大学病院耳鼻咽喉科の実際
残念に思った耳鼻咽喉科への異動
「耳鼻咽喉科」すごくマイナーなイメージを持っている人も多いかと思います。
私自身も、異動先を聞いた時は、正直落ち込みました。
鼻も耳も、べつに興味ないしなぁ…。
〝仕事だから〟と割り切って、何の期待も、興味もなく勤務しはじめた耳鼻咽喉科でしたが、そこは、私の想像とは全く違う場所でした。
イメージと違った耳鼻咽喉科
大学病院だったので、手術目的の入院がほとんどでした。
疾患でいうと、
- 耳:中耳炎全般、難聴(人工内耳埋め込み目的)
- 鼻:副鼻腔炎、鼻中隔湾曲症、鼻出血、
- 頭頸部外科・頭頸部腫瘍:喉頭がん、咽頭がん、舌がん、上顎がん、甲状腺腫瘍、唾液腺腫瘍、 喉頭・気管・食道:喉頭炎、急性喉頭蓋炎、声帯ポリープ、気管支異物
など。
耳と鼻の、軽いイメージしかなかったので、耳鼻咽喉科領域の広さと深さに驚きました。
耳鼻咽喉科(頭頸部外科)の実際
シャ乱Qのつんくさんが、喉頭がんで、喉頭全摘出術を受けられた事は、皆さんもご存知だと思います。
耳鼻咽喉科の<頭頸部外科領域>では、喉頭がんの患者さんに対し、まさにつんくさんと同じか、それ以上の手術が毎週のように行われていました。
その他にも、進行度にもよりますが、舌がんに対しては舌部分切除や亜全摘・全摘出術が、上顎がんに対しては眼摘出術などが行われていました。
また、喉の腫瘍や、甲状腺腫瘍が気管を圧排し、気管狭窄を起こしている場合には、病棟内で緊急気切が行われました。
イメージとはかけ離れた現場だったわけですが、ここで、たくさんの事を感じ、学ぶ事ができました。
耳鼻咽喉科は「生きる」ために大切な事がたくさんあった
●呼吸をする事
呼吸がしにくく、息苦しくなった時の恐怖感は、私たちの想像を絶するものだと思います。
気管狭窄を起こし、SpO2が80%前半まで落ちている患者さん。顔色が悪く、末梢もかなり冷たい。動けない。
気管切開をし、とりあえず気道確保はできるわけですが、空気が直接気管孔から入ってくる事で咳がでる。その他、
- 声が出せない
- 喀痰吸引が必要
- 見た目の問題
など、様々な問題が生じてきます。
●話す事
気管切開や、喉頭を摘出した人たちは、声を出す事ができなくなります。
筆談や、文字盤を使ってコミュニケーションをとりますが、すごく時間がかかるし、患者さんの書いている字が読めなかったり、文字盤のさしている字がわからなかったりと、患者さんが伝えようとされている事を私達が理解できない事も多いです。
自分の言いたい事が相手がなかなか伝わらず、激しく苛立ったり、逆に、伝える事を諦めてしまう患者さんもいます。
〝声が出せない〟という事が、どれほど不便なものかを実感しました。
●聞く事
メニエールからの難聴、外・中・内耳からの難聴、難聴の原因は様々です。
人との会話を楽しむ、音楽を聞く、大きな物音で異常に気付く。
普段はあまり意識していませんが、風で木の葉がゆれる音、水が流れる音、お肉が焼ける音、車が通り過ぎていく音…
生活の中にある、〝何気ない音〟も、私たちの生活を作り上げています。
耳から得る情報はとても大きく、大切ですが、難聴の方はほとんど聞こえない。それどころか、常に耳鳴りがし、ストレス増強や、不眠の原因になっています。
ステロイド治療や、人工内耳埋め込み術で、ある程度聞こえの改善は期待されますが、完全に、とはいきません。
聞こえない不安、聞こえないストレスを、しっかりと受け止めないといけないと思いました。
●匂う事
気管切開や、永久気管孔を形成している患者さんは、においをあまり感じません。
鼻術後は、一過性に臭覚が低下するし、副鼻腔炎では、その臭覚障害が戻らない事もあります。
意識しなくても感じる事だから、普段特に気に留めてない事が多いですが、私達は、色々な〝匂い〟を感じ、楽しみ、ながら暮らしています。
音と同様、〝匂い〟で異常に気付く事もあります。(焦げた匂い、ガス漏れの匂いなど)
このような患者さんと接する中で、ひとつひとつの感覚器の重要性を改めて実感しました。
●食べる事
食べられなくなる理由は様々です。
- 舌癌や、舌切除後で痛みが強い
- 舌全摘・亜全摘で、食物の送り込みができない
- 通過障害がある、誤嚥する
その他、抗がん剤治療に伴う嘔気・嘔吐、口内炎なども、しばしばです。
次回は
特に印象に残っている、舌全摘術を受けた患者さんの事、看護の事についてお伝えしたいと思います。
この記事を書いた人
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2歳年上の夫と、子ども2人(8歳女子・2歳男子)の4人家族☆
共働きも、専業主婦も、両方経験あり。
今は、子どもとの時間を大切に過ごしています。
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