高齢者に胃ろうはしないで点滴投与をするのはナンセンスpart1

皆さんもご存じのように胃ろうを造設するには、胃カメラをしなければならず高齢者には負担がかかります。
近年は、高齢者の胃ろうを造ることは延命になるのではないかと問題視されており、できる限り避けた方がいいという意見が主流になってきました。
あるご家族が「高齢の母に苦しい思いをさせて胃ろうを造るのは可哀想なので、食べられない間、点滴投与をしてください」と希望してきました。
特養は、生活の場ですので点滴ができません。
そこで食欲不振のため点滴投与欲しいとのことで病院受診をしてもらいました。
しかし、老衰だからと、検査もされず点滴を投与されず施設に戻ってきました。
その後、診察をした内科医師から「胃ろうを希望しないからと言って点滴をするのはナンセンスだ!何のための胃ろうだと思っているのだ!」と電話で責め立てられました。
そこで医師がナンセンスという意味について考えてみました。
胃ろうの歴史
まずは、何のために胃ろうが開発されて適応となったのか原点を振り返ってみたいと思います。
1979年にPEG(内視鏡的胃ろう造設術)が初めて行われました。
それを最初に行ったアメリカの外科医ポンスキー氏と小児科医ガウディラー氏は、神経疾患による嚥下障害の小児を対象としていました。
次第に適応が広がり、現在では脳梗塞や脳出血などによる嚥下機能障害患者にも行われるようになりました。
嚥下障害患者に関して言えば、病気の多くが脳血管障害や神経疾患であり、消化管機能が正常な患者がほとんどです。
しかも、疾患の障害が長く続くことから、栄養法として適応となるのは当然と考えられています。
胃ろうのメリットデメリット
メリット
●自然な栄養吸収であり栄養状態が保たれる
点滴のみをして腸を使用しないと、腸内細菌のバランスが崩れて抵抗力が低下します。
しかし、胃ろうからの栄養注入をして胃腸からの栄養吸収ができると栄養価が保たれ抵抗力も維持できます。
●心身への負担が少ない
現在は液体の高カロリー栄養を滴下して投与するのではなく、半固形の経管栄養剤があります。
半固形栄養剤ならば、投与量や身体状況にもよりますが、10分から20分程度で投与が終わります。
液体に比べ半固形栄養剤は逆流が少なく管に繋がれる時間が短いのがメリットです。
その分、その人らしい生活することに時間をあてることができます。
●点滴、鼻腔チューブから解放される。
点滴の刺しかえの痛み、鼻腔チューブによる鼻腔やのどの痛みが無くなります。
胃瘻造設による胃カメラが苦しく辛いのではないかと言われています。
しかし、高齢になると嚥下反射が少なくなるため若い人より比較的スムーズに胃カメラができるとうことが、内視鏡室勤務の時に知りました。
手術は、通常5分~10分以内で終わります。
腹部は、神経的にみても敏感ではありませんので、胃ろうチューブを交換するのも点滴や鼻腔チューブに比べれば苦痛は少なく済みます。
●管理が簡単
CVポートを造設して在宅で点滴ができますが、それでも胃ろうの方が家族にとって負担なく管理ができます。
デメリット
●胃ろうを造っても誤嚥性肺炎を繰り返す
嚥下障害のため誤嚥性肺炎を繰り返しているご家族から、胃ろうを造ったら誤嚥性肺炎を起こさないかという質問を受けます。
口から食事摂取しなくても、誤嚥性肺炎を起こします。
なぜならば唾液が気管に流れこむからです。
●胃ろう造設時の合併症
稀ですが、胃カメラ下で作るので胃カメラの麻酔や刺激などでショックを起こしたり、傷からの感染症を起こすことがあります。
胃ろうの問題点
小児の場合はあまり問題点とされていません。
しかし、認知症で寝たきりの高齢者の場合には、無駄な延命処置として問題視されています。
大抵は、患者本人の意思というよりもご家族が胃ろう造設を希望するため、患者の「生命の尊厳」が、失われている可能性があります。
さらに考えを深めるには長くなりそうですので、一旦ここで終わらせて頂きます。
次は日本に胃ろうが広まった社会的な背景から考えてみたいと思います。
この記事を書いた人
- 十数年、一般病院で勤務。その後、老年看護、認知症看護、ターミナルケアに興味があり老人施設に就職しました。現在、認知症ケアに特化し、看取りを積極的に行っている老人施設で働いています。
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