呼吸器内科ナースの経験談①痰との終わりなき闘い
呼吸器内科に勤務していた頃の経験談をシリーズでお話しします。第一回からマニアックなネタで申し訳ありませんが、「痰」についてです。
呼吸器内科で勤務するには、痰の吸引は必須の看護です。以前研修で数ヶ月病棟を離れた際に、戻ってきて驚いたのは、患者さんの痰の固さと色でした。呼吸器内科の患者さんの痰というのは、こんなにもネバネバしていて色がついているものなのか!と改めて思いました。そんな呼吸器ならではの痰のエピソードをいくつかお話しします。
一番怖い痰詰まり
前述した通り、呼吸器内科の患者さんは、呼吸器に何らかの炎症が起きている方が多く、粘り気のある痰が多いです。吸引すると吸引チューブが詰まってしまうほど固い痰であることもしょっちゅうあります。
そんな患者さんを看護していて一番怖いのが、痰が気管に詰まってしまうことです。夜勤中、モニターのアラームが鳴って、見てみるとSpO2が90%まで下がっている、急いで部屋まで駆けつけた頃には70%台!なんてこともあります。
駆けつけるまでの時間が命取りになりますので、リスクの高い患者さんは、ナースステーションから近い処置室に夜間一時的にベッドごと移動したりするのですが、なんせそんな患者さんが多いわけですから、夜間の処置室は満員御礼です。特に冬は呼吸器の病気は悪化しやすいですから、冬の夜の処置室はベッドでごった返しております。
吸引にも相性が⁉︎
痰が自力で出せない患者さんには、吸引を行うのですが、明らかに痰が絡んでいるのになかなか吸引できないことがあります。
吸引している間患者さんは苦しいので、一回の吸引時間は10〜15秒とされているのですが、これがなかなかこの時間では痰が取れないことが多いのです。そんな時に、「ちょっと○○さんの痰が取れないんだけど吸引代わってもらえるー?」と同僚に頼むこともあります。不思議なことに、人を代えたとたんに、痰がスルッと吸引できることもあるのです。
中にはゴッドハンドと呼ばれるナースもいて、そのナースが吸引を代わると大抵はうまくいくという人もいますが、うまくいくかどうかはマチマチなことも多く、相性があるのかもなあと思います。
痰は静かに語る
呼吸器内科で経験を積むと、痰を見ただけで様々なことが判断できるようになってきます。
例えば、これまでサラサラの痰だった患者さんが、今日は何だか粘りがあるなあ、と気付いたら、部屋の湿度が低すぎるんじゃないかとか、体内の水分が減って脱水傾向なんじゃないかとか、何らかの感染症の徴候なのか、など様々な可能性をアセスメントできます。
また、意外と侮れないのが痰の臭いです。緑膿菌やMRSAに感染している方の痰は独特な臭いがします。実際、ベテランナースがそれらの感染症を疑って、医師に報告して検査すると、菌が検出されたということも多いのです。
家族に吸引指導
入院中に痰の吸引が必要になり、自宅に帰っても必要とされた患者さんには、ご家族に吸引の手技の指導を行います。この吸引指導、とても大切な呼吸器内科の業務なんですが、指導を通して家族の意外な一面が垣間見れる場面でもあるのです。
痰の吸引は患者さんにとっては苦しい時間でもあり、正確に素早く行って欲しいものですが、最初は不慣れなご家族が行うので、時には喧嘩になってしまうこともあります。「そうじゃないだろ!」「こっちだって一生懸命やってるんです!」「だいたいいつもお前は何やるにしても雑なんだよ」「あなたもいつだって自分勝手なんですよ!」…なんてやり取りを仲裁してなだめていくのも、ナースの大事な役割です。亭主関白と思っていたご夫婦が意外と奥さんが強かったり、その逆もしかり、本当の家族の姿が見えたりします。
その家族の個性を大切にして、退院後も無理なく過ごせるようにフォローしていくことが大切ですね。
この記事を書いた人
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呼吸器内科に10年勤務
→休職
→訪問看護に再就職
→妊娠に伴い退職しました。
現在二人の子育てで休職中です。認定看護師の資格を持っています。
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呼吸器内科に10年勤務 →休職 →訪問看護に再就職 →妊娠に伴い退職しました。 現在二人の子育てで休職中です。認定看護師の資格を持っています。
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