葬儀屋さんが教えてくれた「エンゼルケアの今」
昔は体の穴という穴に詰め物をすることが常識だった「エンゼルケア」ですが、葬儀屋さんから最近は「詰め物をしない」とお聞きしました。
詰め物の他にもエンゼルケアはいろいろと昔とは変わっていました。
以前の方法しか知らない私は不安になり葬儀屋さんにエンゼルケアの今を教えて頂きました。
詰め物をしない
なぜ詰め物をしてきたか
死後1時間ぐらいから腸内細菌の増殖と胃腸の融解により腐敗が進行します。
体内で発生した腐敗ガスの充満により内容物が圧出されたり、身体が膨張し遺体の表皮が脆くなることによって表皮が剥離しやすくなり鼻腔や口腔から出血することがあります。
よって遺体に対する詰め物は、漏出や臭気の発生防止目的です。
詰め物をしなくなった経緯
漏出や臭気の発生防止目的から考えて必要性が乏しいとされています。漏出が多い場合は漏出を完全に止められません。
外観上あまり良くなかったり、詰め物をするところをご家族が見てあまり気分がよくないということから見直しをされてきました。
詰める利便性や見た目のことを考慮して、脱脂綿ではなくシリンジ式高分子吸収剤を用いるところが増えてきています。
臭気に関しては、詰め物は完全ではありませんが有効だそうです。
●詰め物をしないで漏出を防ぐ方法
遺体からの体液漏出防止には、腐敗を抑える「冷却」が一般的に行われています。
葬儀屋さんに連絡すると、ドライアイスをもってきてくれてお腹の上に置き腐敗を防いでくれます。
また、死期が近づいているときには、それまで投与されてきた点滴や栄養剤を絞ることも効果的です。
手首を組まない
手首を紐やバンドで縛って固定し組ませるようにしていました。
しかし、今は、無理に組むことによって変形や変色する可能性があるので、自然な形で体の横に置いています。
顎を固定しない
死亡後、開口した口が閉まるように紐やバンドで固定していました。
しかし、紐やバンドで変色しやすいためしません。
枕を高くして顎の下と胸の間に丸めたバスタオルを置くと閉まりやすくなります。
これでも口が閉まらない場合は葬儀屋さんに依頼すると上手に閉めてくれますのでお任せしましょう。
消毒液を使って清拭はしない
以前は、感染予防と消臭のためにしていましたが科学的には根拠がありません。
消毒液は、皮膚の乾燥を促してしまいます。
大抵のご遺族は、生前の元気だった頃の姿を望みますので今はしていません。
あの世への旅立ちの服はなんでもOK
浴衣が当たり前になっていましたが、葬儀屋さんに聞くとなんでもいいそうです。
ご家族にあの世へ旅立つために本人に着せたい服を訪ねると、今まで知らなかった患者さんの人生を改めて知ることがあります。
ご家族がスパンコールがついたキラキラのダンス衣装を持って、むかし社交ダンスを習っていてその時に気に入ってヘビーローテーションしていたとお聞きし、その高齢女性のの趣味はじめてを知りました。
エバーミング技術
日本では、あまり浸透していなく聞きなれない言葉ですが、欧米などでは一般的に行われている処置です。
エバーミングとは、エンバーマーと呼ばれる専門技術を持った技術者により脈管への薬液注入など科学的な衛生保存が施され、ご遺体に安全の提供と心情的に受け入れやすい姿に身支度してくれます。
エバーミングを行ったことにより遺体の腐敗が一時的に止まりますので、「葬儀」について充分考える時間ができより良いお別れを可能となるでしょう。
事故死で身体の外観的な損傷が激しく急激な死を遂げた時は、活用すると遺族の方の悲しみが癒えるそうです。
病院や施設ではエバーミングできませんので、そのような時は、エバーミングをご遺族に提案するという形になります。
エバーミングの長所と短所をまとめてみましたのでご参考下さい。
長所
遺族が心情的に受け入れやすい穏やかな表情など遺体の状態が向上する。
遺体からの二次感染の危険性が低減する。
長時間の保存が可能なため時間的な余裕ができ故人と向き合うことができる。
損傷を受けた遺体を元の近い状態に戻すことができる。
短所
エンバーマーしかできない
遺体をエバーミングルームに移動しないと処置を施すことができない。
遺族の経済的な負担が増す。
遺体に対しての薬液注入や外科的な処置を心情的に受けいれることができない。
この記事を書いた人
- 十数年、一般病院で勤務。その後、老年看護、認知症看護、ターミナルケアに興味があり老人施設に就職しました。現在、認知症ケアに特化し、看取りを積極的に行っている老人施設で働いています。
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この記事に対するコメント
こごみ
コメントありがとうございます。
