特養のオンコール体制の実際
特養は、夜勤がなくオンコール体制である施設がほとんどです。
あまり世間に知られていない特養のオンコール体制について書いてみました。
それぞれ施設の理念によって、体制が違うと思いますが、これから特養に就職しようとしている方、特養の実態をしらないばかりに「なんで特養はこうなんだ!」とイラッとしている方達のお役に立てれば幸いです。
なぜ夜勤ではなくオンコール体制なのか
特養は基本的に生活する場として「生活サービスを提供することを目的」とした施設です。ですので要介護3以上で医療をあまり必要としない人が入所しています。
極端に言えば看護師なんて必要ないのですが、平成18年の介護保険の改定により大抵の特養は看護師のオンコール体制を行っています。
しかし国民の医療ニーズの増加により夜勤をしている特養が増えています。
そんな中、看護師不足であり、夜勤ありで求人すると看護師が集まらないからオンコール体制で対応している特養のほうが大半を占めています。
特養の提携病院が大学病院や一般病院でなく個人のクリニックの場合は、医師がオンコールしているところもあります。
オンコール体制って何をするの?
職場から支給された携帯を渡され自宅待機で職場からかかってきた電話に対応します。必要時、施設に出向き対応します。
自宅待機と書きましたが、施設に数分でいける場所にいれば、私の勤めている施設はOKです。
よくお酒を飲んではいけないか?面接で聞かれますが、車を運転して施設で来るのではなく、お酒を飲んでもいつもと変わらない対応や判断ができればいいと思います。自己判断・責任にお任せします。
急変時の病院受診付き添いもしています。
他の特養の方にもお聞きすると、急変時の対応の判断と指示、臨終時と対応は一緒ですが、病院付き添いは近隣に住んでいるリーダーや相談員、施設長がしているところもあります。
特養の就職でオンコールについて必ず確認すべきことは、「24時間対応してくれる医師がいるかどうか」です。判断に悩むときはやはり医師が頼りになります。
月にどれくらいのオンコール体制をしているの
私は正社員が3人なので、月の3分の1のオンコールをとっています。特養は国の規定で入所者30人に対して1人の看護師の配置が必要です。よって看護師の配置人数によるでしょう。
また正社員が少ないとオンコールの数が多くなるでしょう。
ちなみに私は、入所者90名で常勤2人のため月の半数はオンコール番をしています。インドア派で出かけることのない私はあまり苦痛に感じません。施設に駆け付ける頻度は、年間に片手で数えられるほどです。
オンコール手当の相場
自宅待機して電話を受けただけで手当てを頂けるところはごく稀です。なぜなら、家では自由な時間なので勤務時間とみなさないということです。
施設に駆け付けた場合は、1500~2000円という手当が相場でしょう。管理者手当がつくともらえないようです。
他、家賃を全額払うからその分は手当が無だったり、夜間に駆け付けて対応した時間は、人数がいる日勤帯に夜間にあてた時間の分だけ休んでもいいといった所もあります。
どんな電話がかかってくるの?
主に、「転倒した」「発熱した」「嘔吐した」「薬を間違えて飲ませてしまった」「傷を見つけてた」といったものです。介護の現場を知らないとこんなことで電話してくるのかと感じると思います。
これじゃ施設で対応できないからと、夜間に救急外来に電話すると「何で施設で見れないんですか!朝になってから受診すればいいのに」と、病院の実態しか知らない看護師に嫌味をチクチク言われています。
私も、病院で救急外来で働いていたころ口には出しませんでしたが、施設の状況を知らずそう感じていたものです。
私の勤めている施設もそうですが、介護福祉の現場の人材不足はかなり深刻のため、全くの無資格の人や介護経験ゼロの人、外国人労働者も頼っているような状況なのです。
あまりの人材不足のため教育さえ追いつかなかったり、せっかく育ってきたなと思ったら辞めていってしまい残念でなりません。
また、施設での教育は、学歴や経験が皆バラバラのため難しいものです。
夜勤で介護職が見なければいけない入所者の人数も、医療を必要としない人ばかりなので1フロア20~30人を介護職一人でみているというのがざらです。
認知症を患っている人が多いとかなり過酷です。センサーやナースコールで気が狂いそうです。
私が勤めている施設は、平均年齢が25歳と皆とっても若く、高卒の方達もいます。
ですので、私とかなり年が離れていて、わが子と同じように対応しています。介護職の方と近い年齢だとイラッとくるようです。
不安がいっぱいで、1時間おきに状態報告してくる介護職もいます。もはや、ほとんどお悩み相談といった感じのときもあります。
「血圧は図れますが、脈がふれません」「Gさんが薬を飲んでくれないんです。」などと泣きながら電話してきてやれやれと思うことも沢山あります。
そこで、「なんて介護職はレベルが低いの!」という看護師は軽蔑してしまいます。
つきつめて考えれば、すべては自分の看護の力が及ばず起こっていることです。
看護の教育・指導力、アセスメント力を発揮しよう
日々、日中で夜間にかけて発熱など具合が悪くなりそうならば、事前に医師に指示をもらっておいたり、観察点やケアで注意することをわかりやすく伝え、どういう時に看護師に連絡すればいいのかなど介護職に明示しておくことが大切です。
医療用語を使わず、いかにわかりやすく伝えるかポイントです。
それぞれの介護職の方の能力もある程度事前に把握して伝えています。なので日ごろから介護職とコミュニケーションをとったり、今日の夜勤はだれか常にチェックもかかせません。
対応やケアについては、毎年施設で勉強会を行っています。短時間ででき、いかに介護職の視点に立った実践的な勉強会にするかが重要です。
してはいけないこと
どんなときも「こんな事で電話してこないで!」と言ってはなりません。
看護師に叱られるのが嫌で電話を躊躇し早期対応ができなかったという事例もあります。
これが異常なのか、この先どのような経過をたどるのかが、介護職に判断して下さいと言うのは酷であり、そこまで責任を負える立場ではありません。
そこを介護職に求めたら看護師の責任が問われるでしょう。
時にはイラッとくることもありますが、深呼吸をして「いつも、気づいてくれてありがとう」と、平常心を取り戻し対応しています。
そして、オンコールを実際行って医師の大変さがわかりました。
電話で状態を聞いてアセスメントをして再度聞き直したりして、指示を出す難しさを知りました。
携帯ではなく、「スマホで動画を送ってくれ」なんてよく思います。そんな時代になることを願います。
この記事を書いた人
- 十数年、一般病院で勤務。その後、老年看護、認知症看護、ターミナルケアに興味があり老人施設に就職しました。現在、認知症ケアに特化し、看取りを積極的に行っている老人施設で働いています。
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十数年、一般病院で勤務。その後、老年看護、認知症看護、ターミナルケアに興味があり老人施設に就職しました。現在、認知症ケアに特化し、看取りを積極的に行っている老人施設で働いています。
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