小児の骨髄移植で難しい看護4点
病気によって小児に罹りやすい病気もあれば、更年期や老年期に罹りやすい病気もあります。白血病などの血液疾患を見てみると、小児から老年期まで全ての年代で罹る可能性のある病気と言えます。
私は小児科ではなかったので、主に青年期以降の患者さんの移植を看護する機会が多かったのですが、時に小児科から骨髄移植をするために転棟してこられる子供達をみる機会もありました。
化学療法は小児科で行えるけれど、骨髄移植になると血液内科で行うという決まりがあったので、骨髄移植直前に転棟されます。
今回は、そんな小児の骨髄移植で難しいと感じた点についてお話しします。
採血量に注意!
血液内科に所属し、毎日青年期〜老年期の患者さんの採血をしていると、1人の採血量が他の科に比べて膨大である事の感覚が麻痺してきます。
しかも移植後ともなれば毎朝片手だけでは持ちきれない本数のスピッツが準備され、トータル30mlに近い(それ以上の事も)血液を採取します。
もはや輸血のための自己血を保存しているのかと疑われるぐらい沢山の検査に回します。
そんな毎日の中、小児の患者さん(5歳以下)の採血量を比べるとスピッツもマイクロティナと呼ばれる小指半分くらいの容器に代わり、そのマイクロティナがせいぜい3〜5本。トータルにして1ml程です。
当たり前と言えば当たり前の話ですよね。まだまだ身体の小さい子供。体表面積も変われば血液量も違います。少しでも採血を取りすぎるとたちまち貧血になってしまうのですから。
化学療法後、移植後なので当然貧血である事に変わりはありませんが、加えて自分の取った採血量で貧血を悪化させていないかと心配になる毎日でした。
しんどさの判断が難しい!
大人でもしんどさに強い人、弱い人は居ます。しんどさの閾値が高いか低いか。
嘔気を例に挙げてみましょう。嘔気がありこちら側から見ればかなりしんどそうに見えるけれど、頑張って自分で検温を記入したりトイレまで行って吐いたりする患者さん。
はたまた吐き気があって動けない…。と蚊の鳴くような声で看護師に訴えガーグルベースン片手に横たわる。しかも看護師が出て行くと同時に座ってゼリーを食べ始める患者さん。さっきのは演技かと疑いの目を向けそうになるのを堪える看護師。
しんどさというのはその人個人個人の主観で決まるので、大人でも十分に判断基準は難しいです。
小児においては、更にしんどさのスケールが精神的要素を多く含むと考えます。
よくニッコリ笑顔から泣き虫顔のペインスケールを子供に見せて痛みの判断をすると思うのですが、移植入院中の子供たちからしてみれば、いつでも泣きたい精神状況にあると思います。
母親の付き添いはあるにしても、この治療の苦痛、身体の症状、自分の置かれている立場がよく分からない状況でニッコリ笑顔を見せてくれる日は数日だけです。
まだ話ができない1歳前後の乳幼児においては、泣いている原因が痛いのか、吐き気がするのか、不安なのか、その全てなのか判断がつきにくいです。
元気な状態であれば、その子が何に泣いているのかすぐに察しがつく母親も、未知の治療中ともなると、我が子の身体の中にどんな事が起こっているのか想像がつかず困っている姿を見かけます。
そんな時、母親役割として「側に付き添い手を握り、背中を摩るだけで子供は安心出来ますよ。」と声をかけますが、それだけで子供の機嫌が治らない時には医師にも診察してもらいながら、しんどさの原因を究明し、少しでも苦痛が取れる方法を探します。
遊んで点滴ルートが絡む危険!
大抵の場合、移植前の前処置と呼ばれる点滴の時点で小児科から血液内科に移動してもらっていました。移動直後よりいきなり24時間点滴が始まる事が多いです。
そして、小児ですから身体はベッドの1/3あるかないか。まだ前処置開始直後は点滴に伴う身体のしんどさは現れませんから、ベッドの上でゴロゴロする子もおられます。ルートが絡む絡む。
そして、首や鎖骨下に入っているカテーテルのルートまで引っ張られそうになって慌てて静止‼︎なんて事も。
ルートが長過ぎても絡んでしまいますし、短すぎても抜去の危険があるので、注意が必要です。
大人であればその危険性の認識は出来ますが、まだまだ自由を求めたい子供達。母親も私達以上に注意して見て下さっていますが、なにせ沢山繋がるルート類。長さや点滴の調整は大変ですね。
母親の精神的支援
誰だって我が子が血液疾患を発症すれば気が気ではないと思います。
基本的に絶対看護だったので24時間の付き添いをお願いする事はありませんが、むしろ付き添いたいと願う母がほとんどで、毎日寝泊まりをされていました。
家の事もままならない状況、兄弟がいれば、その子供達のことも心配、ゆっくりとお風呂にも浸かれず、昼間に短時間病院内のシャワー室で済ませる程度。
夜も我が子の呼吸を確認しながら補助ベッドで寝る毎日。子供達も過酷な治療に耐え、しんどい思いをしていますが、同じくらい母親達も一緒にしんどい思いをされているのです。
子供に痛みが出れば早く取ってもらいたい!苦痛の表情は見たくない!と考えるのが当たり前です。
医療者側も身体に負担のかからないギリギリのラインまで鎮痛剤を使う事を考慮しますが、それでもすっきり取れない痛みには薬剤以外の方法で何とか紛らわせて耐えてもらうほかありません。
おわりに
骨髄移植の治療に関わらず、小児科の入院病棟では普段から日々このような看護をしているのかと思うと、私からすれば脱帽です。
どの年代においても移植治療の入院中は様々な苦労が伴いますが、成人以上に細やかな点に配慮しなければならない小児看護はまだまだ慣れない事だらけです。
患者さん1人をみるのではなく、その人を支える家族にも目を向けて関わらなければならないと切に感じる小児移植看護でした。
この記事を書いた人
- 看護師9年目。血液内科病棟で勤務し、小児から成人・老年期の看護に携わる。結婚半年後に夫の転勤に伴い退職。現在は一児の母で子育て奮闘中。
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