認知症の異食の改善策と対応
私は、現在、特養に勤めています。
認知症が進むと、食べ物でないものを口にしてしまう異食がみられることがあります。
きっと、皆さんも経験があるのではないでしょうか?
食べたものにより命に関わることもありますので事前に対策しておきたいものです。
私は、前頭側頭型認知症を患った60代の方の異食にずいぶん悩まされました。
身体は元気で自由に動き回ることができたからです。
目を離したすきに、キッチンの三角コーナーにある生ごみや水洗トイレの水まで飲み食いしていた姿を見た時はゾッとしました。
その体験から学んだことをまとめましたのでご参考下さい。
異食が起こる原因を考えてみよう!
口寂しい、お腹が空いている上に、認知症による症状が合わさり異食行動として現れます。
認知症により脳細胞が減少すると五感の感受性が鈍ってきます。また、判断力も鈍くなってきています。
見たものが食べれれるかどうか判断できないうえに、味覚がほとんど機能しないと、どんな味であろうとも吐き出すことなく食べてしまいます。
また、認知症でなくとも不安や何らかのストレスを解消するために食べてしまう方もいますよね。
誰も相手にしてくれないなど寂しさや不安、ストレスなどから手にあるところのものを食べてしまうということもあります。
異食してしまった時の対応方法
見つけた時、慌てて大声を出したり怒ったりしてはいけません。
驚いたり、いけないことをした!ととっさに飲み混んでしまいます。
ここは、深呼吸をして気持ちを落ち着かせて、「お腹が空いたの?」「もっと○○さんのために美味しいものがあるから」「歯磨きをしましょう」「入れ歯を外しましょう」などといつもと同じように声掛けをして口の中を確認して下さい。
もし、危険な消毒剤等、即効に口から吐き出すことが必要な場合は、強引ではありますが指を入れてかきだすしかありません。
多量に飲み込んでしまった、意識レベル低下・けいれんんなどある場合は、すぐに病院へ受診しましょう。
バイタルに著変がない場合の応急処置
飲んだものによって対応が違いますので必ず何を口にしたのか確認しましょう。
●絶対に吐かせてはいけないもの
- 石油製品(灯油、マニュキア、除光液、液体の殺虫剤など)→気管に入ると肺炎を起こす
- 容器に「酸性」「アルカリ性」と書かれている製品(漂白剤、トイレ用洗剤など)→食道から胃にかけての損傷をよりひどくしてしまう
- 防虫剤の樟脳、なめくじ駆除剤など→けいれんを起こす可能性がある
●牛乳または水を飲ませたほうが良いもの
- 容器に「酸性」「アルカリ性」と書かれている製品→(漂白剤、トイレ用洗剤など)
- 界面活性剤を含んでいる製品(洗濯用洗剤、台所用洗剤、シャンプー、石鹸など)
- 石灰乾燥剤、除湿剤など
誤飲をしたものを薄めて粘膜への刺激をやわらげます。
かといって多量に飲ませると嘔吐を誘発させてしまうことがあるのでほどほどにしましょう。(成人では240mlを超えない)
●飲ませることで症状を悪化させる危険性があるもの
- 石油製品(灯油、マニュキア、除光液、液体の殺虫剤など)→吐きやすくなり吐いたものが気管に入ると肺炎を起こす。牛乳に含まれる脂肪に溶けて体内に吸収されやすくなる。
- タバコ・タバコの吸い殻→タバコの葉からに子tンが水分に溶け出し体内に吸収されやすくなる
- 防虫剤→乳に含まれる脂肪に溶けて体内に吸収されやすくなる。
上述したのはほんの一例です。
どうしていいかわからない場合は、日本中毒センターに電話しましょう
大阪中毒110番 365日24時間対応 027-726-9923
つくば中毒110番 365日 9時~21時対応 029-851-9999
いざというう時にすぐに対応できるように電話の近くの壁に貼っておくか、パウチングしてかけて置くと便利です。
異食の改善策
環境整備
危険なものは見えないようにし、手の届くところに置かないようにしましょう。
