クリニックと大きい病院の違い
私がクリニックで働いていた時の話です。その前までは、大きな病院で働いていたためクリニックで働くのは初めてでしたが、同じ看護師だしたいして差はないだろうと思っていました。業務自体はすぐに覚えられ、クリニックのペースにだんだんと慣れていきました。
そんなある日です。
診療時間外に患者さんが‼︎
私が勤めていたクリニックは午前診と午後診に分かれており、お昼は一旦クリニックを閉めます。多少患者の混み具合で伸びることもありますが、正規としては12:00〜15:00までがクリニックのお休み時間でした。
その間、スタッフの人は何をしてもいいのですが、午前診が伸びたり午後診の準備があったりと休憩自体3時間も取れることはないため、だいたい皆クリニック内にいました。
その日も、クリニックの中でお昼を食べて13:30くらいにトイレへ行こうと待合室を通った時です。いないはずの人が一人待合室にいるのです。もちろん、電気も消えていますので真っ暗な中。(その日に限って、入り口のドアの鍵が開いておりカーテンも閉まっていませんでした)
私は、びっくりして「どうされましたか?」と声をかけました。すると、すごく顔色が悪そうな表情で「もう診察終わっちゃいましたよね?」と。
私は、午前診の時間と午後診の時間を説明しました。患者さんは嘔気が強く、隣のビルで働いていたが座っているのも辛くやっとの思いで仕事を切り上げ、ここまで歩いてきたのだと言う。確かに、足元はおぼつかずフラフラしている。そして、トイレだけでも貸して欲しいというので、トイレへ案内すると、ゲーゲー吐いているではないですか。
この時私は、「診療外だけどこんなに具合の悪そうで嘔吐している人、このまま帰すわけにはいかない。診てもらったほうがいい‼︎」と思ったものの、まだこのクリニックに入りたてだった私は自分に決める権限はないと思いベテラン看護師に聞こう、と思っていました。
するとそこへ、タイミングよくベテランの事務さんがお昼ご飯を食べ帰ってきました。うろうろしている私をみて当然「どうしたの」となり、ことの経緯を説明しました。診てもらえると信じていた私ですが、思いもよらぬ答えが、、、
「え〜、困るんだけど」「診察外だし午後の診察まで待ってもらえないの?」
「そんなに具合悪いんだったらそこの大きい病院行ったほうがいいんじゃない?」
衝撃的でした。気持ち悪くて、それでも仕事を早退できなくて。やっとの思いで病院に来れたけど診察が終わっていて診てもらえない。スタッフがいないわけではないのに。歩くのも辛くトイレで嘔吐しているのに。
患者さんの気持ちを考えたら、自分が患者さんの立場だったら。辛いな、ひどいな。横になるだけでもいいのに。そしたら、午後診まで待てるのに。
診てあげたい。自分は看護師なんだからバイタルはかって患者さんの状態くらいは把握できる‼︎しかし、一番下っ端で年も一番下の私にはベテラン事務さんに何も言うことができませんでした。
仕方なく、少し落ち着いた頃を見計らって、今診ることはできないこと。ここで待つこともできないこと。午後再度来てもらうか、あまり辛いようなら近くの大きい病院へ行くよう伝えました。患者さんは「わかりました」と言い、フラフラになりながらも帰って行きました。
こんなにも胸が苦しい思いをしたのは初めてで、その患者さんにひどいことをしてしまったという罪悪感だけが残りました。
病院の役割や考え方の違いになるほど
大きい病院で働いていた時は、このようなことは一切なく、むしろ来たもの拒まず。嫌と思っても来る、という感じだったのでそれに慣れてしまっていたのかもしれません。
もやもやしていた私は、その日の夕方ベテラン看護師に昼の出来事を話し、自分はどうしたらよかったのか、追い出すようなことをして悪いことをしてしまった、と相談をしました。ベテラン看護師は私の予想に反し、「それでよかったんだよ、クリニックとはそういうところ」と一言。
確かに、目の前で体調が悪いからと助けを求めている人に対して、診てあげたいと思うのは、看護師なら当然。ましてや、今まで大きな病院で働いていたなら尚更。きっとそれが当たり前だったんだよね。でも、クリニックの役割はそこじゃない。
具合の悪い人をいつでも診てくれるのは大きな病院の役割。クリニックは小さい病院だからできる、地域に根ずいた医療。地域に根付くには、信頼がないと患者さんはこない。信頼は先生の腕とか人柄とか色々あるけど、その中で、診療時間を守り皆平等に診るということも大切なんだよ。
例えば、診療外に患者さんをみるとすると、口コミであそこの病院は時間外でも診てくれるよと噂が広まり、診療時間外に来る人が増えるかもしれない。そうなると、この人は診るけどこの人は診ないというわけにはいかなくなり、きりがなくなってしまうでしょ。だから、クリニックはそういう所なんだ、という認識を持っておくことも大切だよ、と。
今までの自分の考えにはなかったことだったので、こういう病院もあって、こういう所で働く人もいて、自分とは違う考え方をしている人ってまだまだいっぱいいるんだろうな〜と思い、今でも忘れられない出来事の一つです。
この記事を書いた人
- 看護大学を卒業後、大学病院の病棟で3年間勤務。その後、総合病院のope室に1年間勤務し、クリニックにも1年間勤務。現在は、妊婦生活中の専業主婦になりました。
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看護大学を卒業後、大学病院の病棟で3年間勤務。その後、総合病院のope室に1年間勤務し、クリニックにも1年間勤務。現在は、妊婦生活中の専業主婦になりました。
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