認知症(物忘れ)外来を受診することを拒む人に受診を促すには
一般の方から「認知症を疑い受診をすすめているのですが拒否をして困っています」という相談をよく受けます。
私が現在勤めている高齢者施設には認知症外来が併設されています。週に一回、外部から認知症専門医がいらして診察をしています。
何回か診察に立ち会わせて頂き、認知症外来に受診することに拒否がある方に受診をしてもらう方法を学びましたのでご紹介します。
なぜ認知症外来を受診したがらないのか
大抵の方は、自分でも最近ちょっとおかしいなと感じていますが、受診を拒むのは下記のような感情が影響しています。
- 「認知症」だと指摘されるのが怖い
- 「認知症」と診断されたら周りから馬鹿にされてのけ者にされるのではないか
- 「認知症」と診断されて特別扱いされるのは嫌だ
- 「認知症」だと施設に入れられるのでは、今までのような生活が送ることができなくなる
- ただの物忘れなのに私のことを馬鹿にして!
- もともと病院嫌いである
どのような理由で認知症外来を勧めればいいのか
さて先ほど述べた受診したがらない理由を十分踏まえたうえで勧めましょう。
- (風邪を引いた時に)年を取ってきたから念のため他も診てもらいましょう
- 健診を受けると市町村から助成金がもらえる
- すでに身体の健診を受けている方には、最近世の中は、4人に1人は認知症に罹っている時代で、早期発見が認知症の進行を遅らせるから年のために脳の健康診断も受けましょう?
- 私が大好きな(大切な)あなたのことが心配なのよ
- いつまでも元気でいて欲しいから
急に切り出すと不自然なので、新聞の記事やテレビ番組で認知症に触れられているのを一緒に目にしたとき、もし「認知症」になったらどうしようかなど普段から小出しに話していくのもいいでしょう。
市町村の地域センターや保健センター、一般の地域の内科クリニックにも認知症予防や治療についてのパンフレットが置かれているのをよく目にするようになりました。
そのようなパンフレットを活用するのもいいでしょう。新聞に広告と一緒にそっとパンフレットを忍ばせて、読んでもらえるようにした方もいらっしゃいました。
しかし、老々夫婦、独居している方、遠方で交流が少ない場合は認知症がかなり進行してからわかり、どんなに理由を分かりやすく説明しても理解が難しくなっているというケースがあります。
さてそんな場合はどうしたらいいのでしょうか。
身内以外の人に勧めてもらう
身内に言われるとプライドが許さないまたは甘えがあり反発するという方がいます。
その方の友人に協力してもらうという方法で解決すると助かりますがそんなケース稀です。
なぜなら、認知症によって友人との交流も疎遠になっていることがほとんどだからです。
そんなときは、市町村の地域高齢者センター、役所の高齢課に相談し協力してもらいましょう。
地域によって違いますが、保健師等が訪問して本人に話して下さる場合もありますし、専門医ではないけれどとりあえず認知症も診ることができる訪問ドクターを紹介してくれることがあります。
かかりつけ医に勧めてもらうという方法で受診したという方もいますので、かかりつけ医に協力してもらうのも一つの方法です。
認知症外来に相談する
どんなに手を尽くしても受診ができないとなったら、認知症外来に電話で相談してみましょう。そんなケースは稀ではないので慣れています。
認知症外来という言葉は伏せて皆で口合わせをしてくれたり、総合病院では他の科から入って裏口から認知症外来へ案内してくれるところがあります。
また、本人がどうしても受診に来れない場合は、ご家族から状態を伺ったり、ビデオや動画を撮影してきて頂きそれをもとに診断して下さることもあります。
受診がスムーズにいくために準備するもの
病院にはたどり着いたが待ち時間の間に嫌になり、受診ができなかったケースがあります。
そこで下記のものを用意して受診に臨むと良いでしょう。
他の科を受診するのと同様に、既往歴、お薬手帳、いつからどのような症状がでたか、最近、転倒し頭をぶつけていないか、生活するうえで困っていることをまとめておきましょう。
実は頭部の疾患や、電解質異常や、神経の疾患など他の疾患で認知症と似た症状が出ていることがあり重要です。
外では取り繕ってしっかりしてとても認知症とは外からわからないと思われる場合は、日ごろの生活をビデオや動画にとって医師に診てもらうのはかなり効果的です。
他、認知症外来では、必ず人生歴(出身地、学歴、職歴、婚姻歴など)や生活習慣/span>を聞かれます。
認知症の周辺症状は今までの生活習慣・人生歴が大きく関わっているものです。そこに焦点をあてて周辺症状を軽減する対策を考えることができるからです。
家で上記を用紙にまとめて外来窓口に提出するといいでしょう。
さいごに
近年では認知症が急増し4人に1人が患う時代となり社会問題にもなっていますが効果的な治療法は未だ確立されていません。
認知症は、早期のうちに診断し進行を遅らせるのが重要です。
早期発見・進行予防のお役にたてたら幸いです。
この記事を書いた人
- 十数年、一般病院で勤務。その後、老年看護、認知症看護、ターミナルケアに興味があり老人施設に就職しました。現在、認知症ケアに特化し、看取りを積極的に行っている老人施設で働いています。
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