見落とすな!数週間後に発現しやすい薬剤性過敏症症候群
新しい薬を内服した日にアレルギー症状がでないから、薬による発疹ではないだろうと発疹を甘く考えていました。
しかし、ある出来事から、内服開始後、数週間~1年後に現れることがあり、見落とさないように気をつけないと死亡するケースがあることを知りました。
私がみた薬剤性過敏症の実際
施設に入所している70代後半の女性で、アレルギーは何もありませんでした。数か月前から三叉神経痛で歯痛に悩まされていました。もとも不安の強い性格でもあったため躁うつ病の症状もあわせて見られるようになりました。
ペインクリニックに受診すると、テグレトールを最小限の量で開始となりました。
飲み始めて2か月後、痒みはあまり伴わないのですが全身にバラ状の細かく赤い皮疹が広がっているのを発見しました。
何か普段と変わったものを食べたのか問診をしても何もなく、アレルギーが出やすいサバなども食べていません。
皮膚科受診をすると、テグレトールが原因のことがあるので中止にして様子を見るようにと指示されました。
しかも薬剤性過敏症症候群といい重症化して死亡するケースがあるのでバイタルも含め注意深く全身状態を観察するように言われ、自分の知識不足からくる認識の甘さにぞっとしました。
もう日にちが経っていたのでまさかテグレトールのためだろうとは思ってもみませんでした。
幸いなことに、全身状態が悪化することなく緩やかに2週間かけて発疹はきれいに消え治癒しました。
薬剤性過敏症症候群(=DIHS)とは
最近注目されている命にかかわる重症型の薬疹の一つだそうです。比較的限られた薬剤によって発症し、内服開始後数週間後(長い例では~1年経ってから)発症します。もし特定の薬を飲んで全身に赤い発疹ができた場合は、このDIHSを考えた方がいいでしょう。
症状
主に全身に広がる紅斑、発熱、リンパ節の腫脹があげられています。
他の薬疹とは違い症状は数日のうちに急激に悪化し、原因と考えられる薬剤を中止しても、発熱や肝臓・腎臓機能をはじめとした多臓器障害が悪化するのが最大の特徴です。
死亡率は10%程度と言われており、症状が良くなるのに1か月以上かかるのがほとんどです。
病態
多くの症例で、2~3週間後に突発性発疹の原因となるヒト6型ヘルペスウイルス(HHV-6)やサイトメガウイルス、EBウイルスなど、潜伏感染していたヘルペスウイルス科のウイルスの再活性化を認めます。薬剤によるアレルギー反応がきっかけとなり様々な臓器に炎症を起こします。しかし、まだ詳細なメカニズムは解明されていません。
発症頻度
現時点では、原因となりうる薬剤を使用している人のうち、1,000人から1万人に1人程度と推定されています。
死亡率は10%です。
治療
悪化時は皮膚科に入院が必要となり、ステロイドの投与から開始になります。ウイルスとも関連があるため免疫グロブリンの静脈注射を行うこともあります。発熱時に解熱剤を使うと症状が悪化しやすいそうですので必ず医師に確認をしましょう。
DIHSの原因となる薬剤
抗けいれん薬
抗けいれん薬が一番頻度が高いそうです。
カルマバマゼピン(商品名:テグレトールなど)
フェニトイン(商品名:アレビアチン、ヒダントールなど)
フェノバール、ゾニサミド(商品名:エグゼランなど)
バルプロ酸(商品名:デパケンなど)
以下の薬剤で生じることもありますのでチェックしておきましょう。
潰瘍性大腸炎治療薬
サラゾスルファピリジン(商品名:サラゾピリンなど)
高尿酸血漿治療薬
アロプリノール(商品名:ザイロリック、アロシトールなど)
抗不整脈剤
メキシレチン(商品名:メキシチールなど)
抗生物質
ミノサイクリン(商品名:ミノマイシンなど)
ハンセン病治療薬(ジアフェニルスルフォン(商品名:レクチゾール、プロトゲンなど)
看護師として気をつけること
- 今まで何年も飲み続けている薬だからという考えは捨てましょう。
- い発疹が見られた場合は、皮膚だけでなく呼吸や血圧など全身状態の観察をしてDIHVの早期発見・対応に努めましょう。
- 皮膚科に受診する時は、必ずお薬手帳を忘れずに持参し医師に提示しましょう。
- 腎・肝臓機能が低下している高齢者は、薬の解毒ができず薬の副作用が起きやすいので特に注意深く観察しましょう。
早期発見・対応に努めたいと思います。
DHISについて教えて下さった皮膚科医師・薬剤師さんには深く感謝いたします。
参考・引用文献 今日の治療薬2016 南江堂
この記事を書いた人
- 十数年、一般病院で勤務。その後、老年看護、認知症看護、ターミナルケアに興味があり老人施設に就職しました。現在、認知症ケアに特化し、看取りを積極的に行っている老人施設で働いています。
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