えっ!効き過ぎ!?抗認知症薬の実際
今回は、お馴染みの抗認知症薬、ドネぺジル(商品名:アリセプト)とリバスチグミン(商品名:リバスタッチ・イクセロンパッチ)について書かせて頂きます。
どちらも脳内の神経伝達物質であるアセチルコリンを分解する酵素の働きを抑えることにより アルツハイマー認知症の進行抑制をするのが最大の特徴です。
しかし、実際は人それぞれ体質が違うので同じように効くとは限りません。
私が働いている高齢者施設は、認知症ケアに特化している施設です。
実際にあった驚きの効果と注意点についてお話します。
シニアオリンピック選手級
施設入所前に生活調査のためご自宅へうかがわせてもらいます。
ある日、入所予定のC子さん(80代)のご自宅にお邪魔しました。
するとC子さんが、自分の息子の頭を私たちと話している間に何度も笑いながら叩いているのです。
施設入所後は、一日中施設内を歩いていました。夏の日は、汗をダラダラかきながら歩いていました。
あまりの汗で、垂れた乳房と皮膚が密着したところに汗ものなのでしょう、毎夏赤い発疹ができます。靴も汗でびっしょりで、白癬菌にやられたこともあります。
疲れてくるとヨロヨロとバランスを崩しそうになるので、ちょっと強引に椅子やソファーに座ってもらっていました。疲れが癒えるとすぐにまた歩き始めるので、座椅子に座ってもらうことにしました。
座椅子ならば、立ち上がるために時間かかるからです。
それでも他の80代とは違い、本当に80代なのかと思うほどの立ち上がりです。
歩く速さも早めで手の力もすごいのです。
みんなできっとシニアオリンピックに出たら金メダルが取れるかもなんて話していました。
息子さんから聞くところによると、以前健常時は、じっとして一日中、新聞を読んだり音楽を聞いて静かに過ごしていたのですが、ドネぺジル内服によって活動的になったというのです。
息子さんが言うには認知症で意欲が低下して寝たきりになるよりいいのでとそのまま飲み続けることにしたそうです。
現在、大腸がんが見つかり食欲不振が見られ内服が困難になったためドネペジル5mgの内服を中止しました。
すると人が変わったようにおとなしくなってしまい、これがC子さんの本質なのかと、ドネペジルの感受性の強さに驚きました。
しかし、この状態を見てご家族は残念がったため、飲み薬ではなく張り薬であるリバスタッチに変更し、以前と同じとまでいきませんが、活気が上向きになり発語が多くなりました。
クリスマスツリーを担ぐおばあさん
入所時から、足腰が達者な元気なA江さん。日々、施設内を徘徊しています。
昔は、ゴルフの腕前もすごいものだったとご家族から聞いています。
内服拒否が強くなにも飲んでいなかったのですが、ご家族が認知症の進行を遅らせたいということで抗認知症薬をご希望しました。
内服はできないためリバスタッチを医師が選択してくれました。
リバスチグミンンは、4mg、9mg、13,5mg 18mgの4種類があります。
まず小さい用量から始めていき13,5mgに増量したところ、さらにD江さんの活気は増しました。
なんと、クリスマスツリーを抜いて担いで歩いていたのです。
しかも歩くスピードも以前より早くなり、ひやっとしたのはダムメーターの扉を開けて身を乗りだしていたことです。
活動、興奮が増し施設側でとても手に負えなくなり、医師に相談し9mgにしてもらいました。
リバスチグミンでのどを詰まらせる
認知症を患っている方は、手の届くところに貼付薬を貼ると自分ではがしてしまい十分な効果を得られない場合があるため、背中の手の届かないところに貼り注意しています。
A美さんもその一人だったのですが、持ち前の身体能力の高さに加え体が柔らかいのか背中に貼っていたリバスチグミンを自分で剥がし口に入れていたのです。
スタッフによると、食後、リビングのソファに座り口をモグモグしていていました。
しばらくすると顔が青白くなり口を開けてを頭後ろに力なく倒したのを見て、これはおかしいと口を見てのどをまさぐるとリバスチグミンが出てきたのです。
もとから口をモグモグしているのが癖なのでまさか口にリバスチグミンを入れて噛んでいるとは思いもよらなかったのです。
リバスチグミンは、有効成分の量が増えるほどパッチの面積が大きくなります。
といっても一番大きくて面積が10センチ㎠なのですが、嚥下能力が低下している高齢者にとっては危険です。
もちろん、医師に報告しリバスタッチはやめてドネベジルのゼリーにしてもらい内服してもらっています。
使用の注意点
勝手に中止しない
ドネぺジル、リバスタッチで前述したように興奮の作用が見られても勝手に中止してはいけません。
中止したあと認知力が低下し、その後また使用を開始しても元の状態までは上がらないそうです。
副作用が出現した時は必ず医師に相談しましょう。
本人の状態により薬の形態を選択する
内服拒否があるからと言ってリバスタッチにしてそれをはがして喉の詰まらせるということもあるのです。
ドネペジルは、水に溶けるOD錠やゼリー状、細粒、ドライシロップのものもあります。
リバスチグミンは、痒みが出るとどうしても剥がそうとやっけになり剥がす人がいます。
リバスチグミンの粘着力は思いのほか強く皮膚トラブルを起こしやすいようです。
薄く保湿剤を塗って貼るなど工夫するといいようです。
使用時間
もし興奮が増すならば、医師に相談し朝に飲むなどして試してみましょう。
夜に飲んでいてそれで眠れないという人がいましたのでご注意を。
しかし、胃の不快症状がでて夜に変更したようですが、胃薬を処方してもらい朝の内服に変更してもらうと調子がよくなったようです。
さいごに
薬の添付文書と合わせて、副作用がない症状の変化を観察し医師や薬剤師と相談していくことが大切です。
またご家族のご希望をお聞きし擦り合わせていくことも必要だということを経験から学びました。
この記事を書いた人
- 十数年、一般病院で勤務。その後、老年看護、認知症看護、ターミナルケアに興味があり老人施設に就職しました。現在、認知症ケアに特化し、看取りを積極的に行っている老人施設で働いています。
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十数年、一般病院で勤務。その後、老年看護、認知症看護、ターミナルケアに興味があり老人施設に就職しました。現在、認知症ケアに特化し、看取りを積極的に行っている老人施設で働いています。
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