病棟イベントをがんばったら奇跡が起きた話
あなたの働いている病院では、患者さん向けに季節のイベントってやってますか?そして、なぜ病院でイベントをするんだろうって思った事はありませんか?
地域との交流とか患者サービスの一環とか、理由は色々あるのでしょうが、忙しいのに七夕飾りやクリスマスツリーを飾ったり、一般病棟で働いていた時は正直面倒くさいと思ったものです。
そんな私でしたが、緩和ケア病棟でイベントに対する考え方が180度変わってしまう、奇跡のような体験をしたのでちょっとお話してみようと思います。
初めての緩和ケア病棟イベント
私は二か所の緩和ケア病棟で働いたことがあるのですが、最初に働いた緩和ケア病棟では積極的に関わることはなくイベント当日勤務だったら手伝うって感じでした。
次の就職先は、新しく立ち上げる緩和ケア病棟のオープニングスタッフだったので手探り状態の事もありました。
イベントの流れ
●テーマを決めるのが大変です
そんな中病棟の方針でイベントは毎月行うことになり、担当も持ち回りに決定。その初めてのイベント担当になり、何からすればいいんだ?って感じでした。
デイルームのディスプレイも担当しなければならず、その時は10月だったのでハロウィンの飾りつけを窓やらテーブルやらにしましたが、センスがないので苦労しました(笑)
●普段からアンテナを張ってないと内容が決まらない
そしてディスプレイが終わったら次はイベントの内容を決めないといけないのですが、今まで興味がなかったので全く思いつきません。
ハロウィンっていってもねぇと思っていたら、かぼちゃ使って何かしたらとアドバイスを受け、かぼちゃのクッキーを患者さんやその家族の方に作ってもらおうという事になりました。
子どもも参加できるよう土曜日の午後開催に決め、その日は出勤スタッフも多くしてもらい、クッキーが食べられない人用にかぼちゃのプリンも準備することにしました。
お知らせの用紙もかわいらしく仕上がるよう、ネットを徘徊しよさそうな画像を探し出し、低いPCスキルを駆使しながらの作成でした。
イベント参加者にはクッキーの型抜きをしてもらい、スタッフが焼く流れにするため前日にクッキー生地を作ることに。
この時は業務時間の間に準備させてもらえましたが、忙しい時は絶対無理だと思いますし、自分の料理スキルも不安。料理上手なボランティアスタッフが本当に必要だと感じました。
●当日のタイムスケジュールも大事
イベントはデイルームで行うようにしていたのですが、車いすやベットごとなど移動手段を確認し、動きづらくならないようにデイルームでの配置を決定。そして、参加予定の患者さん・家族に人数の最終確認をし、それに応じたテーブルセッティングを行いました。
本当はセッティングの事なども事前に考えていたらよかったのですが、当日に尋ねられて慌てて準備。そのあとイベント開始時間を考えて患者さん・家族の誘導開始しました。
イベント中の患者さん・家族のフォローをする人、ドリンクサービスを行う人、写真撮影担当、クッキーを焼くキッチン担当など役割分担も当日決めたのですが、何とか対応できました。
参加者の中にはTPN中でイレウスチューブを入れている人や、意識がなくてベットごとデイルームに来ている人もいましたが、どの家族も楽しそうにクッキーの型抜きをしながらみんなで過ごしていました。
人の思いは凄いなと思う出来事
奇跡のような意識回復
そんな中に一組の家族がいました。肝臓癌末期の男性で意識もなく、医療用麻薬のオキファストもCSIでは皮膚トラブルを起こすので持続静注を行っている人でした。
小学生と保育園の男の子のパパで、デイルームではベットを囲んでみんながパパに声をかけながらクッキーを作っていました。
イベントも終了し、それぞれに病室に戻る中最後までデイルームに残ってみんなで過ごしていました。その時突然それまで意識のなかった患者さんが意識を取り戻して起き上がりだしたのです。朦朧とした状態でしたがしっかりとベットに座り、家族みんなで記念撮影ができたのです。
奇跡はそこで終わらず、その後もその患者さんは意識を保ち続け、食事が再開になり、オキファスも内服薬に変わり、子ども達が成人するまで頑張りたいとの希望をもって退院していきました。ここまで回復できた理由は主治医にも分からず、人の思いって凄いなと思いました。
イベントも生きることを支えている
来年は迎えられないからこそ楽しむことを支える
実は、イベントの準備をしている間本当にみんな楽しめるのかな?と言う疑問がありました。
緩和ケア病棟ですから食事ができない人もいれば、動けない人もいる。イベントの前に命の灯が消える人もいます。そんな人に声をかけていいのだろうかと思っていましたが実際には、みんな楽しんで過ごされ奇跡のような出来事もありました。
もちろんこんな奇跡そうそうないと思いますが、私は純粋にイベントの持つ力って凄いと思いました。そして患者さんや家族とふれあう中で、私は死を迎えるかわいそうな人と言う目線で患者さんを見ていた事に気づかされました。
イベントを重ねる中で、来年はないからこそ楽しく過ごす事ができるイベントは大切であり、その思い出は死が訪れた時の家族の支えになることもあることを学びました。
たとえ灯が消えイベントに参加できなかったとしても、参加したいという希望を支えるのは生きる事を支える事になるのではないかと思います。
人の命はいつどうなるか分からない事を考えたら、緩和ケア病棟だろうと一般病棟だろうとその意義は同じなのではないでしょうか。やはり看護師ですから、些細なことでも生きる事を支えていきたいなと思います。
この記事を書いた人
- 看護師経験20年オーバーです。流されるように色々な科で働きましたが、何事も経験かと前向きに。現在介護のため仕事を離れてますが、そろそろ現場復帰検討中です。
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