骨粗鬆症治療薬を飲みつづけた副作用で骨折?part1
ある日、患者さんの娘様(60代)が車いすに乗って面会に来ました。
今までは元気に歩いていた方なので、どうしたのか聞きました。
すると思わぬ答えが返ってきました。
「転んではいないんだけれど、足が痛いと思って受診したら骨折していたのよ。骨粗鬆症予防薬の副作用だって」というのです。
私は、「骨を強くして骨折を予防するための薬なのにですか?」と聞き返しました。
「骨の密度はあがっても、骨に柔軟性がなくなって骨折するみたい」と説明してくれたのですが、私は納得いかず、医師や薬剤師に聞いたりして調べてみました。
主な骨粗鬆症治療薬(ビスフォスフォネート製剤)
現在、私たちが一番多く見かけるのは、ビスフォスフォネート製剤と言われる骨粗鬆症薬です。
主流なのが、週に一回内服する製剤(ボナロン、ベネット、アクトネルなど)、月1回内服する製剤(ボノテオ、リカルボンなど)です。
一度は、聞いたことがあるのではないでしょうか?
まず製剤の働きを理解するために骨が生まれ変わる仕組みとなぜ生まれ変わりが必要か説明します。
骨が生まれ変わる理由
なぜ骨は生まれ変わる必要があるのか不思議に思いませんか?
それには2つの理由があります。
1.骨はカルシウムを蓄える機能があり、不足すると骨から溶かして体の各組織に送り出して人間の生命を維持しています。
そして、カルシウムが余っていると骨の中に蓄えられます。
結果的に、常にカルシウムを出し入れしているので骨は生まれ変わっているわけです。
2.古くなった骨を若返らせるためです。
丈夫な骨も古くなると弾力が減り脆くなっていきます。
骨は生まれ変わることで、しなやかな強さを保っているのです。
骨が生まれ変わるしくみ
骨を作る骨芽細胞と、骨を壊す破骨細胞が働いています。
この2つの細胞が常に働き、毎日少しずつ骨を作り変えているのです。
骨芽細胞とは
骨の「鉄筋」にあたるコラーゲンを作りだし、そこにカルシウムを付着させやすくするために「のり」となるたんぱく質を塗っていきます。
ここに血液のって運ばれてきたカルシウムが自然に付着し新しい骨ができるのです。
骨破細胞とは
端的にいうと骨を壊す細胞です。
もともとは血液細胞の一種ですが、これがホルモンの刺激を受けて、骨の中で破骨細胞に変わります。
破骨細胞は、古い骨のカルシウムやコラーゲンを酸や酵素で溶かします。
溶けたカルシウムは再び血管を通り体内へ運ばれていきます。
しかし、骨破細胞は、閉経などでホルモンバランスが崩れると必要以上のカルシウムを出してしまうことがあります。
このように骨破細胞が働きすぎて骨を壊すバランスに傾き過ぎると骨粗鬆症が進む原因となります。
そこで、破骨細胞の暴走を抑えることが必要です。
ビスフォスフォネート製剤の働き
その際に、ビスフォスフォネート製剤を用いると破骨細胞の働きを抑え、骨密度を上昇させて骨を強くしてくれます。
また、圧迫骨折などに伴う骨の痛みにも効果があると言われています。
長期内服による副作用/非定形骨折
ビスフォスフォネート製剤の長期内服の副作用の一つである非定形骨折は3年から5年以上で生じやすいようです。
アメリカで報告された研究論文でビスフォスフォネート製剤であるアレンドロン酸を3年以上継続したほうが骨折が増加してしまったというものが実際にあります。
非定形骨折は、電車の揺れなどの衝撃や微小な外傷が加わっただけで骨折が起きるものをいいます。
単に外傷によって生じた大腿骨骨折とは違います。
非定形骨折とは、初めて聞きました。
今働いている高齢者施設では、ビスフォスフォネート製剤を長期にわたって内服している方が多くいます。
「年取ってあんまり食欲がなく骨に必要な栄養を摂れないから骨粗鬆症予防の薬(ビスフォスフォネート製剤)を飲んでんだよ」という高齢女性が何人かいます。
長期内服による副作用を知り恐ろしくなりました。
長くなりましたので、次に定形骨折についてさらに詳しく書かせて頂きます。
この記事を書いた人
- 十数年、一般病院で勤務。その後、老年看護、認知症看護、ターミナルケアに興味があり老人施設に就職しました。現在、認知症ケアに特化し、看取りを積極的に行っている老人施設で働いています。
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十数年、一般病院で勤務。その後、老年看護、認知症看護、ターミナルケアに興味があり老人施設に就職しました。現在、認知症ケアに特化し、看取りを積極的に行っている老人施設で働いています。
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