虐待だ!と間違われないために知っておこう「老人性紫斑」
高齢者は、抗凝血剤を内服していない人でも、ほんのちょっとした刺激で紫斑ができる方が多いですよね。
いつできたのかわからない時があるぐらいです。このような紫斑は老人性紫斑であることがほとんどです。
高齢者施設での虐待事件があるなかご家族など周囲の目も厳しいものです。
なぜ高齢者は紫斑ができやすいのか知っておくと役立ちます。
虐待に間違われて大変だったこと
夜間に介護職が定時の見回りに95歳のAさんの居室に行くとすでに脈が触れず呼吸が止まっていたそうです。
日中は、普段と変わりなく過ごしていたので、介護職は慌ててすぐに救急車を呼びました。
その後、家族に連絡すると延命を望まないので病院には連れて行かなくていいとご希望したので救急車を断ろうとしたらすでに到着していました。
救急隊が見てもすでに完全なる心肺停止状態でご家族のご希望を反映して病院へは運びませんでしたが、皆さんもご存じのとおり救急隊から警察に連絡が行き、警察の検死が始まります。
Aさんの両足と右腕に5cmぐらいの紫斑が1つずつありました。
Aさんは、転倒もしていないし、抗凝血剤を飲んでいないのになぜ?どのようにしてこうなったのか、いつからなのか、まるでスタッフが虐待でもしたかのように疑いの眼差しで警察は聞いてきます。
このような警察の事情聴取を受けると精神的にかなりのダメージを受けます。必要以上に、私のせいでAさんが亡くなったのではないかと自分を責めてしまうスタッフもいます。
ちょうど往診で内科医が来たのですが、普段大きな大学病院で働いている大抵の医師は老人性紫斑について知りません。
紫斑は死因とは関係ないのに、事情聴取はなんと5時間近くという長時間に及びました。
ある時は、寝たきりのBさんの右腕にできた10cmぐらいの紫斑をご家族が見て、「虐待だ!」と強く疑われたことがありました。
老人性紫斑の原因
簡潔に説明すると加齢によって皮膚が薄くなり血管が脆くなることが原因です。
血管を保護しているコラーゲンや脂肪組織が減少するに加えて皮膚が宇薄くなってきます。
血管そのものも脆くなり、弾力組織やが萎縮するため弱い衝撃でも皮下出血が起こります。
薄くなった皮膚から皮下出血が透けて見えるのが紫斑です。
老人性紫斑の経過
結合組織が不十分にもかかわらず皮下出血が広がっていくため、古い紫斑と新しい紫斑が混在します。
一般の健康な成人と違って取り込む機能も弱まっているため吸収には、数週間以上かかります。一般的には痛みはないのですが、なかには痛みを感じる人もいます。
最初は赤紫ですがそのうちに橙黄色となり消えていきます。
検査と診断
老人性紫斑と思いきや病気で紫斑が出現しやすくなる場合がありますので、肝機能、出血凝固系検査などを行い全身的な異常の有無に注意が必要です。
治療法
老人性紫斑は加齢が原因のため特に治療法はありません。
予防法
軽い衝撃で内出血を起こすため、ぶつけやすい手の甲や前腕、足の脛は、衣服などで覆うようにします。寒い時期ならばレッグウオーマーやアームウオーマーを活用します。
また、ベッド柵や、車いすのフッドレストにあたって紫斑になる方も多く見られます。
このような時は、100均にもある赤ちゃんの転倒時の怪我予防に売っているスポンジやシリコン剤で作られている衝撃軽減グッズを利用すると効果的です。
身近なものでは、よく宅急便や壊れ物の衝撃軽減に使われているビニールのプチプチを利用しています。
体位変換、清拭・排泄解除などのケア時は、時計やブレスレットなど硬いものの摩擦で紫斑ができることもあるので注意しましょう。
加齢とともにできやすい老人性紫斑ですが、ケアの方法で予防可能なものもあります。
老人性紫斑ができない、増やさない努力をしたうえで本人、ご家族には誠意をもって接することが大切だと、事例を通して学びました。
この記事を書いた人
- 十数年、一般病院で勤務。その後、老年看護、認知症看護、ターミナルケアに興味があり老人施設に就職しました。現在、認知症ケアに特化し、看取りを積極的に行っている老人施設で働いています。
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十数年、一般病院で勤務。その後、老年看護、認知症看護、ターミナルケアに興味があり老人施設に就職しました。現在、認知症ケアに特化し、看取りを積極的に行っている老人施設で働いています。
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