蜂窩織炎になった原因を知り予防しよう!
高齢者で蜂窩織炎で入院してくる患者さんを多く見かけます。
高齢者施設に勤めてからは、どうにか蜂窩織炎を防ぐ方法はないものかと模索して数年。
皮膚が乾燥してバリア機能が低下しているだけでなく様々な要因があることに気づきました。
蜂窩織炎とは
症状
小さな傷や毛穴などから菌が入り、真皮組織の深い部分の皮膚から脂肪組織への感染症です。
起因菌は、黄色ブドウ球菌が多く、A群、β溶血性連鎖球菌、なんとインフルエンザ菌によっても起こるそうです。
症状出現の部位は下肢に多く、発熱や熱感が伴い境界不明瞭な腫脹になります。
診断
医師は、炎症所見や採血の結果など総合的に判断し診断をしていきます。
治療
抗生物質の投与によって1週間ほどで解熱し治癒します。
しかし、再発予防や髄膜炎などの合併症予防のために約10日ほどの抗生剤の治療を行うこともあります。
体が不自由なのに足に掻き傷
ある日、手は拘縮していて体も硬く届くはずもないふくらはぎに傷があるのです。
下肢も不自由であまり動かないのになぜと疑問が募りました。
移乗する時に、車いすのフットバーに擦れて傷となったのか?ケアをするときに知らずに何か当たって傷がついたのか?・・・
入居者本人は、認知症があって、何を聞いても「大丈夫!」としか答えないので実際のところわからないのです。
実は入居者本人が掻いていた
夜勤でその入居者さんの見回りに行くと、なんと器用に足をどうにか動かし、ふくらはぎを足で掻いていたのです。
人間は痒みがあると必死になるもので、見たことないぐらい足が動いているのです。
その足を見ると白癬菌で爪が肥厚していて伸びていました。
その爪でふくらはぎの皮膚を傷つけていたものですから、皮膚の培養検査から白癬菌が検出されました。
昨夕は、引っ掻き傷だけだったのに、朝には、その傷を中心に熱感のある発赤はみるみるうちに広がっていました。
39度近くの熱があがり、熱による倦怠感が強く食事摂取ができない状態でした。
皮膚科受診をすると、CRP=8.4と炎症反応が高く蜂窩織炎と診断され入院となりました。
事例から学んだこと
1.爪を短く白癬の治療をする
爪は短く切っておくというのが教訓です。
爪白癬は、高齢者の場合、薬の副作用を考慮してほとんどは処方されません。
よって、爪を注意深くケアをして、皮膚を傷つけないようにしなければいけません。
爪が厚く脆く根気よく爪ヤスリで削っては、白癬菌の治療軟膏を塗って対処しています。
2.皮膚の保清についての注意点
ワセリンを処方されていて毎日塗って保湿していました。
しかし、それだけでは高齢者の皮膚の保清は保たれないことに気づきました。
その塗ったワセリンには、皮膚の落屑や垢が付着しているかもしれませんので、清拭や洗浄してから新しいワセリンを塗ることが大切です。
また、ズボンも毎日取り換えましょう。古くなった保湿剤がついているわけですから、いくら皮膚を清潔にしても意味がありません。
3.痒みの軽減
●衣類の素材
皮膚乾燥も痒みの原因になりますが、落とし穴となっているのがズボンの素材です。
様々なメーカーから吸汗発熱する下着やズボンが出回っていますが、それが皮膚乾燥を増すことに繋がり、
化学繊維ですと静電気を生み、さら掻痒感増加につながるのです。
皮膚の弱い私は、自分自身で人体実験しましたが、やはり化学繊維は痒みを生みます。
肌に触れるものは天然繊維のものにすることを強くお勧めします。
●保湿剤の塗り方
痒みがあるときは、皮膚に擦り込むように外用薬を塗ると、その反動で皮膚が熱くなり痒みが増すことが多いでしょう。
ディスポ手袋をして、外用薬を手のひらでよく伸ばして皮膚をそっと押さえるようにして塗ります。
また、お風呂上がりの時は、水分を含んで皮膚が潤っているように見えますが、高齢者の場合は必ずと言っていいほど保湿剤を全身に塗ったほうがいいでしょう。
誰もが加齢によって皮膚の皮脂が減っていきます。
そして、水道の塩素の影響を受けて乾燥が増します。
共同風呂を使用している施設は、衛生上、次亜塩素酸ナトリウムを混入しなければいけないことになっているのでさらに皮膚乾燥を増強しているようです。
風呂上りは、皮膚に外用薬が浸透しやすくなっていますので、入浴後に外用薬や保湿剤を塗ると効果を発揮します。
さいごに
蜂窩織炎は、皮膚の感染症ですが、抵抗力の弱い高齢者は全身に影響を及ぼしますので、しっかり予防しましょう。
この記事を書いた人
- 十数年、一般病院で勤務。その後、老年看護、認知症看護、ターミナルケアに興味があり老人施設に就職しました。現在、認知症ケアに特化し、看取りを積極的に行っている老人施設で働いています。
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