ケアする側の偏見で薬調整される恐ろしさ
認知症に特化している高齢者施設に勤めて数年となりました。
働いているうちに、認知症の周辺症状や精神症状に対して、本人の意向というよりスタッフ・家族の意向や捉え方で薬調整されてしまうということに気づきました。
施設に入ると精神薬が減る?
認知症の周辺症状が強く精神病院経由で施設に入所してくる方が多くいます。
数か月はそのままの内服で様子を見ます。
病院と違は違いその方のペースに合わせてケアができるユニットケアをしていると、全員ではありませんが、本当にこの人が暴力的だったのかな、大声を出していたのか疑わしいほどになります。
精神科に相談し、沢山投与されていた、様子を見ながら精神薬を徐々に減らしていき、特に変わりなければ中止にします。
精神薬の調整で大切なこと
高齢者施設では、介護スタッフの方が一番入居者の方と一緒にいる時間が長く身近な存在になります。
そこで介護職にも内服を調整して変化があったか聞いて情報収集をします。
しかし、介護スタッフによって捉え方が違うことがあります。
それは、問題だととらえるスタッフと、それは何かしようと思ってしている行動だから問題ではないというスタッフそれぞれです。
時には、客観的にみてこのユニットのスタッフの関わり方が影響して周辺症状が起きていると感じることがあります。
よく夕方や夜になり家に帰ろうとウロウロと歩き出す入居者がいます。
そこで、適切な対応できて入居者に満足してもらえるスタッフは問題とは感じません。
しかし、帰りたいという要求を受け止められず否定的なかかわりをしたり、業務の進行を優先したり、他の人に助けを求められず、入居者に振り回されてしまうスタッフは問題だととらえます。
問題だととらえ医師に報告すれば、医師は日常の関りを見てはいないので、報告する人の言ったことを信じて薬を処方してしまいます。
ウロウロするのは一般的には徘徊と呼ばれます。
しかし、その時一緒にその方と歩く人手がいたら徘徊にはならないわけです。
ほとんどは意味なく徘徊しているのではなく、何か目的があって歩いています。
それは本当に徘徊なのでしょうか?
医師に報告する前に、入居者の思いを考えたか、スタッフの都合で問題行動と決めつけていないか、自分の感じ方思い込みだけで判断していないか十分に気をつけたなければいけません。
看護師の役割
施設では、介護スタッフが直接医師に報告する時に気をつけなければいけないことがあります。
一番は、医師という役割を分かっていないからです。
医師は、自分に報告してくるということは何か薬の処方などしてどうにかして欲しいのだなと捉えることがほとんどです。
経験が浅く未熟な介護スタッフはそこが分かっていないため、医師に聞かれれば、自分が感じたこと困ったことをアセスメントなしで何でも話してしまうことが多くあります。
それはこういう関り方をして症状が軽減するということも含めて話してくれればいいのですが、肝心なところが抜けていたりします。
内服変更で、家族・介護スタッフがプラセボにかかることもあります。
客観的にみればたいして変わりないのですが、なんでも薬の副作用だと騒いでしまったり、きっと薬を中止したから怒りやすくなったと過剰に反応します。
冷静にみれば、何回も待たせるなど、怒るようなことをしていることがあることもあるのです。
家族や慣れたスタッフだから甘えてわがままを言ってみたり感情をぶつけてみたりしていることもあります。
それを真に受けて不適切な薬を処方されると大変です。
精神薬によって副作用の方が強くなり、眠気で食欲が低下したり転倒しやすくなっったことがありました。
そして、往診時に介護スタッフそれぞれが違ったことを言うと、かなり困惑します。
そこで、看護師は、内服が変更になった時は、必ず症状や副作用を伝え、精神症状や変わったことがあったら必ず記録に書いて欲しいと介護スタッフに依頼します。
記録だけではわからないこともあるので、どういう関りをしたら落ちついたか?興奮状態になったか?聞きます。
必ず一人のスタッフでなく数人に聞きます。
何気なくユニットにいてさりげなく介護スタッフの関り方と入居者の反応を観察します。
もちろん自分自身も入居者の方に関わって観察をします。
その状況をまとめたり、総合的にアセスメントして医師に報告します。
まとめ
自分が認知症となった時、自分の希望ではなく周囲の人の捉え方で知らずに薬を調整されてしまうと思うと切ない気持ちになりませんか?
人それぞれ見方や捉え方のクセがあると言われています。
偏見を持たずその人の思いを大切にして、個別性を受け止めて他人と関わっていけるように努めたいです。
この記事を書いた人
- 十数年、一般病院で勤務。その後、老年看護、認知症看護、ターミナルケアに興味があり老人施設に就職しました。現在、認知症ケアに特化し、看取りを積極的に行っている老人施設で働いています。
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十数年、一般病院で勤務。その後、老年看護、認知症看護、ターミナルケアに興味があり老人施設に就職しました。現在、認知症ケアに特化し、看取りを積極的に行っている老人施設で働いています。
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