると戻れない場合があります。
病院の医師や看護師が施設の特徴を知らないためにご家族や施設とトラブルになったケースがいくつもあります。
入院日数の短縮化がすすめられている時代ですので、退院支援は入院時から視野に入れないといけません。
そんな時それぞれの施設の特徴をある程度知っておくと便利です。
医療処置が必要になっても受け入れが可能かどうかを中心にそれぞれの施設の種類と特徴をまとめてみました。
また、病院でしか働いたことしかなく実情を知らないときは、「看護師がいるんだから受け入れてよ」と思うことがありましたが、実際に老人ホームで働いてから厳しい老人ホームの事情があることがわかりましたので一緒にお伝えします。
特別養護老人ホーム(特養)とは
特徴
特徴生活全般の介助が提供される介護老人福祉施設。
安価に入居できますが重度の要介護認定者を優先するため多くの施設は、100~200人の待機者がいる状態です。
数年の待機が必要となる場合があります。
介護保険法の定義では「要介護者に対して施設介護サービス計画に基づいた入浴・排泄・食事などの日常生活上の介護、機能訓練、健康管理、養生を行う施設」となっており、医療ケアよりも介護ケアに重点が置かれています。
●入居対象者の介護度
要介護3以上
●医療体制
入所者100人あたり医師1人(非常勤可) 看護師3人
看護師が夜勤している所は少なく、ほとんどはオンコール体制になっています。
配置されている医師のほとんどは非常勤で、たいていは週に1回施設に往診し、最低1回/月の入居者の診察が原則となっています。
常時の点滴や経管栄養、吸引など医療ケアが必要な場合は断られることもあります。
しかし、最終判断は施設と家族の協議によって決められます。各施設の方針がありますので確認が必要です。
医療スタッフの数が少ないため、医療依存度の高い方の受け入れには一定のキャパシティが各施設に存在します。
よく病院から「この間は胃瘻造設したAさんを受けいれたのに、なんでBさんはダメなんですか!」と言われますが、お断りするのは上記のような事情があるからです。
特養での医療ケアに対するニーズが高まってきていることを受け、2011年に社会福祉及び介護福祉法改正によりある一定の条件下で喀痰吸引、経管栄養の医行為を業として行えるようになりました。
しかし、研修や施設の体制づくりが必要であり、なかなか進んでいないのが現状です。
介護老人保健施設(老健)とは
特徴
療養上のケアを受け、リハビリなどの機能訓練を通して家庭での生活に戻れるように自立復帰を目指した施設です。
そのため終身での利用はできません。入所期間は、基本的に3か月になるため退所後のことを考えておかなければいけません。
しかし、施設待ちで3か月ごとに違う老健に入所している人もいます。
●入居対象者の介護度
要介護1以上
●医療体制
入居者100人あたり医師常勤1人 看護師9人 リハビリ専門スタッフ1人
8割以上の老健が看護師を24時間配置しています。
2006年からは認知症リハビリも行われるようになっています。
グループホームとは
特徴
認知症の症状を持ち、病気や障害で生活に困難を抱えた高齢者が、専門スタッフの援助を受けながら1ユニット(5~9人)で共同生活をする介護福祉施設です。
認知症高齢者のための住まいとして「認知症対応型老人協働生活援助事業」と呼ばれています。
よって、極端な暴力行為や自傷行為があるなど共同生活が難しい方は原則お断りされます。また、身体状況が悪化し共同生活ができなくなったり、入院期間が長くなった場合は退去しなければいけないところが多いでしょう。
認知症ケアに特化し寝たきりの方のケアができない施設もあります。
また、地域密着型サービスの一つですので、施設と同一地域内に住民票がある人が対象です。
●入居対象者の介護度
要支援2以上
●医療体制
原則的に医療面でのケアは行っていません。
医師・看護師の配置は義務付けられていません。まれに看護師がいることがあります。
ケアハウス(軽費老人ホーム)とは
特徴
最寄りいない、または家庭環境や経済状況などの理由により、家族との同居が困難な方を「自治体の助成を受ける」という形で比較的定額な料金で入居できる福祉施設です。
軽費老人ホームは、A型・B型・ケアハウス(C型)の3種類があります。
3種類とも家庭での日常生活に近い環境となっており、最低限の生活支援サービスを受けながら自立した生活をおくることができます。
A型は食事サービスがありB型は食事サービスがないため自炊が必要です。
C型は略して「ケアハウスと」呼ばれ、食事サービスがあり重度の要介護状態になっても住み続けられるという大きなメリットがあります。
●入居対象者の介護度
自立・要支援以上
●医療体制
医師・看護師の配置は義務つけられていませんが看護師を1人以上配置しているケアハウスが大半です。
しかし、外からの往診医や訪問看護を受けることができます。
介護度が重くなったり医療粗利が必要になると退去の必要があるので確認が必要です。
有料老人ホームとは
特徴
終身介護に対応する施設から健康な方を対象としたものまで施設によって様々です。有料老人ホームには、介護付き・住宅型・健康型の3種類があります。
●医療体制
多種多様です。介護付き有料老人ホームでは、24時間看護師在住でクリニック併設し医療的ケアを必要とする方を積極敵に受け入れている施設もあります。
空きがあれば、すぐに入所することができますが、入所金や毎月の支払いが高額のため難しい場合があります。
看取りに関して
看取りの方を施設で受け入れるかどうかは、施設の種類に関わらず方針によってかなり違いますので必ず確認しましょう。
施設職員の思い
病院と違い数年も一緒に過ごすと、医療的ケアが必要になったことが理由で退所を本人やご家族に勧めなければいけないのは心苦しいものです。
ですので、本人・ご家族のご希望や安全面などを考慮して、受けいれる方法を施設全体で十分検討したうえで決めています。
時には、病院の医師や看護師から、なぜ受け入れ不可なのか強く責められることがありますが、病院ではわからない施設の事情があることをご理解いただきたいと思います。
そして、私も病院しか働いたことしかなく施設の事情を知らなかった時は、そのようなことがあったので反省しています。
病院も看護師の人手不足で大変ですが、高齢者の福祉・介護業界の方が、外国人労働者や無資格の人材を受け採用しなければいけないほ深刻な人手不足に悩まされています。
病院・施設とも双方の事情がありますので、お互い情報交換をし連携することが必要だと日々感じています。
この記事を書いた人
- 十数年、一般病院で勤務。その後、老年看護、認知症看護、ターミナルケアに興味があり老人施設に就職しました。現在、認知症ケアに特化し、看取りを積極的に行っている老人施設で働いています。
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十数年、一般病院で勤務。その後、老年看護、認知症看護、ターミナルケアに興味があり老人施設に就職しました。現在、認知症ケアに特化し、看取りを積極的に行っている老人施設で働いています。
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