ナースはつらいよ

心に残る患者さん

初めまして、れんこんと申します(^^)

初めての投稿、何をテーマにするかとても悩みましたが、私が看護師一年目の時に出会った患者さん(Aさんとします)について書こうと思います。とても心に残っている患者さんで、いつか何かの形でAさんのことを書き残したいなぁと思っていたのです。

Aさんは40代の女性で明るく前向きな方で、新人へっぽこナースだった私にとても優しくしてくださり、看護師として適正がないんじゃないかと悩んでいた私が、その後も看護師として働き続けられたのはAさんの存在が大きかったと思います。
それではしばし私の思い出話しにお付き合いください(^^)

Aさんとの出会い~仕事は責任~

Aさんは白血病で骨髄移植後の患者さんでした。移植は成功し、白血病は寛解を維持していたのですが、肺炎を何度も発症し入退院を繰り返していました。

そんな中私はAさんに出会ったのですが、その頃の私は入職して半年ほど・・・いちおう日勤も夜勤も独り立ちはしていたけれど、自信はないし仕事は回らないし・・・毎日不安でいっぱいいっぱいでした。

でも心に決めていたことは、患者さんに寄り添う努力をすること。どんなに忙しくてもちゃんと患者さんの訴えに耳を傾けること。知識も技術もない私には、このことだけは忘れちゃいけないことだと思っていました。

その頃の私は仕事でヘトヘトでいつもぎりぎりに起きてはご飯を食べる時間もなく家を飛び出していたのですが、Aさんは私に、「仕事は責任。倒れたらまわりに迷惑がかかる。ご飯食べないとパワーが出ないよ!」と言い、それから日勤でも夜勤でも会えば「れんこんちゃん、ご飯食べた?パワー大事よ!」ととびっきりの笑顔で聞いてくれるようになりました。

“仕事は責任”そのために自分が倒れないように自己管理すること、看護師なのにそんな基本的なことをAさんから教わったのです。その頃は毎日顔色が悪かったと同期の仲間には後から言われたりしていました。

Aさんの仕事への思い

あるときAさんは肺炎をこじらせ、一時は人工呼吸器を装着するまでになってしまったのですが、奇跡的に回復し呼吸器を離脱することができました。

しかし酸素を手放せなくなり、在宅酸素を導入することになりました。それが決まったときAさんは私にこう言いました。

すごく悲しい。私には夫も子供もいないから、自分を支えているものは仕事しかない。私の仕事はメガネを売る仕事。他の人からみたらたいした仕事じゃないかもしれない。でも私にとっては私が私である証みたいなもの。

でもこれ(在宅酸素)をガラガラ引っ張ってたらもう売り場には出られない。すごく悔しい。白血病になってたくさん辛い思いして、でも治療も頑張って、仕事にも復帰することができた。だけど結局こんなもの(在宅酸素)が付くようになってしまった。

今も定期検診で採血するたびに芽球が出ませんようにって不安で手がガクガクするの。でも今は・・・もう仕事ができないなら芽球が出てもいいやって投げやりな気持ちになっちゃう。この気持ちのやり場をどうしたらいいの

と、ベッドサイドにいた私ではなく、まっすぐ前を睨みつけ目にいっぱい涙をためながら言いました。

私は何も答えることができませんでした。Aさんの手を握るだけで精一杯でした。そしてAさんの仕事への思いを聞いて、私の仕事への覚悟の足りなさに、なんとも言えない居心地の悪さを感じたのを今でも覚えています。

Aさんの最期

Aさんはその後も度々肺炎になり入院してきたのですが、症状はその度に重くなり、ついに全身に水がたまり、体中パンパンに浮腫んで呼吸状態も悪くなってしまいました。水が引けないまま全身状態も悪化する一方で、水分制限を厳しく行うことになりました。Aさんにとってとてもつらい入院生活だったと思います。

全然動かない体でナースコールを押しては、「お水をください」、「今日はもう飲めないんです・・・」、「少しだけていいんです。もう死ぬのはわかっているんです、大丈夫、先生には内緒にするのでお水を飲ませて」、「ごめんなさい・・・できません・・・」

すごく辛かったです。Aさんに対応する看護師はみんな辛かったと思います。6時になるとリセットするので、すぐにナースコールがあり、「6時!飲み物ください!」、「はい!冷蔵庫にお茶とお水とジュースがあるけど、どれにしましょうか?」、「ベルガモットオレンジ!!」あの、とびっきりの笑顔で言うのでした。

「れんこんちゃん、いつも話を聞いてくれてありがとう。ただ手を握ってうんうんって話を聞いてくれるだけで本当に気持ちが楽になったの。お水、いつも6時になると嬉しそうにどれにしましょう?って聞いてくれてありがとう」Aさんのケアをしているときに唐突に言われたこの言葉が嬉しくて、でもすごく切なくて、体を拭きながら泣いてしまいました。

それから間もなく、Aさんは亡くなりました。

仕事が忙しくて、看護ではなく業務をこなしているような気持ちになったとき。仕事がつらくて嫌になったとき。様々な場面でふとAさんのことを思い出します。そしてまた頑張ろうと思えるのです。

患者さんのまっすぐな思いを聞いても、いつも何も応えられないし、どんな言葉も言えなくなってしまう。看護師をもっと続けて、もっともっといろんな経験を積んだら、いつか私も患者さんの思いに何か返せるときが来るのかしら・・・。

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大学病院の血液内科・呼吸器内科・膠原病内科に勤務後、夫の転勤に伴い、地方の市民病院に転職。現在は子育てしながらのんびり過ごしています。

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