内視鏡室看護師の仕事内容
現在のがんの死亡者数の中で、上位を占める「胃がん」「大腸がん」を早期発見・早期治療するために欠かせない検査が内視鏡検査です。大きな侵襲を与えずに直接臓器を観察できる、こんな良い検査は他にはなかなかありません。これから更に内視鏡検査の需要が高まることが予測されていて、私の働いていた病院でも1日に上部消化管検査は30名、下部消化管検査は10名ほどが検査に訪れていました。
そこで、内視鏡室で働く看護師の仕事内容を簡単に説明したいと思います。
内視鏡看護師の仕事内容
問診聴取
内視鏡検査では、胃や腸の蠕動運動を一時的に止める前投薬を投与したり、痛みや苦痛を伴う場合には鎮静剤を使用する場合があります。その薬剤の種類や量を選択する際には既往歴が重要で、既往により使えない薬剤、開腹手術の経験があれば癒着が考えられ大腸の内視鏡検査では痛みを伴うことがあるかもしれないなど、事前に把握しておくことはとても大事です。
また、内視鏡検査には前処置が必要です。食事は抜いてきているか、大腸の検査であれば下剤・洗腸剤を自宅で内服できたかなど検査の前に確認をします。
前処置(咽頭麻酔)
問診にてアレルギーのある薬剤などを確認し、問題ないと判断した場合には咽頭麻酔をします。その際も、麻酔薬でアレルギーが出ないか嚥下に問題がないかを看護師は観察する必要があります。
検査介助
実際に検査が始まったら、前投薬の投与、患者への声掛けや背中を優しく擦ったり、バイタルの確認など看護師の仕事は山積みです。大きな病院の内視鏡室であれば内視鏡技師や臨床検査技師が配置されている場合もありますが、私の働いていた時には人手不足のためにプラスして生検の介助などもしていました。
片付け
患者の使用したエプロン、タオル、のう盆を捨てる。また、唾液などで検査台が汚染していた場合には拭き取る。
使用した薬剤、スコープを下げて、次の患者用の薬剤・スコープを設置する。病院によっては使用したスコープを看護師が洗浄するところもあるようですが、私の働いていた病院は洗浄を担当する「洗浄さん」がいました。
検体の処理
採取した者が最後まで取り扱うのがルールであったため、医師の発行する病理検体の依頼書を待って検体と共に病理室へ提出する。
内視鏡看護師の大変なところ
機器・機材が多い
検査の介助についていると、医師より「○○持ってきて~」と言われることがあります。大体、検査で使用する物品は一箇所にまとめてはありますが、その中から目的の物を見つけ出すことが大変です。
例えば、フックナイフ、ITナイフなど似た名前も多ければ、英語で呼び合うことが多いため、新人さんや慣れない看護師は何を持ってくれば良いのか分からずに大慌て!!医師もそれが煩わしいのか、自分に介助につく看護師を指名してくることもあります。
用語・処置の種類が多い
内視鏡室では検査ばかりではなく、早期の胃がんであれば剥離術(ESD)、粘膜切除(EMR)など治療も行います。処置内容が変われば使用する薬剤も器具も方法も担当する医師さえも変わるため、覚えることは盛りだくさん。
解剖に詳しくなければならない
特に下部消化管の際に出番が多いですが、「用手圧迫」と言って大腸をスコープが進んでいる際に大腸がたわまないように腹部の上から大腸と押さえます。大腸の走行やその他の臓器、どこをスコープが進んでいるのかを把握し、看護師はスムーズにスコープが進むように助けなければなりません。
医師の中には、一人前の医師は用手圧迫なんて使ってちゃダメだ!と言う人もいますが、患者のためには看護師は用手圧迫の腕をあげ、必要なときには介助出来ることが大切なのです。
1人の患者さんと長く関わることは出来ないけれど、内視鏡の中でやりがいを見つけられたら楽しい現場です。看護師のみではなく、他職種と関わることも多いですよ。
定期検査に来るいわゆる「常連さん」も、顔を覚えてもらって「あの先生は下手だから嫌だ…笑」など本音で話が出来て、それもまた楽しい時間です。
この記事を書いた人
- 大学病院で5年間勤務、内視鏡、透視室、放射線治療室など特殊部門の経験あり。結婚を機に退職し、現在は男の子の子育て中!
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