最近注目の「スキンテア」を身近なものでケアしよう!
「スキンケア」ではありません。最近注目されている「スキンテア」(皮膚裂傷)です。
看護雑誌でも時々特集されるようになりました。
しかし、看護雑誌で紹介される1000円/枚ぐらいするドレッシング材を使おうものなら瞬く間に施設は赤字となってしまいます。特養では、治癒に使う材料費がすべて施設の持ち出しだからです。
しかも、皮膚が脆弱化している高齢者は、気を付けていてもちょっとしたことでスキンテアができます。
病院は、「ご家族に買ってもらえば」なんて簡単に言いますが、スキンテアは予防できるものであるので簡単にご家族に依頼できることではありません。
そこで、医師の協力のもと施設でできる「スキンケア」を考え実施して効果がありましたので、よろしかったらご参考下さい。
スキンテアとは
ご存知の方もいると思いますが、おさらいしましょう。
摩擦・ずれによって皮膚が裂けたり剥がれたりする真皮深層までの皮膚損傷(部分層損傷)のことを言います。
褥瘡とスキンテアの違いは?
原因と創の深さにあります。
「褥瘡」は持続的な圧迫とずれが原因で起こり、虚血性の障害であるため、壊死に陥ると骨まで達することがあります。
「スキンテア」は、、一過性に強い外力が加わって発生する皮膚の裂傷で、原因は摩擦で起こり、ほとんどは真皮深層までと浅いものです。
スキンテア発生時の対応
●水道水で優しく洗浄する
圧をかけると皮弁が取れてしまいますので優しく洗浄しましょう。明らかに汚物などで汚染されている場合は石鹸の泡で洗い水道水で流します。
皮膚科医に確認したところ、生食でなくても水道水には塩素が含まれているので消毒効果もありそれで十分とのことです。
施設では、多くのスキンテアの方を処置していますが、今まで水道水洗浄をして感染を起こした方をみたことがありません。
●圧迫止血する
皮弁をなるべく元の位置に戻す。皮膚にめり込んでいたりよれている場合は、眼科用摂氏を用いると便利です。
●ラップ療法を活用する
患部その周囲にワセリンを塗り三角コーナーに使う穴あきビニール袋(ない時はラップ)を貼りその上にガーゼまたはオムツや生理用ナプキンにを引いたものをのせます。
医師の指示により患部にゲンタシン軟膏を患部に塗ります。
こうすると、コストが安価ではがす時に皮弁と一緒に剥がれてしまうということもありません。
さらに皮弁が残っている場合は、皮弁をはがさないように皮弁の方向に剥がします。剥がす方向をガーゼにマジックで記入しておきます。
固定テープによって皮膚損傷を起こしてしまう人は、包帯で固定したり、膝・肘あてサーポートやレッグ・アームウオーマーで固定します。
そうすることにより、同じ部位が知らずにどこかにぶつけてしまい悪化することも防いでいます。
●1回/日、優しく洗浄して交換する。
他、血液汚染があった場合は交換します。
認知症を患っている方で処置した材料を自分です取ってしまい中にはそれを食べてしまうひともいます。さてそのような方にはどうするか。施設では、ミトンは虐待に当たるのでできません。
こんなときは、透明な薄いフィルム材を使います。
よく止血した後、ゲンタシン軟膏(医師の指示による)を患部に薄く塗って患部よりかなり広めの大きさに貼ります。
血が溜まらない限りは剥がれるまでそのままにしておきます。ゲンタシン軟膏(医師の指示による)を塗ることにより、テープの粘着と一緒に皮弁が剥がれ悪化することを予防しています。
薄く透明で見えないため、剥がす人は稀です。
血が多く溜まってどうしても剥がさなければいけない場合で、剥がれにくい場合は、ストーマパウチの面板の剥離剤を用いて剥がすこともあります。この時も同様皮弁の方向に剥がしてくださいね。
スキンテアの予防
まず発生傾向や状況を見てみましょう。
●発生傾向
スキンテアが起こりやすい人
75歳以上
発生者の6割が抗凝固剤を内服、約2割がステロイド剤の内服を継続している
浮腫・血腫・紫斑がある
●発生状況
医療用テープ剥離時が多く、他は、移乗時・体位変換・寝衣交換時など生活援助時の時に起こる擦れや、本人がベッド柵にぶつかる、転倒、などがあげられています。
上記からスキンテアはある程度ケアする側のケアや注意により軽減できるものだとわかります。
そこであげられる予防策として
ケア提供者が障害を与えない
爪を伸ばさない
指輪・腕時計など外してケアをする
移乗などの技術を見直す
スタッフ全員にテープの剥がし方の指導をし周知徹底をする
皮膚の保湿をしっかりする
入浴後が水分が皮膚に含まれており最適なタイミングです。
入浴日以外も、介護職の方に協力してもらい朝晩の寝衣交換時にワセリンなどで保湿してもらいます。
塗り方にも注意が必要です。摩擦が起きないように、ケア提供者の手袋にも少しの水分をつけて保湿剤を静かにポンポンと置くように塗っていきます。擦り込むように塗ると摩擦が起きてしまいます。
特に、紫斑ができているところは、スキンテアが起きやすいので厚めに皮膚保護材を塗っています。
皮膚の保護をする
また、高齢者は、認知力や感覚の低下で、知らずにどこかにぶつけているということもあります。
施設では、よく赤ちゃんが机の角にぶつかってけがをしないように使う保護材を車いすの足につけたり、ベッド柵にカバーをして保護しています。 また、レッグウオーマーやアームウオーマーを装着して頂いています。
以前、ナースコールを押しても誰も来てくれないからベッド柵を腕に叩いてスキンテアを起こした人もいます。
心理的な面からアセスメントすること大切だと感じています。
どうしてスキンテアができてしまったのかというアセスメントをしっかりして予防に努めましょう。
また、他にコストがかからない有効なケア方法がありましたら教えて下さいね。
スキンテアの基礎は
引用:日本創傷・オストミー・失禁管理学会のホームページにはスキンテアの基礎がさらに詳しく説明されていますので活用して下さい。
参考・引用文献 今知っておきたい!「スキンテア(皮膚裂傷)」の最新情報:エキスパートナース31(7)2015
この記事を書いた人
- 十数年、一般病院で勤務。その後、老年看護、認知症看護、ターミナルケアに興味があり老人施設に就職しました。現在、認知症ケアに特化し、看取りを積極的に行っている老人施設で働いています。
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