病院から施設に勤めて、私の施設で最期を迎える利用者は、大抵は老衰で人工的な栄養投与をせず自然死のため詰め物をしなくても大丈夫なようです。
専用のファンデーションがあるとは知りませんでした。
施設では、長年利用者様と共に過ごすため、グリーフケアとしてご家族とスタッフが共にエンゼルメイクをします。よって専門の方をお呼びして講習を受けることを予定しています。
うぶ毛剃りも、エンゼルケアでするのではなく、日常のケアとしてしたいと思います。
専門的なアドバイスをありがとうございます。
ボブ猫
死化粧師をしていますが、近年、病院や施設での看取りの後に行われてきた、エンゼルケアですが、詰め物をしない事は実に後々、葬儀社さんが困る事態になるんですよ。
以前は、キチンと胃や腸の内容物を出せるだけ出して、それぞれ、体液や汚物が漏出しない様に行われて来ました。
しかし、そのやり方も病院等で様々でして、鼻に綿栓をするだけとか、意味の無い見た目にも酷いやり方も有ります。
葬儀屋さんでも、エンゼルケアの知識と対応を学んでいる所も有りますが、まだまだ、グレーゾーンですね。
それと、よく有るのが詰め物をしないのに、お化粧だけはするケースが多い事。
ご遺体に生体用の化粧品を使うと、亡くなった直後はまだお顔の色も変化してませんから、一見綺麗に見えますが翌日になると、大抵、御遺体の色になるので、化粧に違和感が出てしまい、ご遺族が不快に思われる事が多いです。
(初毛も剃っていないので、ファンデーションが浮いてます)
そうなると、葬儀屋に直して欲しいと言われます。
しかし、ご遺体のエンゼルメイクには適した物を使用しないと、いくらファンデーションを使っても、生前のお顔にはなりません。
看護師さんや、介護士さんがエンゼルケアをされるなら、むしろお化粧はしない方が無難です。
それよりも、キチンと詰め物はして下さいね。
エンゼルメイクには、キチンとしたやり方と知識が必要なので、もしされるならそういう事を専門に指導している、方の講習を受けると良いかと思います。
私は看護師でも有りますが、今はそういった葬儀社サイドで起きている、ご遺体のトラブルやケア・メイクをする死化粧師として、専門機関で講習を受けて適切な技術の提供を行っています。
ご遺族は、やはり故人様のお顔は生前に近い事を望みます。
こごみ
コメントありがとうございます。
病院から施設に勤めて、私の施設で最期を迎える利用者は、大抵は老衰で人工的な栄養投与をせず自然死のため詰め物をしなくても大丈夫なようです。
専用のファンデーションがあるとは知りませんでした。
施設では、長年利用者様と共に過ごすため、グリーフケアとしてご家族とスタッフが共にエンゼルメイクをします。よって専門の方をお呼びして講習を受けることを予定しています。
うぶ毛剃りも、エンゼルケアでするのではなく、日常のケアとしてしたいと思います。
専門的なアドバイスをありがとうございます。
ボブ猫
死化粧師をしていますが、近年、病院や施設での看取りの後に行われてきた、エンゼルケアですが、詰め物をしない事は実に後々、葬儀社さんが困る事態になるんですよ。
以前は、キチンと胃や腸の内容物を出せるだけ出して、それぞれ、体液や汚物が漏出しない様に行われて来ました。
しかし、そのやり方も病院等で様々でして、鼻に綿栓をするだけとか、意味の無い見た目にも酷いやり方も有ります。
葬儀屋さんでも、エンゼルケアの知識と対応を学んでいる所も有りますが、まだまだ、グレーゾーンですね。
それと、よく有るのが詰め物をしないのに、お化粧だけはするケースが多い事。
ご遺体に生体用の化粧品を使うと、亡くなった直後はまだお顔の色も変化してませんから、一見綺麗に見えますが翌日になると、大抵、御遺体の色になるので、化粧に違和感が出てしまい、ご遺族が不快に思われる事が多いです。
(初毛も剃っていないので、ファンデーションが浮いてます)
そうなると、葬儀屋に直して欲しいと言われます。
しかし、ご遺体のエンゼルメイクには適した物を使用しないと、いくらファンデーションを使っても、生前のお顔にはなりません。
看護師さんや、介護士さんがエンゼルケアをされるなら、むしろお化粧はしない方が無難です。
それよりも、キチンと詰め物はして下さいね。
エンゼルメイクには、キチンとしたやり方と知識が必要なので、もしされるならそういう事を専門に指導している、方の講習を受けると良いかと思います。
私は看護師でも有りますが、今はそういった葬儀社サイドで起きている、ご遺体のトラブルやケア・メイクをする死化粧師として、専門機関で講習を受けて適切な技術の提供を行っています。
ご遺族は、やはり故人様のお顔は生前に近い事を望みます。
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