これって無意味な医療？

この記事を読んでくださっているみなさんは、自分の行っている“看護”に対しての｢本当にこれでいいのかな？｣と感じたことはありませんか？

今回は私が、派遣看護師として有料老人ホームに6ヵ月間短期派遣していた時の話です。

病棟にいた頃も命とは向き合っていましたが、有料老人ホームの派遣では今までにしたことないような日常生活援助や、嚥下食の介助など新鮮なものがありました。

何よりも、｢命の最期｣に向き合うという、特殊な環境だったと思います。

初めてのことが多く、戸惑うことはたくさんありましたが、ひとりひとりの入居者さんの個別カンファレンスを何度も開き、｢どうやったら幸せに逝けるか｣をテーマとして学ぶことは本当にたくさんありました。

中でも｢看取り｣の支持が出た入居者さんは、延命治療を一切行わないという本人、家族の希望なのでだんだん弱っていく入居者さんを見守るのはとてもつらいものでした。

さて、そんな有料老人ホームでの体験の中で、私が最も印象に残っているのが、同施設での中堅看護師のセリフです。

｢延命治療なんて意味のない医療。亡くなるときに亡くなれない、苦しい中で生かされるつらさが、あなたにわかる？｣

その言葉は、入居者本人が意思疎通できず、家族の希望で延命治療に入った80代男性を受け持った時に言われました。

言われた直後、私も心にザラつくものがあり、奮起しました。

｢無意味な医療ってなんですか？｣

普段は感情をあまり出さずに業務するように心がけていたので、先輩も少し驚いた様子でした。

｢じっくり考えてみるといいと思うよ･･･。｣

そう、先輩は諭すように言いました。

先輩とはチームが違ったので、それからは濃密な関わりあいがなく、私は担当になった入居者さんの看護に向き合うことに専念しました。

3回の食事は胃瘻から入り、経鼻酸素チューブがないとSPO2は下がり、喀痰はつまりました。

医療機関ではないので吸引器の圧も弱く、取り切れない喀痰のせいで呼吸がしにくいのか、ゴロゴロと音を立てて呼吸をします。瘻孔部分は赤く腫れあがりました。

家族は付き添いや、清潔援助で朝も夜もない生活を共にし、疲れ果てています。

週に１回の往診と、２週に１回の通院は欠かさず行きましたが｢家庭で見るレベル｣と言われました。

担当になってから３ヶ月しか経った頃から、疲れ果てた私の脳裏に先輩に言われた言葉が浮かびます。｢これって無意味な医療なのかな･･･。｣

そんな矢先に入居者さんが亡くなりました。予期せぬ、急変でした。私もオンコールを受けて、すぐに駆けつけました。

いつもは眠ってるのか起きてるのかも、わからない入居者さんでしたが、最期を迎える直前に付き添っていた家族に｢ありがとう｣と言ったそうです。

発声はできず、口の動きだけでしたが何て言ったか家族にはすぐにわかったそうです。

そして、入居者さんの息子さんが私に言いました。

｢生きてた欲しいって願ったのは私のエゴだったかもしれない･･･。もしかしたら、延命治療なんてしない方が父にとっては楽だったかもしれない･･･。
けれど、その逆だったかもしれない。結局はわからない･･･。私は自分がした選択は正しかったと思っています。少しでも長く家族で過ごせて嬉しかったです。ありがとうございました。｣

あの言葉を改めて考えました。もしかしたら先輩は私の経験からは、想像もつかないようなつらい最期を経験しているのかもしれない。

決してマイナスな意味で言ったつもりは無かったのかもしれない。

思うところはたくさんありましたが、私の中で衝撃的だった言葉を噛み砕いて受け入れました。

自分のやっている看護ご、｢無意味な医療｣だなんて思いたくないし、入居者さんやその家族にも思わせたくありません。

本人にとって、よりよい選択をできるようにアプローチすることが最期に関わる看護師として必要なスキルだと学んだ職場でした。