高齢者に胃ろうはしないで点滴投与をするのはナンセンスpart2

part2にお付き合い下さりありがとうございます。
高齢者が口から食事がとれなくなった時に、胃ろう造設をしないで点滴投与をするのはナンセンスなのか、もう少し一緒に考えてみませんか?
日本に胃ろう造設が広まった社会的背景
欧米では、1990年当時、PEGによる経管栄養法が定着していましたが、日本ではほとんど行われていませんでした。
しかし、1990年後期の日本は、急激な高齢化と適正な医療費の必要性、患者の負担を少しでも軽減しようということから注目され急激に施行件数が増えました。
私の祖母もその当時は当たり前のように胃ろう造設をしました。
点滴では家庭に戻ったり、施設入所が困難になります。
胃ろうならばそれが可能となり、入院日数が短縮化され点滴投与だけで入院という無駄な医療費が削除されるため、胃ろう造設が推奨されていた時期がありました。
胃ろうをしないで最期までできるだけ口から食事を摂るとなると手がかかります。
その人のペースに合わせて食事介助をしていると1時間ぐらいかかることはよくあることです。
病院に勤めていた時は、「口腔リハビリをして、もう少し時間をかければ食べられるのはわかっているけれど、他の患者さんもいる現状を踏まえると無理。」ということにずいぶん心を痛めました。
そこで、病院ではご家族に「1日のうちの1食でいいので、食事介助ができませんか」とお願いしていました。
しかし、孫の面倒をみなければいけない、自分も具合が悪い、仕事が忙しいなどの理由で、食事介助をしてくれるご家族は少ないものでした。
口から食べるには、手がかかるということから、胃ろうにしようということも少なからず理由の一つにあげられます。
家族の思い
病気ではなく老衰だと証明するために、頭から足の先までCTを撮ったり、採血などをしてくれる医師もいれば、積極的な治療を希望しないのだから検査なんて無意味とまったく検査をしないで老衰と決めつける医師がいます。
医師の説明が腑に落ちない場合、家族はさらに悩みます。
患者が認知症を患い意思を伝えられないとなると、本人の意思を確認できないためさらに悩みます。
意思が伝えられなくなる状態になる前に親に確認をしておけばよかったと思う人が多いですが、数年前まではあまり情報が少なかったように思います。
以前、夏バテで食べられないとき点滴したら回復して数年生きているのだから、また一時調子が悪くて食べられないだけではないのかと希望を持っています。
体の調子が悪かったり、機嫌が悪くて一時的に食べられないのかどうかは、検査値では測れない部分があります。
そして、癌など病気ならば予後数か月とおよその見立てができますが、老衰の場合予後の見立てが難しいものです。
点滴をして回復するかどうかはしてみないとわからないのです。
究極のところ、神様にしかわからないというところでしょうか。
まとめ
胃ろうの歴史やメリットをまとめてみると、医師の言う通り確かに胃ろう造設をしないで点滴投与を続けるのは、ナンセンスかもしれません。
高齢者の場合、栄養投与してもそれを吸収しエネルギーに変換するだけの体の機能が低下している場合も多々あるので、そう言えるかもしれません。
しかし、私が思うには、それは医療者側の価値観であり、ご家族が希望するならば期間を決めて点滴投与を試みてはどうかと思います。
人工的な栄養投与法、自然な看取りについてのメリットとデメリットを説明し理解したうえで、本人・家族が納得すればどれを選んでもいいのではないでしょうか。
それぞれの価値観があるので否定はしません。
本人の意思を確認できないところが悩ましいところですが・・・
また、食事をまったく食べず水分摂取が100ml/日近くなる日が数日続くと、平均1週間から10日くらいでお亡くなりになります。
この現実をご家族に話すと「えーそんなに短いんですか!」と嘆くこともあります。
正直、もう100近く長く生きてこられたのだから十分なのではないかと思うこともあります。
私たち看護師は、様々な高齢者の終末期の現実を見てきたので客観的に捉えられるのかもしれません。
他人だからということもあるかもしれません。
ご家族がそれを受け入れ覚悟するためには、ご家族の思いを受け止めたうえで、きちんとした説明と一緒に最期までその人らしく生きるにはどうしたらいいのか考えていくことが大切だと強く感じています。
そして、一番大事なのは、看取りだからと構えるののではなく、死は生活の延長線上にあるのだから今を大切に積み上げていくことだと思います。
そうすれば、きっとその人らしい最期を迎えられるのではないかと思います。
本人とご家族が今を大切に過ごしていくことができるように関わっていくことができるようになりたいものです。
この記事を書いた人
- 十数年、一般病院で勤務。その後、老年看護、認知症看護、ターミナルケアに興味があり老人施設に就職しました。現在、認知症ケアに特化し、看取りを積極的に行っている老人施設で働いています。
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