入浴を拒む方への工夫
認知症に特化している特養に勤めているためか、入浴を拒む人は多いものです。
でも自分も利用者の立場になったら嫌だなと思います。
なので無理矢理ではなく、あの手この手を使いどうにか気分を盛り上げて入浴して頂いています。
実際行って成功した例をご紹介します。
ちなみに私が勤務している特養はユニットケアをしているため、ユニットに一つの個浴があり、家庭の浴室と変わりありません。
1人入浴したらその都度掃除をして、次の方に使って頂いています。
利用者の言い分
施設に入所したのを理解できず、「家に帰ってから入る」「人に介助してもらうのが嫌」という人が大半です。
入浴をすすめると、いつも「今日は調子が悪いから」「こっちのわがままも聞いてくれったっていいじゃない」「だって汗かくこともないし汚れないしいいじゃない」「お風呂入らなくたって死なないでしょ」など、様々な入らなくてもいい理由を述べてきます。
必死に訴えてくるのでこちらも必死に考えます。
認知症の方はこちらの感情を敏感に感じる
認知症専門医から教えて頂いたのですが、認知症の方は、理論的なことを司る左脳よりも感覚的な右脳が優先に働くようになることが多くなるそうです。
そのため、言葉よりもその人の雰囲気を敏感に感じ取ります。
なので、職員が今日こそ絶対にお風呂に入れなければと強く思うほど、無理なものです。
なので、ゆったりとした気持ちで「お風呂は気持ちいいですよね」という気持ちで接しないと無理です。
対応の工夫例
気分を盛り上げてから勧める
こちらの都合で、いきなり入浴のことを切り出してはいけません。
また拒否が強い時には、時間を空けて勧めてみましょう。
事前に本人の好きな飲み物お菓子を提供したり、お散歩に行ってコミュニケーションを図って気分がいい時に入浴を勧めています。
私の勤務している施設は、お酒もOKなので、自宅と同じようにビールが飲めますよと、言えば喜んで入って下さいます。
お薬の関係もあり、アルコールの少ない発泡酒にして、ばれないように事前にコップに入れてお出しすることもあります。
お酒の飲み過ぎにはくれぐれも注意しましょう。
その人が望む入浴方法
介助側のアセスメントにより機械浴にして、「もう自分が物になったようだ、お風呂に入った気がしない」という方がいます。
椅子に座れる方ならば、個浴でも、二人がかりで両脇と両膝を抱えれば浴槽に入れるものです。
ケアする側の都合ではなく、できるだけ本人が気持ち良く入れる方法に近づくことができるように考えてみましょう。
ご家族にお願いされている
娘さん、息子さん、お孫さんにお願いされているからと説明すると入ってくれることがあります。
ご家族の方が面会にいらした際は、誰と一番仲がいいのかよく観察しましょう。
それでもダメな時は、ご家族に協力してもらい、面会の時や電話で本人に説得してもらうこともあります。
家族が一緒ならば入ると、入浴介助を手伝ってくださる家族もいます。
可能ならば同性介助にする
人手不足なのもわかっているし、みんな忙しそうだから言えないけれど、実は密かにそう思っているようです。
でも中には、男性の方が力があって安心という方もいますので確認しましょう。
銭湯のようにアレンジする
温泉マーク、「男」「女」と書かれた暖簾を入り口にかけたり、入浴剤を入れて、今日は格別にいいお湯だからと誘います。
その方が好むならば、昔ドリフターズが歌っていた「いい湯だな、はははん~(^^♪)」の曲を流しています。
時には、お盆に素敵なデザインのコップに飲み物をのせて、湯船に浮かべて飲んで頂きゆったりと過ごしてもらうことを心がけています。
一人の時間を作る
実は、自宅にいたときのようにお風呂の時ぐらい一人でゆっくりしたいと望んでいる方が多いのです。
湯船に入った時は、ほんの少しお風呂の戸を開けて気配を消して見守るようにし、一人の時間を楽しんでもらっています。
介助方法を統一する
意外とみんなに聞くと統一されていないものです。
一人が違った介助をして、一度でも転倒しそうな怖い体験をすると、その先入浴嫌いとなることが多いです。
右手はここに、左手はここに捕まって方向転換するなど、上手くいった例を皆に細かく説明し統一しましょう。
入浴せざる得ない状況の時に勧める
排泄物で汚染してしまった、散歩や運動で汗をかいた時はチャンスです。
あまり勧められるものでありませんが、うっかりジュースやお茶をこぼしてしまい服が汚れたというシチュエーションを作って入浴してもらったことがあります。
まとめ
施設での入浴は、プライバシーを他人にさらけ出すことになるのです。
嫌いな人にプライバシーをさらけ出すのは嫌ですよね。
入浴してもらうには、やはり日頃の信頼関係をコツコツ積み上げていくことが大切だと痛感します。
この記事を書いた人
- 十数年、一般病院で勤務。その後、老年看護、認知症看護、ターミナルケアに興味があり老人施設に就職しました。現在、認知症ケアに特化し、看取りを積極的に行っている老人施設で働いています。
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十数年、一般病院で勤務。その後、老年看護、認知症看護、ターミナルケアに興味があり老人施設に就職しました。現在、認知症ケアに特化し、看取りを積極的に行っている老人施設で働いています。
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