ナースはつらいよ

恐るべし疥癬

ご存じの通りヒゼンダニによって起こされる皮膚疾患は疥癬です。

皆さん、疥癬を体験したことがありますか?

私は、特養に勤めてからはじめて疥癬を経験しました。

病院と違って生活の場である特養ならでの理由で蔓延してしまいました。

うわさ以上に疥癬患者さん自身も、それに対応するスタッフも大変です。

体験により、マニュアルにも書かれていない注意点を学習しましたのでぜひ参考にして疥癬の蔓延に注意しましょう。

発見!

特養に入所して2年目のAさん、大腸がんが発見され入院をして化学療法を受けました。

しかし、化学療法の効果があまりなく副作用が目立ち始めて、高齢のためもあり断念して見取りのために施設に帰ってきました。

退院して数日後、手のひらに小さな赤い湿疹が数個出現しました。

内科往診医に診てもらい、ステロイド剤を塗って様子を見ていました。

すると数日後見たこともない赤い小さな膨隆疹が手の平いっぱいに広がったのです。

お腹にも数個同じような発疹があり、夜中になるととても痒がりました。

皮膚科に行き、発疹の一部を取り検査をしてもらうとなんと疥癬でした。

さいわいにも感染力の強いノルウェー疥癬ではなく通常疥癬であったのが救いです。

他の利用者にも感染した原因

利用者10人のユニットですが、そのうち7人が感染してしまいました。

私が勤めている特養は、ユニットケアをしています。

日中は、ほとんどの利用者さんはリビングでソファに座って過ごします。

そのソファが悲しいことに感染源となってしまったのです。

しかも布製のソファであったあためヒゼンダニが生育するのには至適環境です。

疥癬と診断されるまで、疥癬に罹ったAさんと数人同じソファで日中過ごしていました。

そして、布製のクッションも共有していたのです。

提携の医師しか往診に入れなかったその頃の特養ですから皮膚科に受診するのも一苦労でした。

まさかご家族に付き添いは依頼できず、スタッフが付き添いをしなければならないというのも手間でした。

そして、毎日のシーツ交換と毎日の入浴をしてオイラックスを塗り着替えをしなければいけないのも本当に大変でした。

ユニット職員一人は、疲れのため抵抗力が落ちていたのか感染してしまいました。

労力も使いますが、精神的な疲労もかなりのものです。

Aさんの対応とその後

最初に疥癬が見つかったAさんは、まず、疥癬に唯一効果のある内服ストロメクトール(一般名:イベルメクチン)」を内服しました。

塗り薬は、スミスリンローションを1週間の間隔で2回塗り、オイラックスを入浴後に首から下にかけて全身まんべんなく毎日塗るように医師から指示をもらい実施しました。

医師の言う通り痒みはすぐには治まらず、夜間に痒みが強くもがいているAさんを見ると自分も痒くなるようでした。

通常疥癬でも抵抗力が弱った人は、ノルウェー疥癬に移行する場合もあると皮膚科医から聞き、末期ガンを患っているAさんは注意が必要でした。

Aさんに申し訳ないのですが居室隔を離して様子をみさせて頂きました。(ちなみにユニットケアで全個室です。)

すでに食欲低下に伴い体力低下が目立ったので特浴で毎日入浴していました。

Aさんは、日に日に活気がなくなっていったのですが入浴が大好きだったためか入浴時には本当に幸せそうに笑ってくれました。

疥癬は、3週間後には完全に治癒しましたが、退院時から徐々に状態は悪化がみられ亡くなってしまいました。

疥癬のケアで気をつけなければいけないこと

上がり湯は忘れずに

疥癬のためか、当初は沢山の皮膚の落屑がお湯に浮いてきました。

入浴介助をして気づいたのですが、介護職の中に上がり湯を知らない人がいたのです。

これでは、湯に浮いた皮膚の落屑が皮膚についたままになってしまいます。

排気のでる掃除機は使わない

もう一つ注意しなければいけないのは、掃除です。

排気のでる掃除機を使うと恐ろしいことにヒゼンダニの死骸が部屋中に舞い上がることになります。

クイックルワイパーに使い捨ての紙雑巾を装着し拭き掃除するのがお勧めです。

衣類の扱い方

衣類はいったんビニール袋に入れて1日放置してヒゼンダニが死滅してから洗濯をしましょう。

他の入居者の方と同じ洗濯機で通常通り洗い50度以上の乾燥機にをかければ感染の心配はありません。

ヒゼンダニは、寄生する人間から離れると死滅します。

また、職員の衣類の扱いにも気を付けましょう。

私が勤める特養は私服勤務です。

そのまま家に持っていくとその家族に感染する可能性もありますので、高温の乾燥器のある施設で洗っていました。

ヒゼンダニは熱に弱く50度で死滅します。

ご家族・ユニット以外の他の職員にも説明を忘れずに

疥癬をよく知らないために、必要以上に感染した人を避けて、知らないうちに感染者の気持ちを傷つけていることがあります。

特養は生活の場であり病院とは違い生活を守りつつ感染対策をしていかなければいけません。

なので病院の感染対策マニュアル通りにはいきません。

介護スタッフは医療従事者と違って基本的な感染の知識に関しても理解が低いスタッフもいます。

実践を交えてわかりやすく説明し一緒に実践していかなければ十分な感染対策はできないと実感しました。

また、厚生労働省のホームページにある高齢者介護施設における感染対策マニュアルを参照するといいでしょう。

高齢者の特徴に合わせて対策が書かれています。

疥癬に関しては通常疥癬とノルウェー疥癬とは対処方法が違うので確認が必要です。

マニュアルは数年に一度改正されますので、定期的にチェックしましょう。

この記事を書いた人

こごみ
十数年、一般病院で勤務。その後、老年看護、認知症看護、ターミナルケアに興味があり老人施設に就職しました。現在、認知症ケアに特化し、看取りを積極的に行っている老人施設で働いています。
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お年寄り大好きナース
こごみ
健康が一番!

十数年、一般病院で勤務。その後、老年看護、認知症看護、ターミナルケアに興味があり老人施設に就職しました。現在、認知症ケアに特化し、看取りを積極的に行っている老人施設で働いています。

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