特養の配置医師以外はみだりに診療に行ってはならないの規定について
皆さんご存知ですか?
特養に入所すると、今まで在宅で診て頂いていたかかりつけの医師の往診を受けられなくなります。
入居者、ご家族は、長年診て頂いていてよく状態や性格もわかってくれていたのになぜ?という思いに駆られます。
私も、特養に勤めたばかりであまり国の定める規定が分からなかった頃は同じく疑問に思いました。
私が勤めている特養の提携医は近隣の大学病院の医師のため、自分の専門以外は全く診ることができません。
ちょっとした皮膚の荒れや、看護師が見ても明らかに帯状疱疹や蜂窩織炎でも提携病院の皮膚科に受診しなければいけないのです。
内科疾患でも専門以外は、すぐに受診を勧められます。
大学病院なので混んでいる時は、4時間待ちです。
入居者は待ちくたびれてかえって具合悪くなったり機嫌が悪くなります。
付き添うスタッフも必要なので、現場は人手不足となります。
そして、一番困るのが、施設で看取りをしたとき、入居者を心肺停止したかもしれないということにして入居者を提携病院に施設の車で移送し死亡診断をしてもらわなければいけないことです。
在宅ならば、往診医に来ていただいて死亡診断をして頂けるのに・・・
時には、家族から「死んだ人を運ぶなんてあり得ない」と言われます。
私も納得いきません。
では、厚生労働省が定める特養における配置医師の役割、「特別養護老人ホーム等における療養給付の取り扱いについて」を詳しくみていいきましょう。
特養の配置医師という制度と役割
入所者100人につき1人と定められ入所者は、最低1回/月は診察が必要とされてています。
また、特養の配置医は医療機関所属のものではなくてはいけないとされています。
ですので、常勤を置いてもいいとなっていますが、そんな特養は稀です。
まず、医師は、配置医を受託すると施設と業務委託の契約を締結します。
契約内容は、医師が訪問する曜日と時間です。
例えば毎週木曜日の14時から16時の2時間、1か月の契約金ま1〇万円というようなものです。
この金額は、人件費という意味だそうです。
そして、各都道府県の保健所に申請が必要です。
申請をすると医師が所属する診療所(または病院)と特養ホーム内の医務室と2か所の管理者をするという許可を頂きます。
特養に診療所があるということになっています。(実際、多くの施設は看護師の詰め所になっています)
ですから、医師は契約の2時間は特養に雇用されている医師でその人件費としての契約となるのです。
そこで、保健所へ書類を提出をする際は、元々の診療所や病院の診察時間と被ってはいけません。
休診日や休み時間帯に限定されています。
大抵の施設では医師が診療所や病院から往診に来てもらっているという勘違いをしています。
そうではなく、特養が持っている医務室(=診療所)で、医師を2時間だけ嘱託で雇っている扱いになるそうなのです。
学校の保健室で健康管理をしに来ている医師とイメージをすると分かりやすいでしょう。
そうはなってるものの、特養の入所者は、近年医療依存度が高くなってきているため、24時間対応しているクリニックなどが配置医になると24時間、相談や診察をしているところが多いようです。
大学病院の医師が配置になるとそれはありません。
何かあったら、その配置医が勤めている病院が提携病院になるので、その病院の救外担当の医師が診ることになります。
「特養の配置医師以外はみだりに診療に行ってはならない」の解釈
厚生労働省の配置医師ではない保険医の往診を制限している通知文です。
「保険医が配置医師でない場合については、緊急の場合又は患者の疾病が当該配置医師の専門外にわたるのであるため、特に診療を必要とする場合を除き、それぞれの施設に入所している患者に対してみだりに診療を行ってはならない」とされています。
この文書の解釈は広いようで、厚生労働書や保健所に問い合わせて担当する人によって違う答えが返ってきます。
「配置医師以外の専門医にわたるものである疾病」とはというのが、配置医が自分の専門外と認めれば外部の保険医が往診に来てもよいと解釈すれば、往診を入れていいのです。
というわけで、配置医に証拠として紹介書を書いて頂き皮膚科や整形外科医の往診を依頼するようにしました。
これで、少々の皮膚あれで皮膚科受診や関節痛のためのヒアルロン酸注射のために通院しなくてもいいのです。
大変助かります。
入居者の希望があり特養の配置医が必要と認めた場合に限り、初診料・再診料・往診料は算定できます。
しかし、定期往診では算定できないそうです。
配置医以外の医師が往診の場合どうなるか?
配置医が認めない保険医が往診に来た場合どうなるのでしょうか?
医療行為に対して医療保険が使えません。
診療報酬が算定できないそうです。
処方箋料しか算定できないことになっています。
配置医以外の保険医が往診ができる条件がある
この配置医以外で往診(650点)や特定施設入居時等医学総合管理料や在宅患者訪問診療(200点)が算定できる場合もあります。
末期の悪性腫瘍の方です。
在宅療養支援診療所でない診療所も訪問することは可能です。
なので、末期の悪性腫瘍と診断されれば24時間対応の診療所の医師の往診を依頼でき、緊急時に相談や診察に応じてもらえます。
死亡時もわざわざ死亡診断をしてもらうために病院へ行かないで済むわけです。
入居者やご家族が不安を抱えた時に、同じ先生に相談に乗ってもらったり説明を受けることができるため、満足度が違います。
末期の悪性腫瘍の患者は癌性疼痛など苦痛が多いからそうなったとのことですが、違う疾患で施設で看取りを希望するご家族からはクレームを多々受けます。丁寧に説明して納得して頂くしかありません。
さいごに
厚生省の特養の規定読めば読むほど、理不尽感に悩まされます。
国で施設での看取りを推進しているのだからどうにか改定してもらいたいものです。
せめて、高齢者に理解ある医師に往診して欲しい!と誰もが強く望んでいます。
この記事を書いた人
- 十数年、一般病院で勤務。その後、老年看護、認知症看護、ターミナルケアに興味があり老人施設に就職しました。現在、認知症ケアに特化し、看取りを積極的に行っている老人施設で働いています。
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