子連れ出勤OKの高齢者施設で働く現役ナースが思うこと
私は、特養、グループホーム、ケアハウス、ショートステイ、デイサービスの複合施設で働いています。
そして、なんと子連れ出勤OKです。私も子育て世代に戻りたいと羨ましく思います。
まだ、数は少ないですが赤ちゃんから小学生まで様々な年代の子供がいます。
そこで子連れ出勤OKの現場の実際をお伝えします。
子連れ出勤のメリット・デメリット
メリット
一番のメリットは、子供がいるだけで高齢者の活力が増し雰囲気が明るくなります。
子供たちは、施設で自由に遊んで、それをお年寄りが眺めては喜んでいます。
各家庭の祖父母が孫と過ごしている感じと同じでしょう。
自分が世話されるだけの存在から子供が来ることによって保護しなければいけないという役割が必然として湧き気持ちに張り合いがでるようです。
普段まったく自ら動かない高齢者が、子供が来ると自ら手を伸ばしたり車いすを自走して近寄ってきたりして驚くことがあります。
高齢者と子供は似ている所が沢山あります。
年をとると離乳食のような食事になるので、赤ちゃんに近づきます。
そして、認知症を患った高齢者が感情に素直なところも子供と似ています。
そのためか子供と高齢者同士は、私たちよりもあるがままの存在を認め合い、お互いの社会的立場を超えて純真に接することができるているように感じます。
また、高齢者は分け隔てなく子供に接するので、普段成績などで区別されている子供にとっては良い環境となっているようにも思います。
土日など祝日は、学校がお休みの小学生たちがお母さんに連れられてきます。
子供がいて休日はは働けないという職員の悩みや保育園の待機児童の問題や放課後クラブの問題すらも解決しています。
また、核家族が増えている中、高齢者と触れ合うことは社会の多様性を学んだり、助け合いの精神が身につくなど教育効果があるという声を実際に聞きます。
もっと高齢者と子供が交流する機会や場所が増えたら、高齢者を対象としたオレオレ詐欺も減るのではないでしょうか。
デメリット
幼老複合施設と違って保育士さんがいないので、子供たちが野放しになって危険が伴うことがあります。
やんちゃ盛りの子供たちは、走り回りたがるので親が目を離したすきに利用者とぶつかりそうになったり、
経管栄養の水薬を飲もうとしていてヒヤリとする場面があります。
感染症が流行った時は、子供も高齢者も感染が拡大するリスクは高まります。
感染症流行時は、子連れ出勤ができない場合があります。
近隣の保育園の高齢者施設の活用法
園児の外のお散歩途中の休憩場所として活用しています。
お絵描きをしたり、歌を披露してくれます。
ほんの30分ぐらいなのですが、利用者さんはとても楽しみにしていて喜んでいます。
施設は、気軽に子供たちが立ち寄ってもらえるような環境づくりをしています。
地域のお母さんたちの高齢者施設の活用法
育児休暇中、何か自分も社会の役に立てることはないかとボランティアに来てくれることがあります。
生命力に満ちた赤ちゃんを連れてきてくれるだけで施設は明るい幸福な雰囲気に包まれるのですから施設としてはとても助かります。
育児休暇中は社会からの疎外感や孤独感に悩まされることがありますが施設に来たらそんな悩みは吹き飛びます。
ほんのちょっと自由な時間が欲しい、ゆっくりトイレに行きたいというお母さんの小さな欲求も叶えられます。
もっとそのようなボランティアが世に周知され増えたら、育児ノイローゼや子供の虐待が減るのではないかと思います。
レアな活用法として、お受験の内申書の評価を上げるためにお母さんと一緒に施設にボランティアに来てくれる子がいます。
お子さんから沢山の元気を頂いているので子育てしているお母さんのお役に立てればと施設は考えています。
なぜ子連れ出勤や幼老複合施設が増えないのか
- 土地がない
- 保育園、幼稚園、高齢者施設を管轄する行政が違うため
- 看護師・介護職・保育士が慢性的に不足している
などの問題があげられます。
子連れ出勤や幼老複合施設でなくとも学校が終わって親が仕事が終わるまで預かる放課後クラブとして機能ができないものかと考えます。
さいごに
日々のニュースを見ているとこれからは少子化高齢社会で協力し合わなければきっと日本社会が成り立たないのではないかと危惧しています。
高齢者施設の子連れ出勤や幼老複合施設が増えて、お互いの存在を認め合い生きやすい社会になることを願います。
この記事を書いた人
- 十数年、一般病院で勤務。その後、老年看護、認知症看護、ターミナルケアに興味があり老人施設に就職しました。現在、認知症ケアに特化し、看取りを積極的に行っている老人施設で働いています。
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十数年、一般病院で勤務。その後、老年看護、認知症看護、ターミナルケアに興味があり老人施設に就職しました。現在、認知症ケアに特化し、看取りを積極的に行っている老人施設で働いています。
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