クリーンルーム病棟小ネタ
私は血液内科の病棟で7年勤務しました。一般に白血病や悪性リンパ腫など、血液の癌を患った患者さんが入院される病棟です。私が働いていた病棟は病棟全体がクリーンルームになっていて、その中でも更に骨髄移植後の患者さんが入るバイオクリーンルームという部屋もありました。今回は、そんなクリーンルームで働いていて体験したちょっとしたあるある小ネタをご紹介します。
ハンドソープとペーパータオル
まず、クリーンルームというからには清潔を保たなければなりません。なにしろ、病室には化学療法や骨髄移植をして白血球が100以下、10個なんて患者さんが沢山いるのですから。マスクは出勤と同時に装着。そして、一に手洗い、二に手洗い。患者さんの部屋に入る前後、処置前後、病棟に帰ってきても手洗いに心がけます。
さて、1日で病棟職員が使うハンドソープとペーパータオルの量はどの位でしょう。不運にもハンドソープを何度も押しても小さなシャボン玉が飛び散るだけ、ペーパータオルは最後の一枚なんてことが何度あった事か。忙しくて、早く次の業務に取り掛かりたい時に限ってハンドソープとペーパータオルの神様は私に試練を与えるのです。
急いで取り替えようと新しいものを取りに行って帰って来ると、同じ科の先生がペーパータオル無いのか、なんてブツブツ言いながら他の場所で手洗いを済ませる姿を発見!貴方達も補充して下さいよ!と心の中で叫ぶ事もしばしば。でも、それが他科の先生だと、すみません補充切らしてて、なんて優しくなったりしますね。
こんな時に限って忘れ物
バイオクリーンルーム。聞くだけでも、ものものしい部屋を想像しますね。しかし、入ってしまえばただの個室とさほど変わりはありません。入るまでが大変なのです。バイオクリーンルームは、空調を常に管理するセンサーつきの扉を越えた奥にあります。病棟で手を洗っていても、バイオクリーンルームの前室と呼ばれる場所で更にもう一度手洗いと手指消毒をする事が必須。1分前に手を洗ったのに、再度洗うという事がよくあります。
全て準備をして手も洗っていざ入室したと思った矢先に、何か一つ忘れ物をして病棟に取りに帰らなければならない事に気づくのです。患者さんからの要求や、後に必要と思い取りに帰るのであれば何の後悔もありません。しかし、自分の忘れ物を取りに帰り、また入る前に厳重な手洗い、消毒をしなければならなかった時の虚しさと言ったら何とも言えません。人生ゲームで振り出しに戻った気分と言えば大袈裟でしょうか。
同じ事はバイオクリーンルームに限らず起こります。例えば、MRSAなど感染隔離された病室に入る時。手洗いに加え、使い捨ての専用マスク、手袋、エプロンの装着。その一動作を数分の間に何度もする事の大変さは想像に難くないと思います。
薄化粧、何ならスッピンでも大丈夫
最初に、マスクは出勤と同時に装着と言いましたが、女性看護師には時に有難いシステムです。夜勤でフルメークはお肌に悪いし、出勤前は少しでも寝ていたい。なら、スッピンでもいいじゃないか。何故ならマスクと言う強い味方がいるのですから。マスク美人とはよく言ったものです。ただ、帰る間際に病棟でマスクを外そうものなら患者さんにしめた!と言わんばかりに見られます。何でも徹底性は大事ですね。
風邪を引かない?いや、引けない
たまにクリーンルームと聞くと清潔区域にいるから風邪とか引かないんじゃない?と医療者ではない友人に言われる事があります。あくまでクリーンルームは患者さんを守るための部屋であり、私たちが守られているわけではありません。病棟の外に出れば病院内なんて細菌、ウイルスの宝庫。普通に風邪だって引きます。ただ、引かないように注意しているだけです。
社会人として、いやそれ以上に患者さんに自分の菌を撒き散らさないようにと気を遣っている面はあります。何せ感染しやすい患者さんばかりですし、患者さんもその事をよく知っています。マスク越しでも、こちらが咳をすると気にされる方もおられますからね。咳が出そうになったら、そそくさと退室して病棟の休憩室に入って思い切り咳をしたり、鼻を噛んだり。実はマスクの下で鼻の穴にティッシュを丸めて詰めている、なんて事も。
いずれにせよ風邪は引くもんじゃありませんね。
以上、クリーンルームで働いてみて体験した小ネタでした。これから寒くなりインフルエンザなども流行る季節になるので、皆さんもクリーンルームで働く看護師に負けないぐらい手洗い、うがいなど感染予防策をしてウイルスを撃退していきましょう。
この記事を書いた人
- 看護師9年目。血液内科病棟で勤務し、小児から成人・老年期の看護に携わる。結婚半年後に夫の転勤に伴い退職。現在は一児の母で子育て奮闘中。
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