高齢者施設の看護実習を100倍楽しむ秘訣
私が働いている施設には、毎年、看護学生が老年看護実習に来てくれます。
入所者さんは、看護学生が来ることをいつも楽しみにして実際いつもと違い楽しんでいます。
しかし、私の指導力が足りないのか、看護学生が、「病院と違って何をしていいかわからず7日間の実習がわけのわからないうちに終わってしまった」と言っているのを耳にします。
そして、看護学校の教員からは、「老年看護は人気がないんです」とも言われます。
そこで高齢者施設での実習を楽しむ秘訣をまとめてみました。
「患者」というレッテルをなくそう
施設に入所している方は「患者」ではありません。
でも病院実習からスタートしているため、なかなか「患者」という見方が抜けません。そもそも入所者はどうして施設にいるのか考えてみましょう。
病院では、治療を目的にして入院していますが、施設入所者は、事情は様々ですが家庭で生活するのが困難で入所していらっしゃいます。
しかも特養入所者は、施設が終の棲家になります。よって、同じくここで一緒に生活をするという視点で受け持ちの高齢者と一緒に時間を過ごしてみると見えてくるものが違います。
看護問題とはできないことを探すことだけではない
病院実習で看護問題を見つけるときは、病気や障害によってできないこと、リスクを探しがちです。状態管理に目を向けすぎていませんか。
施設では、そこから看護計画を立てるのは難しくとその人らしさを阻害するような看護計画になりがちです。
施設ではあくまでも生活の場であり、転倒予防のためにベッド柵を両サイドとも上げることすら人権侵害となり拘束となります。
残された残存機能やその方が一番何によって喜んでいるか見つけ、その機能ができるだけ保たれる方法、日々穏やかに安心してその人らしく暮らせる方法を一緒に考えましょう。
看護学生がそのような視点を持って関わってくれたおかげで、私たちが知らなかったその方の潜在能力を知ったことが多くあります。
人生歴に興味をもとう
私たちの知らない時代を生き抜いてきた高齢者。大抵の施設は、病院の入院の時にとるアナムネよりももっとその人がどのように生きてきたか何を大切にしてきたかというのを本人やご家族にお聞きして毎日のケアに活かすよう情報収集を入所時にさせて頂いています。
それを読んでその人の生きてきた人生に思いを馳せてみましょう。
若い人から見て何でそんなことをするのだろう、何でそんなことを言うのだろうと思うことが多々あるかと思います。その多くは、その人の人生歴や今まで送ってきた生活からきているものがほとんどです。
その方の個性「そのひとらしさ」にもつながっています。
それが、老年看護の醍醐味だと思います。
介護職の方に積極的に話しかけよう
施設では、介護職の方の方が人数が多く看護師よりも身近な存在です。看護師よりも情報量が豊富です。
入所して何年も経っている長期の方の場合、入所から今までの介護・看護記録をひっくり返して読み情報収集するのは不可能に近いでしょう。そんなことをしていたら実習が終わってしまいます。
介護職の方に看護実習の説明をして承諾してもらったところに実習生を配属していますので安心して下さい。
家族の方からも情報収集しよう
本人と人生を共にしてきたご家族の方が、その人らしさを知る情報を沢山持っています。
受け持ちを決めるときには、ご家族にも承諾を得ていますので安心してご家族にも話しかけてみましょう。
ご家族のご協力なしでは入所者の方の生活を守れませんので、ご家族は大切な存在です。
ナイチンゲール「看護覚え書き」に書いてあることをしてみよう
冒頭の言葉に、「看護とは、生命力の消耗を最小限にすることを意味する。看護とは患者に新鮮な空気、太陽の光を与え、暖かさと清潔を保ち、環境の静けさを保持するとともに、適切な食事を選んで与えることによって健康を管理すること」であるとしています。
環境を整え生命力を上げることに着目すると限りなく看護の仕事があります。
入所者さんの個室も訪れてみましょう。そこで毎日寝たりして過ごしています。気持ちよく過ごせる環境になっていますか?
朝起きたらその気候に合った服を選ぶことから看護が始まっています。
施設ではナイチンゲールが説いている看護の原点を感じ実践できます。そして実習中受け持ち入所者さんが健康に過ごせたのことを評価して自分をほめましょう。
結果を求めすぎない
短い期間に計画を立てて実施し評価しまとめなければいけない大変さは痛いほど伝わってきます。上手くいったかいかないかばかりに焦点を当てていると大切なことを見失う気がします。
どんな結果になろうとも、その時自分は何を感じてどう考えたかということが言動に現れているのですから、そこを振り返ることによって大きな学びを得ます。
なので入所者に拒否されて嫌だった、悲しい気持ちになったという自分のネガティブな感情も受け止めましょう。
会話が続いて欲しいというのは、単なる自分の理想や欲だったから必要以上にギャップを感じて傷ついているなんていうこともあります。それが自分・その人の生きにくさである性なのではないかということに気づくこともあります。
そして、何十年もかけて高齢者が培ってきた習慣を変えようと思わないことです。
たとえそれが健康に悪影響を及ぼすことであっても、それでも100近く生きているというその人の生命のたくましさを敬いまずは受け入れることです。
高齢者施設の実習は、老化するなか最期までその人らしく生活するにはどうしたらいいか学ぶには絶好の場所だと思います。
病院よりも深く生活に焦点にあてた看護の原点や人間関係を構築していく基礎を学ぶことができます。
看護学生と関わる中で、看護の素晴らしさを感じずにはいられません。医療が高度化し状態の管理ばかりに目をやりすぎ大切なことを忘れていたなと反省させられます。
看護学生のみなさま、入所者の方と共にいつも実習に来て下さることをとても楽しみにしていますので、気楽に実習に臨んで下さいね。緊張すると相手にもその緊張が伝わってしまいますのでリラックス(^-^)リラックス(^_-)-☆
引用文献:看護覚え書 看護であること看護でないこと看護であること看護でないこと/フロレンス・ナイチンゲール/薄井坦子 湯槇ます
この記事を書いた人
- 十数年、一般病院で勤務。その後、老年看護、認知症看護、ターミナルケアに興味があり老人施設に就職しました。現在、認知症ケアに特化し、看取りを積極的に行っている老人施設で働いています。
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