このような環境整備は必要ですが、何も置かない殺風景な部屋にするとストレスを増加させて異食を悪化させてしまうことがあります。
花や観葉植物は、無くしてしまうのではなく、手の届かないところに置くか写真や絵にして置くといいでしょう。
食べられるものにも注意が必要です。
食べられるものであっても、包装袋や乾燥剤まで食べてしまった時もありました。
冷蔵庫に布をかけて見えなくしたり、鍵をかけていました。
調味料も食べたり飲んだりしてしまいますので棚にしまっていました。
しょうゆなど刺激のあるものは一気に多量に飲むと危険です。
薬の保管場所にも注意します。
シートごと飲み込んでしまった例もあります。薬のシートは鋭利ですので喉や食道などを傷つけてしまいます。
薬を飲んでもらう時も必ずシートから出して手渡しましょう。
また、シップや認知症や心臓病などの貼付薬を飲み込んでしまう方もいます。
嚥下能力が低下していた方で、認知症のイクセロンパッチを飲み込んで窒息しかかった方もいます。
貼る部位や、処方を薬に変更してもらうなどして気を付けましょう。
食事を小分けにして口に入っている時間を増やす
前頭側頭型認知症だと食欲と言う基本的欲求がおさえられなかったり、満腹中枢が機能せずに常に空腹感を訴える人もいます。
いくら食事を食べても満腹にならないので、胃に食べ物がおさまり切れず食べ過ぎにより吐き出すこともありました。
そこで、一回の食事量を少なくして回数を増やして口になにか入っている時間を長くして満足感を感じるようにしました。
ゼロキロカロリーのコカ・コーラ―のゼリーやお茶ゼリーを作って対応したり、歯の良い方にはするめで対応しました。
新しく何か口に入れようとする行動を物理的に抑えて、少し目を離した隙の異食が少なくなりました。
オムツを食べる時は排泄のサインや習慣を観察
振り返ってください。オムツを食べるときは、排泄した後ではありませんか?
排便排尿があっても訴えられず気持ちが悪くなりオムツをかまい食べてるのかもしれません。
排便・排尿のサインや時間や習慣を観察してみましょう。
口腔ケアの習慣をつけておく
この習慣があると異食があった時に比較的容易に口を開けてもらえます。
認知症の方は、何をされるか理解されず口腔ケアを拒否されるケースがあります。
はじめは拒否されても、信頼関係を築き、痛くはないんだとわかると引き受け入れてくれるようになります。
歯科医と協力してその人にあった口腔ケアのグッズや方法選びも大切です。
ストレスケアに努める
60代の前頭側頭型認知症の方は、他人のそばに行くと誰かまわず手を握っていました。
そばに人がいて手を握っているときは、もちろん異食をしません。
できるだけ一人にせず、職員が事務所に行くとき、消耗品を取りに行くとき、ごみを捨てに行くときも一緒にお供してもらいました。
記録を書くときもそばにいてもらいました。
また、本人の好きな散歩をしたり、洗濯物をたたんでもらい役割を持ってしてもらうようにして、食欲以外に興味がいくようにしたり、寂しさを感じさせないように工夫をしました。
異食する人に関わり認知症の病態やその人の心理状態を考えてケアすることに大切さを改めて学びました。
ぜひ参考にして試してみて下さいね。
この記事を書いた人
- 十数年、一般病院で勤務。その後、老年看護、認知症看護、ターミナルケアに興味があり老人施設に就職しました。現在、認知症ケアに特化し、看取りを積極的に行っている老人施設で働いています。
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十数年、一般病院で勤務。その後、老年看護、認知症看護、ターミナルケアに興味があり老人施設に就職しました。現在、認知症ケアに特化し、看取りを積極的に行っている老人施設で働いています。
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