ナースはつらいよ

介護職が医療的ケア(吸引・経管栄養)できる?特養ナースの本音

平成24年度から社会福祉士法が改正されました。それにより介護職員等による痰の吸引および経管栄養が制度化され一定条件下で実施することが可能となりました。

特養で働く私は、制度化された初年度に早速、医療的ケアの指導看護師の資格をとりました。

それから4年経ちます。実際活用されているのかというと・・・・・

なぜ今さらなのか

特に昔から特養などの介護現場を知っている人なら、なぜ今さらと思いが強いかもしれません。夜間に看護師が不在で介護職がせざる得ないので医師や看護師の指導のもと実際にやっていたという所が多かったそうです。

確かに、10年前私の祖母が特養に入所していた頃は、夜間介護職の方が痰を引いていました。

現在の介護業界の流れとして現場の状況に後から法律を対応させているという現状があります。

痰吸引と経管栄養なんてまさしくそうで、介護職がしないと人手が足りなく現場が回らない状況がありそれをなんとかするために法整備をしていくという流れです。

吸引・経管栄養はできる範囲が決まっている

喀痰吸引について

口腔・鼻腔吸引は咽頭の手前まで
(だいたい10cmぐらいしか吸引チューブを入れてはいけないこととなる)

気管カニューレ内部の喀痰吸引(つまり気管カニューレから奥の痰を取れない)

今まで吸引をしてきた介護職は、「これじゃあ、命が救えない!」と大ブーイングです。

経管栄養について

胃ろうまたは腸瘻、経鼻経管栄養

  • ・実施の際には、栄養チューブが正確に胃の中に挿入されているか確認を看護師がしてから
  • 胃ろうチューブは1日に2~3回、回転させ癒着や圧迫を防止させますが介護職はしてはいけません。
  • 内服薬の注入はしてはいけません。

医療ケアを実施できる条件

介護職員

都道府県に登録研修機関による研修を受け、都道府県に登録して、「認定特定行為業務従事者認定証」を受けなければいけません。

研修には「特定の者」対象(9時間の基本研修+実地研修)と、「不特定研修(50時間の基本研修+実地研修)があります。

●不特定多数

特養など複数の職員が複数の利用者に喀痰吸引等を実施する場合

●特定の者

在宅の重度障害者や難病当事者に対してヘルパーが対応するなど、個別性が高い特定の対象者に対して特定の介護職員が喀痰吸引等を実施する場合。
基本研修のテキストを見ると、解剖学から、法整備、救急対応までかなり深い内容となっています。基本研修では筆記試験と実技研修に合格しなければいけません。

実地研修とは

指導看護師のもとで経鼻吸引20回、口腔吸引10回、胃ろう・経鼻栄養20回以上行って、そのうち70%合格しなければいけないのです。

チェック表には、感染・プライバシー、声掛けなど細かく定められていてかなり大変です。なんだか介護職のこの研修を見ると看護師より厳しいのではないかと感じるところもあります。

介護現場は人手不足で、研修に行っている時間もなく、どの施設も1~5名程度ぐらいしか資格取得者はいません。

難易度は、介護職の場合、経験や学歴がバラバラで、資格のない人もいたりするので人によって違うようです。

しかしながらこの医療的ケアに合格した介護職はみな優秀です。

施設は

登録事業所として都道府県に登録する(看護師がその業務の一部、書類作成などをしなければいけないので大変でした。)

医師の指示書を書いてもらう

この用紙も看護師が用意します。都道府県から送られてくるので心配いりません。

また、事故対策委員会では、喀痰吸引・経管栄養のリスク管理も指導看護師が中核となって勧めていかなければいけません。

医療的ケア指導看護師になるには

条件

5年以上の実務経験を有する医師、保健師、助産師、看護師であり、医療ケア教員研修会等を終了した者となっています。

都道府県によって違うようですが、多くは2日間構成になっています。特にテストはなく研修に参加し学習すればなることができます。

具体的には、制度概要、感染予防、安全管理、喀痰吸引・経管栄養に関する基礎的知識、実施手順および指導・評価方法を介護職員等に対して指導するポイントを学習します。

かなり細かく手順一つ一つに根拠が説明されていて勉強になります。

昔から実施してきていることですが、根拠をわかりやすく介護職に説明するためにはよく理解していなければできません。

また、制度概要では、世の中の少子高齢化となり、ニーズが多様化され、社会が求める看護師のニーズも変わってきているということを実感します。

法令遵守は誰のため?

結局のところ経過措置でできていたことも法令改正でできなくなってしまいました。

法令遵守をすると、看護師がいない時間帯に喀痰吸引がも必要になったり、胃ろう造設をしたご利用者には、入院をすすめてその後、療養型病院に転院して頂くしか道がありません。

「この施設で最期まで過ごしたいのに・・・」という言葉をご本人やご家族から聞くと辛くなります。

でも、特養は、生活の場だからと割り切るしかないのでしょうか。

施設で新制度の資格を取った介護職が数人いたところで、あの人が夜勤の時は鼻から痰が引けていいのに他の人はできないなんて・・・・となんだか家族も割り切れなくなってしまうので、結局のところ、うちの施設は経過措置で許可されている口腔内の喀痰吸引ができませんと対応するしかありません。

この記事を書いた人

こごみ
十数年、一般病院で勤務。その後、老年看護、認知症看護、ターミナルケアに興味があり老人施設に就職しました。現在、認知症ケアに特化し、看取りを積極的に行っている老人施設で働いています。
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お年寄り大好きナース
こごみ
健康が一番!

十数年、一般病院で勤務。その後、老年看護、認知症看護、ターミナルケアに興味があり老人施設に就職しました。現在、認知症ケアに特化し、看取りを積極的に行っている老人施設で働いています。

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